『ママチャリでゆく』

川沿いの道を十分程度、走る。
早朝はお年寄りがランニングをしていたり。
霜が降りていてタイヤで踏みしめるとシャリシャリと鳴る。空気がシンと覚めていて顔に当たる風も心地良い。暖房で部屋を温め過ぎていたからよけいに。

コンビニに着く。あったかいお茶とおにぎり二個、鮭とチーズおかかを買う。
土曜のこの時間に来るとほぼ間違いなく、あの店員さんがいる。ショートカットの大人っぽい女性。身長は僕より少し低いくらい、細身で少しだけ化粧が濃い。たぶん、化粧をしなくても十分きれいなんだと思うんだけど。
残念ながら薬指には指輪をしているから僕なんかにはチャンスはないって分かってる。
それでも、おつりをもらう時に指がふれると嬉しい。温かい。
今日は勇気を出して、
「寒いですね。」と言ってみた。
「そうですね。」と言ってくれた。
「そうですね。」の時に僕の顔を見て少し微笑んでくれた。それだけで顔が赤くなってしまう。
けっこう、いや、かなり嬉しい。

コンビニを出ておにぎりとお茶を喉に流し込む。そして、一日に数本しか吸わないタバコをここで吸う。
うまい。食後だし、冬に吸うタバコが一番うまいと思う。それにあの人とも話せたし。
吸い終わり、またママチャリにまたがる。
いつもならUターンして帰るんだけど、今日はもう少しだけ川沿いの道を行こう。
ほっぺも冷ましたいから。


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