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霧を抜けて

台本が、どうやら佳境を迎えたようだ。

ここまで結構、苦しかった。着地点が見つからなくて、なんてことを始めてしまったのだろうと、(今も時々思うけど)去年の秋頃からは頭を抱える日々が続いていた。

稽古日、集まってもらったみんなと作品について、演出についてディスカッションを重ねた。

企画が持ち上がった昨年の秋には、「尾崎翠って、誰?」という状態だったメンバーが、「くびまき」について議論を交わし合っているのを奇妙な思いで眺める。純粋に、嬉しい。「同族者」に会えたようで。

今回の舞台は、「私」というフィルターを通した『第七官界彷徨』になるのだろうとは思っていた。でも今は、それ以上に遠く、高く飛翔する舞台にできるのではないかという気がしてきた。私の想像力の外へ。

表現する、から「伝える」へ。外にいる誰かを信じて言葉を放つことを、自分に許してもいいと思い始めた。

「わかる」ために、おそれず言葉を交わしてくれた仲間には、感謝と同じくらいの驚きを感じた。違う惑星にいるのかもしれないのに、なぜ諦めずに言葉を重ねてくれるのか。

私も、あり合わせの言葉でごまかすわけにはいかない。向き合い抜くんだ、と決めた。

台本作りを通じて、そんな風に思った。

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