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N35°34'47.59” E139°33’32.43”『うちができたのは、1984年。自分の珈琲店がこの商店街のパズルのひとコマとして必要不可欠な店になればいいなあ、と思って開業したんですよ。』

わたしがいちばん好きなのは、商店街。むこうの商店街と、この中央商店街のうつりかわり、これは、なんか好きですよ。
ここに出店するとき、自分の珈琲店がこの商店街のパズルのひとコマとして必要不可欠な店になればいいなあ、と思って開業したんですよ。10年後に、こういうお客さんとこうありたいな、またはこういう感じでお客さんがきてくれたら最高だな、って想像してた。
うちができたのは、1984年。開業させてもらってから1号店は33年、2号店はその6年後ですから27年。うん。
わたしは2号店にほとんどいます。朝いちばんで1号店にいってからこっちにきます。落ち着きますよ、ここにいると。なぜ落ち着くかといったら、人の動き、これを見ているのがね、すごく楽しいんです。あきない。朝は通勤通学、お医者さんにいくお年寄り、そういう人たちの歩幅、その歩き方、それを見ているだけでもね、あきないですよ。

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飲食をはじめて50年ちかくになりましたね。最初の5年間はコックでしたから、45年ぐらい、珈琲にかかわっています。たまたま5年すぎたときに、珈琲関係の人との出会いがあって、よし、これからは珈琲でいこうってきめたんです。コックをしていた店が珈琲店も展開しはじめたので、そっちのほうを担当させてもらって10年。それで珈琲をきわめるには、けっきょく焙煎をしなきゃいけないっていうんで独立したんです。焙煎はその店ではちょっとできなかったのでね。その当時は、焙煎業者に焙煎を委託して、それを仕入れるっていうかたちで喫茶店業界が伸びてたわけです。だけど、次の時代は自分で焙煎する時代がくるなとわかっていましたので、開業と同時に焙煎をはじめました。そう、だから田園都市線のなかではいちばんはやかったですね。
焙煎に関してはね、わたしは師がいないんですよ。教わってしまうと、その人の力量まででおわってしまうな、と。だからもう、豆と機械とむきあって。あの当時、仕事終わってみんなをかえしてから、十二時すぎから一人で珈琲とむきあって。その豆をどう焼いたらいちばんいいのかっていうのは、もう失敗の連続で、毎日帰るのが1時2時だった。だけどそう、そのおかげでいまはすごく楽な状態でいられる。たぶん、わたしみたいなやり方ができる人はあまりいないと思います。それはレシピでかけるものではないから。感覚的なもの。豆を見て、今年の作柄はどうだとか、そういうところでジャッジして。おなじ珈琲の木なんですけど、土によってさ、味がちがうんだよね。だからそれはそのときそのときの豆とむきあってやるしかない。あの袋のなかにはいってるけどさ、もう1ヵ月以内に消費。そうじゃないと豆がかわります。豆はだいたい6、7ヵ国から仕入れています。
好きなのは……、まあ強いてあげれば、やっぱりいちばんは、ブラジルかな。珈琲のブレンドは味の創造ですよ。答えがない。いや、きめるんです。砂塚ブレンドだったら、コロンビア、ブラジル、エチオピア、何%ってきめるんです。そうじゃないと味のブレがわからない。味のコンディションは焼き方でかえられる。今回のブラジルはこうだから、エチオピアはこういうふうにしたほうがいいな、とかさ。飲食店っていうのは、そういうお客さんに見えない部分の努力をいかにするかで、お客さんとの長い信頼関係をつくり上げることができる。なにを入れているかが問題じゃなくて、飲んでみて美味しければいい。それが問題なの。そして固定客、もちろんそれがすべてです。

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商店街の話にもどすけど、商店街のうつりかわりのなかで、やっぱり33年前を考えると、たまプラーザはすごく良くなりましたよ。なぜ良くなかったっていうとね、昔は開店する前に、道路のゴミを掃除するのが日課でした。カラスに食い散らかされたゴミをね。いま、ほとんどゴミありません。きれいです。みんながそういう意識をもちはじめたからです。ようするに自分たちの街なんだから、ましてやお客さんがとおる道路なんだから、きれいにしましょう。自分のまわりだけきれいだったらいいんだ、みたいなそういうことじゃあなくて、街全体の景色としてきれいにしましょうよという、そういう意識が生まれてきて。その前だってゴミ収集はきてたんですからね。意識ですよ、意識です。いま、街全体を3商店街のみなさんで、第1日曜日、あつまって街をまわって掃除してるんです。そういう意識まで盛り上がってきたおかげで、ゴミが落ちてれば各人が拾う、というとこまでなりましたものね。

馬場政治

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インタビュー:2017年 夏

このおはなしは2017年No.004号に収録されています。冊子をご希望のかたはご連絡ください。冊子は無料、送料180円でお送りします(5冊まで送料は同じ)。「街のはなし」プロジェクトを、スキやサポート,snsのフォローなどで応援していただけましたら大変励みになります!どうぞよろしくお願いします。

企画・文・写真: 谷山恭子
編集・校正: 伏見学・街のはなし実行委員会
発刊:街のはなし実行委員会

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