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■日本のセクハラ大王は誰か

マスコミってナニ?(39)

ニュースの存在を考える 「マスコミへの道」改

◇マスコミ、芸能界の女性はたいへん…

ローナン・ファロー著、関美和訳「キャッチ・アンド・キル」(文芸春秋、2022年4月刊)を読んだ。

内容
キャッチ・アンド・キル(捕えて殺す)とは何か。スパイの暗躍、大手メディアの裏切り。ハーヴェイ・ワインスタインの性的虐待疑惑をスクープした著者が、政界・司法界に及ぶアメリカの巨大な闇を暴いたノンフィクション。  

図書館データ

ハリウッドの大プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが過去何十年にもわたり、その力関係を利用して多くの女性を食い物にしていた――。それが発覚し、大勢の女性が「#Me Too」と一斉に抗議の声を上げる一大ムーブメントになったのは5年前のこと。それに至る裏事情を描いたノンフィクションである。
年明け1月には、ワインスタイン事件を描く映画「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」が日本で劇場公開されるが、この映画の原作は事件を追ったニューヨークタイムズ紙の記者によるもの(その名を暴け-#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い=新潮社刊)。
「キャッチ――」は、雑誌ニューヨーカーで事件を報じたローナン・ファロー(ウディ・アレンとミア・ファローの息子)によるものである。
本自体は、長いし、登場人物は多いし、もっとはしょって書けばいい話が延々と続いて、読みにくかった。邦訳はそういうのをすっぱり切ってもっと読みやすくすればよかったのに…と思う。

本のことはともかく…。日本でも似たようなことはあっただろう。
僕が大学を出て社会に出たのは1985年。雇用機会均等法施行の前年である。社会、企業が男女の性差別をなくそう――とやっと動きだした時代だ。
85年=昭和60年に最初入社したのは銀行の地方支店。その職場は女性が多く、若い子のお尻を平気で上司のオヤジ(当時50歳は超えていただろう)が触っていたのを憶えている。
あのころは、そうした「セクハラ」もあいさつ、コミュニケーションのひとつと思い込む男も一定数いたのである。
その会社を1年で退職(セクハラ現場を見たのが影響したわけではない=笑)し、マスコミ=新聞業界に翌年転職した。
あのころ、昭和も末には新聞、テレビも新卒の女性記者を採用するようになり、女性記者が報道現場にようやく出始めた時代でもあった。

あれから30数年がたつ。
セクハラは完全にご法度の時代で、水商売の女性に対して乱暴な態度をとった俳優、香川照之やエネオス(旧日本石油)会長が世間から排除されたのは記憶に新しい。
ワインスタインと同様なことをやった映画監督・園子温も表舞台から消えたのはご案内のとおりである。

僕個人はそうしたセクハラ現場を直接見たことはない。
しかし、ある超大物芸能人本人から聞いた話をちょっと紹介しておこう。
映画監督でもある彼に以前インタビューした際、こちらが聞きもしないのに以下のようなことを話したのである。

「あるとき、あのママがオイラに言ったんだよ。『〇〇を待たせてますから…』ってさ。びっくりしたね。あの人、娘を差し出そうっていうんだよ」
僕は、「それでどうしたんですか?」と質問した。
彼は、
「もちろん、行かなかったよ。たいへんじゃん、そんなおっかないことになったら…」

取材の際のやり取り

彼が誰か、その「娘」が誰かは言うまでもないだろう。
彼が僕にそんな話をわざわざしたのも、何らかの意図があったのかもしれないが、芸能界、マスメディアの世界では、大なり小なりおそらく全世界的にあること、あったことだ――と思う。

差し出されてそのままいただき、それがずっとネタにされた男も数知れずいただろう。一方で、自分の意思でそうならず、ワインスタインのようなやり口でひどく傷ついた女性も数えきれないだろう。

今が、よくあること、かつてよくあったことが許されなくなった時代であるのは間違いない。

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