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【イベントレポート】町プロ・クロストークSPECIALの裏話【浜松】

静岡県浜松市内で2024年7月3日(水)〜4日(木)の2日間に渡って行われた町プロクロストークSPECIAL。こちらは町工場プロダクツの中の人が、準備や会期中の裏側を綴るnoteです。イベントが終わって1ヶ月が経ち、今だからわかること、そして今後への展開について少し触れています。

開催レポートや速報は既に当イベント企画者であるウクモリヒロオさんと、町プロタウンFansメンバーのまあちさんからもnoteにて配信されています。そちらも併せてお読みいただけると嬉しいです。

さて、ことの発端は2023年冬。私たち町工場プロダクツ(以下町プロ)は2023年の年末から秋葉原の富士ソフトビルに在ったハードウェアスタートアップを支援するFabスペース、DMM.makeAKIBA(以下AKIBA、2024年4月閉業)に法人会員として入居しておりました。

町プロを運営する合同会社メイカーズリンクはリモート&パラレルで合同経営している会社です。が、最近事業が活発化してきたこともあり「そろそろ拠点が欲しい」と思っていました。トラフィックの多い都内商業エリアにショップとオフィスを兼用したスペースを持つ、という計画も一時ありましたが予算的な都合に加え「もっと交流を軸にした場」という考え方に変化していった結果、AKIBAに拠点を置くことにしました。実はAKIBAに法人利用申請をした日の夕方に「DMM.makeAKIBAクローズのお知らせ」を受けとったことは驚きでしたが。しかし、むしろ締切をポジティブに考え「期間内に交流を味わい尽くそう」そして「クローズまでに必ず町プロタウンをリリースしよう」と考えるようになりました。

なぜAKIBAのことに字数を割いたのかと言いますと浜松イベントのキッカケが、このAKIBAにあります。浜松イベントの企画者であるウクモリさんは松山工業株式会社の経営者でありながらAKIBAではエア・コミュマネと称し、入居する事業者同士をつなげたりスタートアップ企業の事業化を製造面でサポートする活動を10年に渡って継続しておられました。

AKIBAの名物イベント・つながる交流会

AKIBAを通じてウクモリさんの振る舞いに大いに感化されたことで、町プロ運営メンバーにさらなる交流マインドが生まれたのです。そしてスタートアップをはじめとした「チャレンジする人たち」に囲まれて過ごす日々は町プロの運営にとって新事業構想脳を育ててくれる素晴らしい環境でした。

それまでの町プロの取り組みは「日本のビジネスの中心地である東京で実施できること」に限定的でした。連続出展しているギフトショー渋谷ロフトでの催事も東京のみで行っています。また事業を継続することはどうにか仕組み化できはじめてきたけれど、これ以上新しいことをやるリソースは残っていないという状況が続いていました。

それがAKIBAでは、ウクモリさんたちをはじめ、様々な人たちが町プロのことを引き上げてくれるようになり、どんどん自主的に動いてくださる。AKIBAを通じて改めてFabスペースの可能性を感じつつ、インキュベーション・スタートアップ支援施設と町プロの親和性の高さに気がつきました。そこから自然と国内最大級のスタートアップ支援施設・浜松FUSEに導かれていったのです。

ウクモリさんの案内により2024年3月、浜松FUSEへの初訪問を果たします。町プロにとっては初めての出張でした。(浜松FUSEとの詳細な出会いはウクモリさんの下記noteを是非ご読みください。)

浜松FUSEでは運営の浜松いわた信用金庫の渡邉さんが出迎えてくれ、施設立ち上がりの経緯、浜松の製造業・町工場の現況などを丁寧に解説してくださいました。製造業が多く集まる浜松とあって大中小企業に加え豊富なスタートアップ企業が参画するFUSEは非常に羨ましい環境。
日本中の120を超える町工場さんと関わってきた町プロですが、どういうわけか浜松の町工場とのつながりは1社もいませんでした。今回はFUSEさんをお借りして町プロを知ってもらいつつ、浜松の事業者さんたちと「次の一手につながるコトを起こそう」というミッションが生まれました。ですが我々にとって浜松は未知の場所、町プロ運営の代表栗原と中の人、眞鍋だけでは何もできそうにありません。そこで浜松事情に詳しいウクモリさんに全面的に企画をお願いしました。

FUSE見学の合間を縫ってウクモリさんの案内でFUSEから7分程度歩いた飲食店に入りました。そこはSOUというコミュニティスペースで毎週水曜日の夜に浜松内外の面白い事業者が集まって「水ヨル」という交流会を行っているとのこと。イベントが終わった今となっては聖地なのではくらいに大きく認識が変化しています。ウクモリさんは我々を浜松に誘ってくれた時点ですでにFUSEに加えて、水ヨルのイベントを構想しておられました。イベント日程はおのずと水〜木の2DAYSと設定されていきました。

2024年3月のFUSE初訪問

FUSEに戻りイベントホールで毎年実施されているFUSE ON CHALLENGEというビジネスピッチを観覧させてもらいました。ビジネスピッチには予選を勝ち進んできた強者が揃い踏み。そんな中、我々の心をググッと掴んだのがジミート高林さんでした。心を揺さぶるプレゼンと社会課題の切実さと彼女の行動力に心が揺さぶられました。そして高林さんが活動している春野や天竜二俣を含む中山間地域のこと。予備知識ゼロで臨んだFUSE ON CHALLENGEでしたがウクモリさん、栗原、眞鍋の中で「何か役に立ちたい」が始まった瞬間でした。

前段だけでかなりの文字数ですがここまでがことの起こりです。この時の視察からウクモリさんの中で膨大な構想と企画が始まりました。
イベント企画のお仕事は一つ一つの仕掛けの意味合いや参加者の関係性、そして着地点を構想しながら混乱がないよう都度情報を共有し合う非常に細やかなお仕事。ウクモリさんは長年の勘・経験そして想像力をフルに使い、登壇者の言葉を丁寧に汲み取り、イベントに実装してくれました。

企画内容がある程度固まってからようやく町プロもPRやチケット発売の実装を開始。慣れない他県での、しかもトークイベントということもあり、実は裏ではかなり右往左往していました。町プロ側の登壇者として代表の栗原稔に加え、来場される浜松の製造業に方々に知ってもらったらとても面白いのではと思う人に登壇をオファーしました。町プロから卒業し(ブランドとして自走しているという意味での卒業)飛躍を遂げている愛知県の側島製罐株式会社の代表取締役・石川貴也さんと、町プロタウンの仲間として一緒に歩み始めた愛知県西尾市の株式会社大野精工の広報・牧原真由香さんが適任と考え、依頼しました。

6月上旬、イベントのコンテンツは映画の順撮りのように進行順に内容確定してきたこともあり初日の内容はほぼ確定まで来ましたが、2日目の天竜二俣エリアでの行動は未検討な部分が多く残っていました。ウクモリさんは「ならば現地で考えて決めよう」と天竜二俣川行きを決め、中の人も帯同することにしました。

ウクモリさんも中の人も天竜二俣は初訪問です。事前にFUSE渡邉さん、ジミート高林さん、そして天竜二俣川のキーマン、Kissa&Dining 山ノ舎の中谷明史さんから情報をもらいつつ、自分の足で歩いてまずは感じ取ってみることにしました。

初訪問の時の写真を掲載します。この時はまだこの場所で感じたことを言語化できず、ただ目に焼き付けて脳に浸透させました。

左からKissa&Dining 山ノ舎の中谷明史さんFUSE渡邉さん、ウクモリさん

天竜二俣駅の外のベンチでKissa&Dining 山ノ舎の中谷明史さんに初対面を果たしました。中谷さんは Kissa&Dining 山ノ舎の他にも、天竜トライアルオフィス、駅舎ホテル INN MY LIFEと天竜で魅力的な事業をどんどん起こしている方だと再認識しました。

★中谷さんの天竜での活動は下記サイトをぜひお読みください。

天竜二俣視察を経て、この地で町プロができることはなにか?を深く考え始めるきっかけとなりました。後日、中谷さんから天竜二俣エリアでのキーワードとなる「試す」という言葉が届きました。イベント二日目の内容を急ピッチで固めいよいよ告知を開始。チケットサイトをオープンさせPRを開始しました。

告知を始めたものの、当然平日しかも都内ではないイベントの集客はなかなかに困難でした。当初から町プロとしては「人がたくさん集まれば良いってものではない」と考えてはいましたが「こんなイベントがあったのに知らなかった」と言われてしまってはそれは広報の力不足。町プロで運用しているSNSやweb発信に加え、町プロタウンコミュニティ運営メンバーも協力してくれ、未知のイベントへの期待感を掻き立ててくれました。

イベント直前になって浜松や近隣県の製造業の方々の申し込みがグッと増えていました。これは本当に嬉しかったです。なぜなら我々はプレイヤーを大事にしたいからです。企業の規模を問わず、ものづくりの当事者に出会い、一緒に業界を盛り上げていくことがメイカーズリンクのミッションです。初めて会えるプレイヤーとの出会いに心躍らせながら(不安も抱えながら)浜松へと向かいました。

当日の様子はウクモリさんの詳細なレポートと町プロのXでのリアルタイム紹介をお読みください。

町プロのXでリアルタイムツリーで紹介

浜松での2日間は過酷なほどの猛暑日でしたが、そうでなくても脳が沸騰しそうな2日間でした。全てのコンテンツにおいて刺激的な時間でしたが、中の人が特に心震えたことを下記にピックアップします。

  • 側島製罐・石川貴也さんの石川貴也節(DAY.1・FUSE)

貴也さんのトークに圧倒される会場。後半の自己申告型報酬制度の話でどよめきも起きました。

中の人は石川貴也さんの様々な取り組みを、公表されているものに関してはほぼ認知していますが貴也さんのトークが数年前と比べて大きく変化していたことに驚きました。以前から早口ではありましたが今回はもはや立て板に水のように話す貴也さんのトークに、老舗製缶業の人の話を聞いているとは思えない、何か新しく凄まじいものを知ってしまったという衝撃を残してくれました。貴也さんの行動・言動・視点には今後も注視してまいりたいと思います。

※水ヨルでも同内容のピッチを行なっていただきましたが半分の持ち時間しかなく大変お話しし辛かった&もっとちゃんと聞きたかった点は、この場を借りてお詫びいたします。

  • 中谷さんの話に涙がこぼれた(DAY.2・天竜二俣)

好きだった地元の店がなくなっていくことへの焦燥感を語る中谷さん。

中谷さんは東京での大学進学・就職を経て20代半ばで天竜二俣にUターンしています。理由は「生まれ育った場所がだんだんと寂れていくのがほっておけない・何かしたい」。中谷さんは東京での暮らしに充実感を感じながらも、「欲しい未来は自分で作る」と天竜に戻り、現在は様々な温かくもカッコいい、住んでみたくなる町を作っておられます。過去のシャッターが降りたクローバー通りと、現在の素敵な個人商店が並ぶ通りの比較写真を見て自然と涙がこぼれました。中谷さんの話を聞いた後で、歩くクローバー通りには中谷さんはじめカッコよく楽しく暮らす人々がいました。町がカッコいいって最高の環境ですよね。

  • 天竜二俣でのジミート高林さんは一味違う

初日FUSEでのピッチ、そして以前3月の視察時と合わせて高林さんのお話を聴くのは3度目でした。天竜での高林さんのお話はそれまでと構成が違い高林さんの生い立ちやお父様の事業、そしてジミートの事業の起こりなどより丁寧にお話してくれました。FUSEではピッチという性質上、トークの端的さが問われてきますが天竜ではより丁寧な語りで高林さんの見ている・感じている世界をより知ることができました。そして高林家のイノベーターっぷりに感動させられました。次は高林さんが活動する春野にも町プロで訪れたいと考えています。

  • わざわざ来てくれた「ベンチャーフレンドリー」な大田区の雄

一番右の「ベンチャーフレンドリープロジェクト」Tシャツが東京・大田区の安久工機の田中宙さん

FUSE、水ヨル、天竜二俣、と3ヶ所に渡って行われた今イベント。最初から最後まで参加してくれた安久工機の田中宙さん。イベント直前に突然お申し込みくださり、車で東京から浜松に来てくれました。

安久工機さんは下記のX投稿で界隈限らず有名な大田区の試作屋さん。(知らない方は長いですが下記ツリーをぜひ一気読みしてほしいです)

安久工機と町プロは交流こそありましたが試作屋さんと自社製品支援業が何かをご一緒できる機会は限られておりました。試作屋さんは一品一様なものづくりなのに対して自社製品は基本中量生産品をこしらえる小売ビジネスモデル。では、なぜその試作屋さんである安久工機さんが町プロの浜松に来てくれたのか?イベント中にはわかっていませんでしたが、今なら少しわかります。

少しまとめにかかりますが、今回のイベントは実は「越境」がキーワードだったのです。中の人はこの「越境」というキーワードにイベント企画中は薄ぼんやりとしか気がついておりませんでした。が、今回の登壇者にも、参加者にも、そして企画者であるウクモリさんもイベントの場にも共通していたものはまさに「越境」。

改めて越境とは何か、そして浜松という場と越境については下記をお読みいただけるのが一番わかりやすいと思い転載いたします。

日経新聞の記事にはSOU・水ヨル主宰者、鳥善の伊達さんの姿もあります。

中の人が越境という文脈を理解しきっていないながらも参加者の中では明確に意思を持って「越境の地・浜松へ」と足を運んでくれた方がたくさんいました。企画のウクモリさんも当然意識されていたようです。

キーワードや文脈が先行して、イベント参加のハードルを上げることはしたくなかったので終わってから気がついたのは私にとっては良かったと思っています。もちろん文脈を知らなくても充分刺激的で本当にワクワクする時間でした。

今後の展開ですが、町プロらしさをもっと発揮するにはやはりモノ=自社製品を持ち寄りたいと考えています。そしてモノづくりを得意とする町プロが、もっと地域の課題に向き合い、解決の一助となる取り組みを実施したい、浜松のモノづくり・ことづくりのプレイヤーと共に「試したい」。スモールスタートにはなると思いますが、一歩ずつ浜松の地で町プロの新しい挑戦と楽しみを増やしてまいります。

当日ご参加くださった方全員とのお話は叶いませんでしたがまたお会いできる機会があれば是非色々なお話しさせていただければと思います。ありがとうございました!

編集:坂本リサ
執筆:町工場プロダクツの中の人・眞鍋玲
校正:森真弓
写真提供:メイカーズリンク


最後までお読みいただきありがとうございました!

2021年より活動を始めた「町工場プロダクツ」がさらに発展し、新しいオンラインコミュニティ「町プロタウン」が2024年4月にスタートしました。

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