「エンデの遺言」をみて「まちのコイン」を考える
こんにちは、まちのコインの地域担当の長田です。
今年のGWは、お家でおこもりの休みとなりました。
早くコロナが収束してほしいと心から願っています。
先日、まちのコインチームである動画について意見交換をする会をオンラインで実施しました。みんなが観た動画は、1999年にNHKで放送されたドキュメンタリー「エンデの遺言 ~根源からお金を問う~」です。地域通貨まわりの会話になると、よく話されるのが、この「エンデの遺言」です。ドイツの作家であり、「モモ」や「果てしない物語」を書いたミヒャエル・エンデが、日本人向けに残した一本のテープから作られたドキュメンタリーとなります。
今日のnoteでは、今から約20年前に残されたエンデのメッセージについて、まちのコインが参考にしている点と、まちのコインチームのみんなで話したことを紹介します。
お金の2面性に関して
冒頭、エンデの意見として、お金には、パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、取引所で扱われる資本としてのお金は、2つのまったく異なった種類のお金であると語られます。本来、物的価値の等価代償の役割を持つお金が、今ではそれ自体が商品になってしまったことが問題であると言います。
本来お金が持つ価値を取り戻すには、思想家シルビオ・ゲゼルの「お金もあらゆる自然界の存在と同じように、年をとり最後は消えていくべきである」という考えを紹介しながら、ドキュメンタリーは進んでいきます。
世界の地域通貨の特徴とまちのコインが参考にしていること
(1999年のドキュメンタリー放送当時の情報になります。)
ドキュメンタリーでは地域通貨の事例がいくつか紹介されました。
①老化するお金のシステム(オーストリア、ヴェルグル市)
・1929年の世界共同1929年の世界大恐慌後、失業者が多い状況にあった町を救うため、当時の町長が老化するお金のシステムを導入。
・1ヶ月ごとに1%ずつ価値が減少するお金は、労働証明書として発行され、町の公共事業の支払いに充てられる。
・経済危機の中、大きな成果をあげた。
②相互扶助のためのお金、LETS(カナダ、バンクーバー市)
・地域の住民がお互いに提供できる財やサービスをリストにし、それらを交換し合うことで、お互いの生活を支え合う相互扶助のネットワークの仕組み。
・グリーンドルという単位で地域通貨が発行される。
・使うとその分がマイナスになる仕組みですが、そのマイナス部分は、負債ではなく、LETSへの関わりの深さを示す指標として設計。
③対話を伴うお金、イサカアワー(アメリア、ニューヨーク州イサカ市)
・地域の住民の投票で選ばれた非営利団体イサカアワー委員会が発行。
・当時、400以上の商店が会員になっていました。
・イサカアワーが使われる時、必ず人々はコミュニケーションしている。
まちのコインでは、こういった事例を参考に仕組みの検討がなされています。
例えば、コインの流通を促すために、ヴェルグルの老化するお金のように6ヶ月間使われないコインは回収されます。またLETSのように、まちのコインではチケットを通じて地域の人同士が繋がり、相互扶助のネットワークが構築されていきます。そして、イサカアワーのように、まちのコインでコインのやりとりをするには、QRコードを読み取り合います。そうすると必然的にコミュニケーションが発生します。
ドキュメンタリーを観た後のチームメンバーの感想
1時間の動画を視聴したあと、3グループに分かれて以下のテーマで話し合いました。
①地域通貨の例がいくつか出てきたがどう思ったか。
②アフターコロナでは何を新しい価値と捉えられるか。それはまちのコインで実装可能か。
深く議論するには時間が足りませんでしたが、以下のような話が出てきました。
▼お金や地域通貨について感じたこと
・エンデは、お金の役割として、交換手段、財産手段、資本の3つの種類に分けられると語っていて、普段、考えたことのない見方だった。
・お金に役割があって、その役割を切り出して分けようとした概念に驚いたし、地域通貨は、法廷通貨のどこを切り取ったものかを考えるきっかけになった。
・イサカアワーなどの地域通貨と法廷通貨は、きちんと役割が異なっていた。
・地域循環を地域の人々で創造できるのはいい。
・貯めないほうがいいのはわかったけど、地域通貨も貯めたいと思ってしまう。
・地域通貨を法定通貨と併用して使うことで、購買力の維持と外に貨幣が逃げないという実績が参考になった。
▼まちのコインで実装してみたいこと
・まちのコインを利用する時も、まちのコインを通して、軽い交流が発生するといい。
・地域内の使う人のことを考えて設計してもよいと思った。
・生活をする上で不可欠なこと(食料、電気、水道、税金等)に地域通貨が使えれば嬉しいなと思った。
日頃から、まちのコインについて説明する機会が多い地域担当ですが、エンデの遺言を観て、私個人としては考え方が整理されたように思います。使えば使うほど、仲良くなるお金というコンセプトのまちのコインは、地域の中で使われ、人と人とをつなげるコミュニケーションツールとしての役割が大きのだなと改めて実感しました。
コロナがなかなか収束せずに、移動が制限され、地域経済が疲弊する中だからこそ、人と人のつながりが必要とされていると感じています。まちのコインに関して、お問い合わせがありましたら、お気軽にご相談ください!