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「好奇心が未来をつくる ソニーCSL研究員が妄想する人類のこれから」の紹介

十分豊かになった現代で、何が未来をつくるのでしょうか?
それぞれの人の中にある好奇心なのではないか、そういった思いが昔から私の心の中にあり、書店でこの本を目にしたとき、自然と手が伸びていました。

ソニーCSLは「ソニーコンピュータサイエンス研究所」の略です。ソニーCSLでは、ソニーの事業領域にとらわれず、「人類の未来のための研究」を行っているそうです。

 ソニーCSLをひと言で言えば、「クレイジーな人が集まって妄想を現実化する場所」です。領域は問わず、自らの力で未踏の領域を切り開こうとするエネルギーの高い人々が、その能力をいかんなく発揮できる場を目指しています。
 我々のモットーは、「越境し行動する研究所」です。
 研究分野も限定していません。脳科学者もいれば、数学者もいる。農業の研究をしている人もいれば、義足の開発、健康医療や老化研究、言語や音楽、デザインに関する人間の創造性や能力拡張の研究など広範な領域を研究している研究員が所属しています。研究所という名前になっていますが、基礎研究から社会実装や事業化まで、一気通貫に行なう体制が確立しています。自分が重要だと思う研究の成果は、「研究」という枠に縛られずに、自ら世の中に〝実装する〟という姿勢が大切だと思っています。
 研究をするということは、未来を切り開いていくことです。その原動力は、一人ひとりの強烈な想いから生まれるものなのです。
 そして、我々のミッションも単純明快で、「人類の未来のための研究」を行なうということ、この一点に尽きます。さまざまな研究は、それが世のため・人のためになっているか。これが我々の研究に対する唯一の価値観といえます。

(はじめにより)

現在、ソニーCLSは大きく3つの研究領域に注力しているそうです。それは、①グローバルアジェンダ、②Human Augmentation、③サイバネティック・インテリジェンスです。①グローバルアジェンダは、地球規模の大きな問題に対して、どうアプローチするかということ。②Human Augmentationは、人間の能力(創造力や感覚能力、身体能力など)をテクノロジーによって拡張すること。③サイバネティック・インテリジェンスは、AIやデータ解析を基盤として現実世界のシステムやプロセスをインテリジェント化すること、だそうです。これだけみても、様々な分野の研究を行っていることが分かります。

この本の各章にはソニーCSLの研究員の方が一人ずつ登場し、それぞれの方の研究内容から動機、問題意識、描いている未来を語っていきます。この辺りの姿勢や考え方は、研究を行っている私としてもとても参考になりました。

1 暦本純一 未来の〝自然〟を呼び込むインベンターであり続けたい
2 古屋晋一 ピアニストの身体動作の研究を通じて「文化が進化し続ける世界」をつくる
3 茂木健一郎 好奇心以外に、人類の旅の行き先を決める手段はない
4 吉田かおる 研究は麻薬のようなもの
5 高安秀樹 理論物理学を人工知能に構築できれば、科学のあり方は抜本的につくり変えられる
6 アレクシー・アンドレ 人はもっと面白がれるはず
7 ミカエル・シュプランガー どうしたら、人間のインテリジェンスの「コア」を備えたマシンの再構築ができるか
8 大和田茂 機械と人間の関係を考える
9 舩橋真俊 テクノロジーは人の苦しみを取り除く手段。幸福論を持ち込むべきではない
10 竹内雄一郎 分散した知識で街を編集するWikitopia
11 笠原俊一 無意識な知覚をコントロールできたら、自分は自分をどのように認識するのか
12 フランク・ニールセン 情熱だけで研究をする。幾何学とは、そうした研究者しか続けられない分野である
13 遠藤謙 エンジニアとしての楽しみとは、ユーザーに使われ、機能し、喜んでいる姿を見ること
14 桜田一洋 心で心を思う――他人の心を了解することから始まる新しい社会を目指して
15 佐々木貴宏 仮想世界のシミュレーションで、「現実社会」をより良くする
16 磯崎隆司 物理学と統計科学の融合を
17 吉田由紀 小さな解明が積み重なれば、いつか全体像がわかるはず
18 山本雄士 病気にさせない医療を実現する
19 ナターリア・ポリュリャーフ 美しさは自由を獲得するツール。奴隷を育てない社会へ
20 北野宏明 自ら越境していくことで未来が拓けていく

読んでみると、研究分野はみなさん違うものの、子どもの頃に経験したことや感じたことがきっかけとなって、現在の研究に取り組まれている方が多いことが分かります。子どもの頃からの好奇心が今の研究につながっているのでしょう。そして、好奇心が原動力となっている研究は、やっている本人も楽しいのでどんどん前に進むということがこの本からヒシヒシと伝わってきます。

好奇心というのは、忙しい日常の中にいると忘れてしまいがちです。ふと立ち止まって、自分の好きなことに取り組む時間を取り入れていきたいと思いました。

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