見出し画像

小説|赤いバトン[改訂版]|第16話 母の日(語り:コウスケ)

この春からオレは高校一年生になった。令和初の高一だ。
かと言って、大した話ではない。何から何まですべてが令和初なのだから。
しかし令和元年の今日だけは、大したことをした。
今日は、母の日。令和になってまだ二週間もっていない令和初の母の日。昨年の平成までは、感謝の手紙だけを渡していた。つまりタダだ。しかし高一にもなって、手紙だけでは申し訳ない。てか、カッコ悪い。だから今日は、小遣こづかいの中から二千五百円をフンパツした。最寄もより駅にある商業施設内の花屋さんにアレンジメントしてもらって、赤いカーネーションのバスケットをプレゼントした。
「なにー、コウスケ。お花なんてビックリだがー」とおふくろ。
「もう高一だし。令和だし」とオレ。
「ありがとう。めっちゃ嬉しいわ ……あれ? 手紙はあらへんの?」
「はい、コレ」と小さなメッセージカードを渡した。
そのカードには、
[母ケイコへ。いつもありがとう。コウスケ]とだけ書いた。

オレは小学校低学年の時に、家族三人、親父の転勤で愛知県から東京に引っ越してきた。オレと親父はそうでもないのだが、おふくろだけは方言が抜けない。しみついた名古屋弁がきつい。厳密げんみつに言うと、尾張おわり弁がきつい。「みゃあみゃあ」とは言わないが、平気で「ちんちん」とか言う。マジでやめてほしい。普通に「熱い」と言ってほしい。
そんな尾張おわり弁まるだしのおふくろには、とても大事にしているものがある。
オレが小一の時から毎年書いてきた母の日の手紙。
もう一つは[十七番の赤いバトン]。
その[十七番の赤いバトン]は、おふくろが中二の時、サンキュー先生だったクミコ先生から渡されたもので、男子には青いバトン、女子には赤いバトンが配られたそうだ。
ちなみに十七番というのは、当時のおふくろの出席番号だ。そしてクラスメイトの多く、特に女子は、中学校卒業や高校卒業、結婚する時などに、自分の親に渡したらしい。おふくろがそう言っていた。

~ 第17話 メッセージ(語り:ケイコ)に、つづく ~


~ 全20話、一気に読みたい方は、AmazonにてKindle版 販売中 ~
Kindle Unlimited会員の方は、無料(いつでも読み放題)です

★ kindle無料アプリ(iOS/Android/MacやPC版)ダウンロード ★
~ 以下のリンクは、Amazonのウェブサイト ~
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/fd/kcp

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?