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【イベントレポート】X Cross Sector Kyoto OPENDAY 2022

多様なセクターのプレイヤーが集い、対話を通じて社会の課題にアプローチしていくX Cross Sector Kyoto(クロスセクターキョウト)
広く市民から「京都がもっとよくなる」「もっと住みやすくなる」まちづくりの取組提案を募集し「まちづくり・お宝バンク」に登録・公開するとともに、提案の実現に向けたきめ細やかなサポートなどを行っています。

2021年度のプログラムの締めくくりとなるOPEN DAYを、2022年2月26日に開催しました。第一部では活動報告、第二部ではゲストトークという密度の濃い当日の様子を、イベントレポートでお届けします!

Xsector Kyotoで生まれたプロジェクト

2021年度のグループセッション型プログラムは、全8回のセッションと個別のチームセッションを通じて、京都の未来が良くなる取組や地域課題の解決に向け、参加者皆さんの「やりたいこと」 を整理し、4人のアドバイザーと⼀緒に、想いをカタチにする共通⽬標を考え実践するプログラムです。
ここから6つのプロジェクトチームが生まれました。まずは各チームの活動背景、内容、今後のビジョンをダイジェストでどうぞ!

PRJ①:コンポストから広がる循環ライフ

一つ目のチームは「ゆるつな」チーム。名前の由来は、「ゆるくつながる」ことから。

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「循環」に取り組むことが当たり前になる世の中(京都)を目指して、実践・実験をメインで進めてこられたチームです。
メンバーが自宅でコンポストを試したところから、チームで自作することになり、他のプロジェクトチームのイベントでコンポスト「キエーロ」を紹介するところにまで発展しました。

実際にやってみたことから次の課題を見つけたところに、説得力があるプレゼンでした。
ゲストからは、「堆肥の有無で野菜を比較栽培し、堆肥を使ってよりおいしく簡単に野菜が作れることがわかったら一気に広がりそう」とコメントしてくださいました。

PRJ②:つなげる場をつなげる

続いてのチームは、その名の通りカフェ好きが集まった「CAFELOVER’s

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発起人の野村さんは毎日カフェをはしごするほどのカフェ好きです。カフェ好き同士が美学を共有して、カフェから世界を少しでも居心地の良い場所にしていきたいという思いで、CAFELOVER’sのプロジェクトが動き出しました。
このチームの特徴は、関わりたい深さを選びやすいように、3つのレイヤーを敷いているところ。

①オンラインコミュニティ
LINE オープンチャットで、おすすめカフェ情報の記録、イベント情報発信②テーマごとの編集会議
テーマごとにカフェ情報をまとめたり、ツアーコースを作ったり。
③カフェを通じた地域プロジェクトの実施
コーヒーかす再利用プロジェクトなど

カフェが好きという入り口から、レイヤーを深めるにつれてSDGsや社会課題解決ににつながっていく導線が魅力なプロジェクトです。

PRJ③:子育て=キャリアだ!

3番目は、「子育て経験を面接で語れるように」と、子育て経験のリフレーミングに取り組むチーム「Parenting Career(ペアキャリ)」です。

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子育ては仕事でどんな風に活かせるのかを探るために、子育てを仕事に置き換えて翻訳する会を開催されました。
参加者からは、「そもそも子育て経験を言語化するという発想がなく、「大変だった」で終わっていた」という気づきがあったそうです。でも子育てをよく見てみると、子育てノウハウを人に伝えることは、同じ目線で同じレベルで仕事をしてもらうためのチームメンバー育成と同じだったりします。
子育て経験を言語化できればキャリアアップにつなげられそうという方向性が見えてきたところで、今後は言語化の機会を増やすために、ゲームコンテンツを企画中です。

PRJ④:カーゴバイクで小さなチャレンジだ

4番目は、自転車屋台チーム。カーゴバイクを使って学生や社会人の「お店をしたい!」という小さなチャレンジを支援するプロジェクト、略して「小チャレ」です。

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「こんなお店をはじめたい!と」思い描いたものが、カーゴバイクで現実化したときに、震える感動があったのがきっかけでした。毎日そんな震えるほどの感動を起こしまくりたいという思いからプロジェクトが始まりました。

今後は約1000人にヒアリングしてニーズを把握していきます。物販中心で、ECサイトと併用した実店舗の一つの形として自転車屋台を運用するのが良さそうとのこと。ゲストからは、「カーゴバイクの購入はハードルが高いので、一日レンタルやサブスクリプションと相性が良さそう」とコメントしてくださいました。どんなお店が実現していくのか楽しみですね!

PRJ⑤:地域に愛される公園

5番目は、「伏見プレーパーク」チームです。

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子供の自殺、不登校が過去最多の現代社会を見ながら、「遊ぶことは生きることそのもの。本当にやってみたい思いに蓋をすることがアイデンティティの悩みや生きづらさにつながっているんじゃないか?」という疑問がきっかけにあったそうです。
そして生きづらいのは子供だけじゃないはずということで、大人も子供もごちゃまぜのプレーパークをつくろうと発案されました。

2月23日には、伏見南部公園で一日体験プレーパークを実施。
公園の近くのマンションの方から、「公園で花壇をやりたい」と言ってくださる方が現れたり、子供のたち交流の風景が見られたりと、手ごたえを感じるイベントとなりました。
ゲストからは、「子供たちの生きづらさ解消が趣旨なので、子供たち主体でプログラムを決めるのもできそう」と、今後の方向性のヒントも見えてきました。

PRJ⑥:あっちこっち学校-つながる教室-

6番目は、あっちこっち学校。元々学校の先生をしていたメンバーが発起人となり、「楽しいよ!」と自信を持って次の世代に受け継げる、未来の学校を考えるプロジェクトです。

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子供がよりよく育つには大人がより良く生きるロールモデルになるのが大事ということで、「おとな図鑑」や伝記を構想されています。また、プレーパークでレモネード屋台の出店や、ロケット打ち上げもされました。テーマであった「みんなが上を向いて笑う瞬間」を作ることができました。
リモートワークが進んで両親が移住しやすい追い風があるので、「今後は行政と連携し、子供の教育を軸に移住する人や地域活性化の波を加速していけそう」とゲストからコメントしてくださいました。

以上が6チームのプレゼン。参加者同士のブレイクアウトセッションで感想を共有したあとに、ゲストトークに移ります。

ゲストトーク①ロマンを届けるコーヒー

株式会社アカイノロシ代表取締役、矢野龍平さんからは、起業に至るドラマチックなストーリーを話してくださいました。

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矢野さんは和歌山のワイナリーで活動していたところ、たまたまご縁でタイに行くことになりました。自分で焙煎したコーヒーを飲んだらすごく美味しかったのが原体験となり、帰国後、大学4年生だった2018年に起業されます。
タイの元麻薬地帯で作られているコーヒー豆に生産から関わり、関係者とのサスティナブルな関係構築と、高い品質管理を両立した事業、「アカイノロシ」です。
当時、タイのコーヒーの認知も、高品質なアラビカ種の栽培も、自分たちのコーヒーに関する知識もほとんどなかったといいます。様々な壁を乗り越えてきた「ロマン」がつまった、味わい深いコーヒーは、今やたくさんのファンがいます。
矢野さんのお話からは、事業の立ち上げが大変であるほど、事業は堅固になり、唯一無二のストーリーを生み出し、魅力も増していくんだなと感じました。


ゲストトーク②オールインクルーシブファッション

SOLIT株式会社 代表取締役CEOの田中美咲さんからは、社会起業家として事業を運営するマインドを語ってくださいました。

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田中さんはIT企業、一般社団法人を経て、2020年に東京を拠点にsolit!設立。メンバーは40人ですが、医療福祉従事者が半分、アパレル、企画が半分と、ユニークな構成になっています。

服は大量生産、大量消費されている一方で、マイノリティには服の選択肢はすごく少ない現状があります。そこでSOLITが目指すのは、持続可能性と多様性の同時実現事業だけでなく地球環境の持続可能性も両立されています。

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SOLITの服は受注生産型で、1600通り以上のカスタマイズができるようになっています。
右手だけSサイズ、左手はMサイズ、なんてことも可能です。
「この服で、もうファッションを諦めなくていいんだと思えた」という脊髄損傷の方からの感想をはじめ、喜びの声がたくさん生まれています。病院と連携し、心地よさや感情への影響を考慮した病院服も開発されています。

「服が変わることで社会参加を促せる」と田中さん。

「つくりたいのは、All inclusiveな社会です。あくまでもファッションは一事例です」

田中さんのお話からは、理念に忠実に事業を組み立てる姿勢が学びになりました。事業と環境の持続可能性、多様性という、多くの価値を両立することは本当にできるんだなと印象に残りました。

ゲストトークセッション

続いて、ゲストトークセッションに移ります。事業を立ち上げ運営するときのよくある悩みをゲストに投げかけたところ、たくさんの学びが得られました。

事業を成功させる鍵は何かを聞いてみたところ、

アイデアで終わらせない、その一つだけです。起業した人は特別な人に見られることが多いですが、僕は頭で考える前に行動に移すことを繰り返しただけでした。失敗するのを大前提として、失敗したときにどう立ち直っていくかを考えて邁進してきました。失敗の回数は100万回くらいです(笑)。失敗が起こってから、「じゃあどうするか」の連続でした。なので失敗を回避する気がありません」(矢野さん)
「私は、終わらせ方を決めて始めることを意識しています。いつの間にかみんなが息切れして辞めることがよくあります。みんなが苦しくならないように、目標やKPIを決めるのはすごく大事だと思います」(田中さん)

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「社会課題解決」という結果に結びつけるには、量と質のどちらにより重きを置くかで方法が変わりそうな気がします。「量で大きな成果を上げてこそインパクトも大きい」という矢野さんの答えに対し、田中さんは逆の視点を与えてくださいました。

轍をつくることが目的の場合、めちゃくちゃ小さくてもいいから純度100%の成功事例をつくるという考え方もあると思います。だからtoBのビジネスで収入を出していこうと思っています」と、目的に応じて、ほかの事業とのバランスも見つつアプローチを変えることを学びました。

Q.事業を運営する上で欠かせない人はどんな人でしょうか?

「自分が教えてもらったコーヒー屋さんでした。最初は、その人がやっていることを丸パクリしていました。一挙手一投足すべて丸パクリです。その後にオリジナルなものができるんだと思います」と、守破離を実践された矢野さん。
田中さんは、
「めちゃくちゃ信頼できる仲間を一人見つけることだと思います。指示した通りに動く仲間ではなく、共に歩んでくれる仲間がいてすごくよかったと思います。」と、仲間の選び方を教えてくださいました。

Q.ライフスタイルやコミットレベルがばらばらなメンバーと連携して事業を進める秘訣は何ですか?

同じテーブルに載せてみんなと一緒に考えることだと思います。セクターが違うと、通用している論理や言語がちょっとずつ違います。それをすり合わせていくことが大事だと思います」(田中さん)
「若さを武器にとにかくぶつかることをやってきました。でも偉ぶらない。目線を合わせてやっていくことが大切だと思います」(矢野さん)

お二人とも共通して、同じ目線で話す状況や姿勢をつくることが大切なんだなと学びました。

ここでゲストトークセッションは終了し、イベントを締めくくります。
すでにアクションを起こしている人も、これから何かしてみたい人も、きっとたくさんの刺激を受けられたであろう3時間半。
これからも「みんなごとのまちづくり」が進歩していきますように!ご参加いただいた皆さん、プロジェクトチームの皆さん、ゲストの皆さん、ありがとうございました!


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