闘いは終わらない(総督)
いよいよ、本欄で読者諸氏に会えるのもこれが最後の機会となった。キョウカイジャーの諸君においては2014年春の連載開始以来、我が輩のムチャぶりにめげることなく、よくぞここまでついてきてくれた。最後まで素性を明かすことなく、誰に褒められるでもなく、「神の国」からの極秘任務を忠実に全うしてくれたことに心からの敬意と謝意を表しておきたい。特命を帯びて離任中の初代ゴールド、そして追加戦士の奮闘にも目を見張るものがあった。ありがとう。
さて、伝道宣隊キョウカイジャーとしてはこれでひとまず活動休止になるが、闘うべき相手は依然としてこの星に、この地の教会にしぶとく巣食い続けている。最終回にあたり、後進のヒーロー候補への遺言に代えて指摘しておきたい。
まずは、子どもたちに人気の某アニメにも登場した「ヒキコウモリ」。多くの教会がこの妖怪に取りつかれ、外へ打って出るのが怖くなり、臆病で内向きになっている。世の組織は教会に限らず、規模が小さくなればなるほど保守化する傾向にあるが、内部が弱っている時ほど、より開かれ、外部とつながっていかなければならない。
その意味でも、世の99%を占めるノンクリ(非信徒)の宿敵「ドヤガオシント」はなかなか手ごわい。教会の不文律やしきたりを知らない「にわかファン」には特に厳しく、「教えてあげる」「救ってあげる」という善意の必殺ビーム「ウエからメセン」を放ち、勇気を振り絞って教会の敷居をまたいだ新参者をことごとく駆逐する。
今年、ニュースにも取り上げられた「べきおばけ」も厄介だ。「牧師(牧師夫人)たる者○○べき」「教会員はかくあるべき」と、何かにつけて特定の理想像を押し付ける。さらに、多くの教会で勢力を増しつつあるのは「くれないおばけ」。曰く「話を聞いてくれない」「訪問してくれない」「手紙を書いてくれない」……。牧師も信徒も教会を形成する一当事者であるとの自覚を持たない限り、「消費者」の要求には際限がない。口には出さずとも内心、「せっかくこれだけ献金してるのにサービスが悪くなった」などと、神にささげる献金を受益者の対価として捉えている節はないだろうか。
そして、若い男女を好んで言い寄る寄生モンスター「ケッコンマダカ」。既婚者を前にして、「コドモハマダカ」「フタリメマダカ」へと進化する姿もしばしば身近に目撃できるはず。人間関係が希薄になる中、今どき稀有な「おせっかい」がかえって見直される場面もあるだろうが、無垢でデリカシーのない声がけは厳に慎まなければならない。
とかく閉鎖的な社会では魑魅魍魎がはびこりやすい。時には視点を変えることも必要。「感謝しなさい」「喜びなさい」「赦しなさい」「裁いてはならない」と強要する言説を鵜呑みにし、一人で苦しむ必要などない。足りないのは祈りや信仰ではなく、努力や工夫かもしれないのだ。「聖書的」「福音的」「教会的」「伝統的」「建徳的」などの曖昧な表現も、使い方には慎重でありたい。
鉄壁とも思える布陣を前に、残された宿題はあまりに大きい。しかし、困った時はいつでも助けを呼んでほしい。声にならない声に応え、見えなくされていた本質的課題を可視化することこそ、匿名で奮闘してきた我々の使命である。インマヌエル、主は我らと共にあり。
(2019年12月25日付「キリスト新聞」掲載)
【総督】 名前不明 キョウカイジャーを統括する司令塔。「神の国」建設に寄与するため、あらゆる予定調和を打ち壊し、業界の常識を覆そうと目論む野心家。地上では仮の姿でキリスト教メディアに携わる。サブカル好きの中二病。炎上体質。武器:督促メール/必殺技:連投ツイート/弱点:カマドウマ(便所コオロギ)
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