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『キャロル』パトリシア・ハイスミス 2024年⑳

映画の『キャロル』が好きで。
映画を観ている時は、それほど作品の背景にある時代のことは、意識に上らなかった。
でも小説を読むと、作品が書かれた時代に同性愛者がどんな視線を浴びていたのか、自分が本当に望む人生を生きていくことが、どれだけ難しいことだったのか(難しいことなのか)がわかる。

発表当時は、同性愛者を描いた作品が、希望を見せる終わり方をするのは初めてだ、とファンレターがたくさん届いたという。

パトリシア・ハイスミスの作品は初めてだったが、細やかな模様の美しいレースのようだと思った。不安や絶望や渇望といった、テレーズの意識の流れが、ものすごく丁寧に描かれている。

テレーズが恋に落ちる瞬間、相手に焦がれる感情を読んでいて、異性愛の物語と、いったい何が違うのだろう、という気持ちにさせられた。何も違いはしない。同性同士だというだけで、差別や偏見を受けることは、根本的に間違っている、と確信した。

ミステリ作家とも、レズビアン文学作家とも、レッテルを貼られるのを嫌ったというパトリシア・ハイスミスの考え方を、いいなと思った。

#キャロル #読書感想文

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