映画『グレイマン』を観た原作ファンとしての感想

先にこちらの記事を読んでもらえると理解が早くなると思う(こちらの記事で用いた呼称で書くため)
https://note.com/macaroninote/n/n0fed7ca74a18

※これはあくまでも原作ファンとしての感想です
※映画のネタバレあります

結論から先に言おう。

派手なアクション映画としては普通だが
グレイマンの映画としてはゴミ。

いやあもう、本当にこうとしか言いようがない。原作の要素があまりにも薄い。最早冒涜の類。そもそもアクション映画としても『6アンダーグランド』とか『レッド・ノーティス』と比べるとうーんという感じである。
何故かフィッツロイがCIAの人間(原作では元MI5)で刑務所に入っているコートをリクルートするし時系列が現在になってもコートがまだCIAの殺し屋(原作では物語開始時点で『目撃しだい射殺』の追われる身)という原作ファンにとっては地獄の冒頭(原作では暗殺を終えて脱出しようとしているコートがイラクでトラブルに首を突っ込むところから始まる)。

その後も「原作?そんなもんあったっけ?」という感じの展開になる。原作の大ファンである私は冒頭30分で観るのをやめたくなった。でもちゃんと最後まで観た。正直この感想も血の涙を流しながら書いていると言っても過言ではない。
ルッソ兄弟は何でこんな原作と原作ファンを愚弄するような映画を撮ったんだ?

とりあえずここからは上記に挙げた冒頭でのこと以外で特に気になった要素を挙げようと思う。

特に気になった原作無視要素

・全然グレイマン(人目に付かない男)じゃない

この映画、CIAに追われる段階からスタートするので原作におけるグレイマン要素が全然無いのである。
変装とか身分の詐称を全然しないしすげえ目立つ。というか原作より銃撃戦が誇張されているのでとにかく派手。
原作でもスイスで警察に捕まったり銃撃戦してたけどあそこまでド派手じゃねえよ!

・ロイドの設定

原作においてロイドは元CIAでローラン・グループという多国籍企業の弁護士だが、映画においては元CIAでデニーから仕事を請け負っている。
原作と映画ではそもそも見た目もタイプも違う人間なのだ。故に映画ではクリス・エヴァンスが演じているが、仮に原作通りの設定でキャスティングするならガブリエル・マンあたりが適しているだろう。
ちなみに原作ではリーゲルに撃たれて死ぬが、映画ではスーザンに撃たれて死ぬ。

・スーザンについて

スーザン・ブルーアという女がカーマイケルの側近として登場する。同名の登場人物は原作シリーズにおいては1作目には出ておらず、5作目にあたる『暗殺者の反撃』から登場する。
映画で登場しないリーゲルの代わりにロイドを撃ち殺すあたり、原作シリーズの後ろからグレイマンを撃とうとしたスーザンとキャラクター性はまあそんな変わらないな….

・マーガレットについて

マーガレット・ケイヒルという元支局長の女性が出てくるが、これは原作には登場しない。原作ではモーリスというコートの元指導教官が出てくる。
モーリスもコートに武器と車を与え、逃げる時間を稼ぐために南アフリカの暗殺チームを自らの命と引き換えに殺すという役割を果たす。
ただし映画とは明確に違うものがある。それはコートとの関係性だ。
モーリスは指導教官だったこともあってコートに慕われているし、「おれのヒーロー」とまで言われるくらいだがマーガレットはなんかどうも関係性がそこまで濃いように見えないのであの巻き添え自爆シーンもどうも薄っぺらく感じてしまう。

・コートの性分について

前に書いた記事でも触れているが、コートはトラブルに巻き込まれることが分かっていても悪人から善人を助けてしまう性分がある。
原作でも墜落したヘリに乗っていた米兵を武装勢力から助けたり、スイスで警官を救おうとしたり、脅されてたとはいえ裏切りを行ったフィッツロイの家族を助けたりプロの殺し屋とは思えないほどの人情味がある。
これは原作シリーズ通して発揮されているコートの魅力である。しかし映画ではその魅力がまるで発揮されない。
あくまでも「クレアとフィッツロイが捕らわれているから助ける」みたいな感じになってしまっている。せめて暗殺部隊が現地警察を撃ちまくっている時に助けるシーンがあればよかったものを…

・コートの父親の描写

正直これが一番腹立たしい原作改変だった。原作でのコートの父親はSWATの学校の校長をしていたり、コートが「目撃しだい射殺」の対象になっても味方でいてくれたいい父親である。それなのに映画ではコートに虐待をしていた悪い父親扱いなのである。本当にふざけるなよ。酷すぎる。

・コートの呼ばれ方

コートは映画においては基本的に「シックス」と呼ばれている。しかし原作でこの呼び方をするのはザック・ハイタワーだけである(そのザックもどうやら映画では存在しなさそうである)。
大抵は「ヴァイオレイター(違反者)」とか「コート」「ジェントリー」などと呼ばれているのでずっとシックスと呼ばれているのは違和感が凄かった。

まとめ

正直他にも色々気になったところはあったんだけど冒頭から最後まで観ながらキレっぱなしだったのでキリがない。何なら観終わってからストレスで体調調が悪くなったくらいだ。
もし映画をまだ観ておらず、先にこの記事を目にした原作シリーズファンがいるかもしれないので1つアドバイスを人柱として送っておくとする。


原作シリーズが好きなら観るな!

以上である。いや本当に原作の大ファンなら観るべきじゃない。他の原作ファンには俺のような思いをしてほしくない。『グレイマン』という題名を名乗らないで欲しいくらい原作破壊してたし。こんなものは観ないで今年中には日本でも発売されるであろう原作シリーズの最新作『Sierra Six(原題)』を大人しく待とう!
あと原作を読んだことが無い人のためにも最後にAmazonのリンクをシリーズ3作目まで貼っておくので是非買って読んでみてほしい。

ちなみに私は映画の感想をこのように長文で書くのは初めてだし、1つの映画をここまで貶すことも初めてだ。だから言いたいことがとっちらかった駄文で読み辛かったかもしれない。
だが許してほしい、こうでもしないと私の中に芽生えたどす黒い感情を発散できなかったのだ。こんな怨嗟にまみれた文章を最後まで読んでくれた方には感謝しかない。
私がまたこのような文章を書くかどうかは分からない。だが仮に続編が製作され、Netflixで配信された場合はきっとまた書くだろう。原作ファンとしての正直な感想を。


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