戦略を練り直して、別訴を提起!~残業代等請求事件の民事訴訟と損害賠償請求事件の労働審判の2トラック戦略とは・・
本当に久しぶりのnoteですが、今回は、私自身の本人訴訟の経験談の6回目(1回目、2回目、3回目、4回目、5回目)をお届けします。
まず、経緯を簡単に振り返っておきます。わたしの元雇主との係争の舞台は、労働審判から民事訴訟へ移行しました。
労働審判では未払い残業代などを請求、結果として235万円の「解決金」が認められて「勝訴」していました。ということで、民事訴訟となっても、情勢としては、わたしが優勢であることにあまり変わりはないでしょう。
しかし、制度的に、労働審判の結果が民事訴訟へそのまま持ち込まれるわけではありません。また、民事訴訟となるとあと数ヶ月、下手すれば半年から1年程度続くことが予想された中で、もしその判決として同じ235万円前後の「解決金」を支払ってもらうことになるとしても、訴訟費用(収入印紙代と郵便切手代)、時間と自分自身の人件費、移動交通費、通信費、コピー代などの経費を考えれば、235万円程度では到底割に合いません。
そこで、わたしが戦略を練り直して打ち出したのが、別訴の提起でした。つまり、すでに審理ステージに上がっている残業代等請求事件とは別の事件を持ち出して、それについて同じ元雇主を提訴する、同じ元雇主に対して別の訴訟を起こすということです。
わたしと元雇主との間には、未払い残業代問題の他にも、
① わたしにフィリピンでの不法就労(就労ビザなし勤務)を強要した、
② わたしの健康保険と厚生年金保険の加入手続きを履行しなかった、および
③ 虚偽の求人内容によってわたしに応募させ、わたしを採用した
という3つの紛争ネタ(民事事件)が存在していました。①はともかく、②と③はよくあるパターンだと思います。そして、わたしが選んだのが、民法第709条と第710条に基づく①を訴訟物とする損害賠償請求でした。別訴には労働審判と民事訴訟という2つの選択肢がありましたが、原則3回の期日で結論が出るスピードを重視して、労働審判を選びました。
ということで、残業代請求事件の民事訴訟と別訴としての損害賠償請求事件の労働審判の2つのトラックが同時に係属ということなったわけです。両方とも本人訴訟です。
これから、2トラックを同時に走らせた内容について紹介していきたいと思います。
まず、残業代等請求事件の民事訴訟。「東京地裁での労働審判 ⇒ 東京地裁での民事訴訟」という審理ステージの移行は、「東京地裁 ⇒ 東京高裁」という控訴、「東京高裁 ⇒ 最高裁」という上告とは制度的にまったく異なります。東京地裁で労働審判委員会が出した「労働審判」に異議申立てがあった場合、もともと東京地裁に民事訴訟の提起があったものとされるのです。
労働審判が裁判所の中にある会議室で行われるのに対して、民事訴訟の口頭弁論が行われる場所は法廷です(弁論準備手続きの場所は会議室)。わたしの事件の場合、裁判官は一人、裁判所書記官も出廷していて、二人とも法服を着用しています。労働審判は仕事での会議が始まるような感じでなんとなく始まりますが、民事訴訟は原告・被告と裁判所書記官がそれぞれの法廷の各席で着席しているところに裁判官が出廷、全員起立して、裁判官へ礼をしてから始まります。民事訴訟は労働審判よりも数段フォーマルになってきます。
当事者の呼び方も労働審判と民事訴訟では異なります。労働審判では、申し立てた側を「申立人」、申し立てられた側を「相手方」と言います。それに対して民事訴訟では、訴えを起こした側を「原告」、訴えを起こされた側を「被告」と呼ぶことになります。ちなみに、「被告人」は刑事事件において起訴された人のことで、民事事件には「被告人」は存在しません。
さて、原告のわたしが戦略を練り直して別訴(損害賠償請求事件の労働審判)を提起した一方で、被告の元雇主も多少戦術を変えつつ、揺さぶりをかけてきました。その詳細は次回に譲りますが、2つあります。一つは、予備的主張として(「予備的主張」については、第51回note参照)、未払い残業代の存在を認めた上で、その残業時間を短く(=未払い残業代を少なく)するような主張を繰り出してきたこと。もう一つは、原告のわたしの人格、業務での態度・姿勢を問題視するような主張を繰り出してきたことです。
労働審判から民事訴訟へ移行して、ドロドロ感満載になってきて、がぜん盛り上がってきました。労働審判だったなら、わたしと元雇主とでフェイス・トュー・フェイスで喧々諤々できたところです。しかし、民事訴訟ですから、口頭弁論期日で言葉でやり取りできるわけではなく、あくまで準備書面のやり取りによる”闘い”になります。文章作成能力に依存すること大。もちろん被告には代理人弁護士が付いているので、わたしとしては、まさに相手の胸を借りるつもりで臨みます。
今回はこのあたりで、次回へ続きます。また、2トラックのもう一つの方、損害賠償請求事件の労働審判についても解説する予定です。お楽しみに!
街中利公
PS.拙著も是非手にお取りください。
免責事項:
noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?