「愛がなんだ」(2019)

成田凌はとても良い役者だと思う。とんでもなく端正というよりは愛嬌のある顔立ちなところも、背は高いのにひょろっひょろで肩幅も広くなくてちょっと猫背なところも(もちろんモデルなので猫背に"なれる"というのが正しいかもしれない)、かわいい表情も色っぽい表情もできるところも、そしてクズ男をやらせたら天下一品なところも。

もちろん彼の人となりの多くを知っているわけではないけど、まぁ、いい意味で本人にクズなところがあるんじゃないか、だからこそクズの演技が光るんじゃないか、などと思う。勝手に人気俳優をクズクズ言ってごめんなさい。でも品行方正で一点の曇りもない性格で無味乾燥な成田凌にはそんなに需要がない気がするからいいよね。いい意味です、いい意味。褒めてるの。

テルコはマモルが大好き。出会ったきっかけは関係の薄い友達の結婚パーティで、居心地が悪かった者同士の些細な会話。好きになった明確な出来事はあってないようなもの、明らかに都合の良い女扱いを受けても、いやむしろ女扱い、人扱いすらされていないかもしれないけど、それでもマモちゃんのことが好きなのだ。「愛がなんだってんだよ」。もはやそういうの飛び越えてんだよ。マモちゃんのことが好きというエネルギーだけで日々生きているテルコ。そんな主人公に感情移入できるかと言ったらできない気がするけど、すべてを投げ出してしまいたいほど好きで好きで好き!っていう脳内お花畑モードの恋に浸った経験のある人はそれなりにいるだろう。思い出せば自分もある気がする。恋人と少しでも長くいっしょにいたくて授業やサークルをさぼったこととか、あるよね。仕事をさぼったことは、さすがにないけど。

観終わったあと、もだもだして、「幸せになりたいっすねぇ~~~~!!!」と恋人に感想を伝えたのだが、「それって今幸せじゃないってこと?」とさみしそうな反応をさせてしまった。そういうことじゃないんだごめん、って思った。ダメな恋をしたことがある人ならみんな同じような気持ちになるけど、それは今ダメな恋をしているって意味ではない。でもすっごく刺さる。

「片思いだっていい」その言葉を放つからには覚悟ってものを伴わなきゃいけないと思う。それでいいと思うのか。良くないからあきらめるのか。前者のように決めたなら、それはつらい。何とかその中での楽しみを探していくのかもしれない。テルコは自分を捻じ曲げてまでマモちゃんへ執着しているように感じる。もはや意地。一般的な「幸せ」の尺度とは違うと思うし、馬鹿だなぁと思うと同時に、ここまで人を好きになって執着できるのは幸せなのかもしれない。相手が好きだからこそ、相手が誰を好きなのか、相手が好きな人に向ける視線も当然わかっちゃうよね。マモルが好きな人に向ける視線に気づくシーンはヒリヒリする。

ちなみに、みんな大好き「きららさん」、改め帰蕾さんがエキストラとして出演している。というか映っている、という感じか。思わず気になって目が離せなくなったので、そのシーンの前後は集中力が欠けていたかもしれない。エンドロールには「帰蕾」として載っていたらしいが気づけなかったのと、ひとりで観にきていたので誰かに確認したくてもできず、帰り道で即検索した。元気そうで安心しました。


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