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知的ギフテッドの方は『魔女の旅々』を観るとクソほど共感できると思うし、アニメファンの反応が自分に向けられる視線そのものなのでおススメです。

 秋の新アニメが放映開始となり間もなく1か月が経とうとしています。

 今年はコロナウイルスの影響で番組制作やプロモーションに大きな遅れが生じて、4月もしくは7月に放映予定だった作品が後ろ倒しになったりして、その反動で前評判の高いタイトルが今期に集中していることでなかなかの豊作です。

 そんな秋アニメラインナップの中で、前評判以上に個人的には面白いな、と思ったのが『魔女の旅々』。

 白石定規先生原作のライトノベル(GA文庫・刊)のアニメ化作品ですが、もともとはKindleでセルフ出版された電子書籍です。私も、創作ジャンルではないですが何冊かKindleで電子書籍を出しているだけに(毎月3000円程度の売り上げしかないですが)、とてもうらやましい話です。

『魔女の旅々』とはどんな作品?

 で、この『魔女の旅々』がどういうお話かというと、

あるところに一人の旅人がいました。彼女の名はイレイナ。
若くして魔法使いの最上位「魔女」となった才女です。
幼いころに読んだ旅の物語に憧れて、
流されるように気ままな長い旅を続けています。
この広大な世界を自由に渡り歩き、わけのわからない可笑しな人や、
誰かの美しい日常に触れながら、
彼女は旅人として、これといった目的もなく、
色々な国や人との出逢いを繰り返します。
そして同じ数だけの——
「構わないでください。私、旅人なものですから。
先を急がなければならないのです」
そんな魔女イレイナが紡ぐ、出逢いと別れの物語…。
(公式HPより引用 https://majotabi.jp/)

というもので、アニメは1話完結の形で主人公であるイレイナが旅先で訪れた国での人との出会いと別れが描かれます。

 『魔女の旅々』各話の結末は、必ずしもハッピーエンドとは言えないものも少なくなく、いわゆるメリー・バッドエンド(端から見たらバッドエンドでしかないけれど、当事者からしたらハッピーエンド、という結末)もあり、そのあたりがアニメファンには刺さりつつあるようです。過去作でいうと、時雨沢恵一先生の『キノの旅』(電撃文庫・刊)に近いテイストでしょうか。

『魔女の旅々』主人公・イレイナ

 さて、この『魔女の旅々』ですが、主人公であるイレイナちゃんの振る舞いが、アニメファンをちょっとざわつかせており、それはなぜかといえば、キャラクター造形を見ていただけるとわかるのですが、

イレイナ

若くして魔法使いの最上位「魔女」となった才女

であり、

冷静沈着でシビアな性格だが、好奇心も旺盛。

という性格のため、その振る舞いがどうにも鼻につくようなのです。加えて、作中における言動も、自らの努力と能力による高い自己肯定感から出るであろう奔放さをはらんでおり、これが一部のアニメファンの目には「イキリ」に映ってしまっているようです。

 各話の反応については、まとめサイトなどを観ていただくとわかりやすいのですが(個人的によく見ているのは「あにこ便」ですね)

 おおむねイレイナの振る舞いに対する感想は、

・だいぶ上から
・わたしつえー!
・お、調子乗ってんな?
・傲慢タイプ?
・こいついっつも自画自賛してんな
・うぜぇww

といった調子で、イレイナ本人の天真爛漫なふるまいとは裏腹にこういった反応が並びます。このような、本人はいたって自然にふるまっていながら周囲からは傲慢に映ってしまうキャラクター造形見て私が思い至ったのが、〈ハイアチーバーな知的ギフテッド〉。

そう、私です。

 あ、これ、イレイナちゃんの決め台詞です。

ギフテッドがイレイナを見たら共感しかなかった。

 検査結果として明確な証拠を突きつけられているので、特に隠す必要もないしむしろ公言しておいた方が生きやすくなりそうな気がしているのでnoteでもおもっくそ公言してますが、私も〈これ〉に当てはまります。

 まあ、それがたたって「抑うつ」になって半年も休職したのが今年の春先からつい先日までのことなのですが…。

 もうすこし〈知的ギフテッド〉がどんな人なのかを具体的に説明しますと(私が説明するのではなく、ウィキペディアから引用すると)、

先天的に、平均よりも、顕著に高い知性と
共感的理解、倫理観、正義感、博愛精神を
持っている人のこと。
外部に対する世間的な成功を収める、収めないに
かかわらず、内在的な学習の素質、生まれつきの
高い学習能力や豊かな精神性を持っている
ということである。

ザックリこういう人たちのことを言います。私のnoteを見ていただければわかる通り、人間性とは何の相関関係もない数値ですね。

 ウェクスラースケール(中央値100、標準偏差15)のIQでいうと131以上の人がおおむねこれに当てはまるといわれており、だいたい全人口の0.3%くらいの割合で存在するということです。

 300人に一人というとなかなかレアそうに聞こえますが、朝の山手線1編成に5人くらい乗ってると言ってしまうとそうでもなく聞こえるので、数字のマジックとは恐ろしいものですね。

 ここまででだいたいお分かりのことと思いますが、イレイナちゃんがまさにこの知的ギフテッドそのもので、白石定規先生の人物造形に際しての取材がすごいのか、はたまた、白石先生自身が知的ギフテッドなのかと思わされるほどのリアリティを持っています。

 本編1話では幼少期から魔女になるまでの生育の記録が描かれており、両親が娘の特殊性に気づいて、現実世界でいうところのギフテッド教育のようなものを娘に施すのですが、その教育課程においてあえて理不尽な処遇を与えられながらも、それを忍耐と努力で乗り越えてしまう「強すぎる」ところとそれゆえの弱さが描かれ、その様子が知的ギフテッドの人たちが口にする「生きづらさ」の様子ととても重なって見えるのです。

 もしかしたら、知的ギフテッドの方は『魔女の旅々』第1話を見たら、これは自分ではないかと錯覚するくらいのリアリティを覚えるのではないでしょうか。私は、びっくりするくらいに入り込んでしまいました。

イレイナ観察は、ギフテッドの生きづらさを解決するか?

 現在私は、自身の特性に端を発する「生きづらさ」解決のための糸口探しをしていますが、『魔女の旅々』と作品に対する視聴者の反応を通して、自身に向けられているかもしれない視線を客観的に追体験できたのは大変幸いでした。

 もし、私と似たような境遇にいる方がいらっしゃるようでしたら、間違いなく観ておいた方がいいと、自信を持っておすすめできます。

 また、私と境遇を異にする方々にも『魔女の旅々』を通じて、ギフテッドとはこういう人物造形を持った人間なのだということを知っていただければ…などと思っています。全人口比0.3%以下の超マイノリティなので、この辺の欲求はマジで強いです。

他にもいます。超リアルなギフテッド的アニメ主人公

 ちなみにですが、アンダーアチーバーなギフテッドの人物造形が極めてリアルに描かれたキャラクターとしては『色づく世界の明日から』の主人公、月白瞳美が思い浮かびます。『魔女の旅々』ともども、本渡楓さんが魔法使い役で出演していますね。いずれの作品もamazonプライムビデオで視聴可能です。

◆魔女の旅々 https://www.amazon.co.jp/dp/B08KL1J566

◆色づく世界の明日から https://www.amazon.co.jp/dp/B07HZ3ZXS5

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