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琉球宮廷料理が池袋東武で

トップ画を飾る料理は「ミヌダル」という。
琉球宮廷料理だ。
その昔、琉球王国の国王や諸外国の使節達がおもてなし料理として食していたもの。

庶民の口には入らない特別な席での料理だ。

この度、池袋東武デパートでは沖縄物産展が開催されている。
出展者のひとつ“比嘉邸”ではミヌダル含む、いくつかの琉球宮廷料理をコースで提供している。


ミミガー・ミヌダル・ラフテー・冬瓜漬・中身汁
さんぴん茶・泡盛は琉球王国時代からのもの
村一番の名人が作ったサーターアンダギーから
コースが始まる


夏泡盛とミミガーの和え物

夏泡盛、聞き慣れない名前かもしれない。
神村酒造から出されている一本なのだが、ロックで楽しめるように度数低めで製造されている。
この度数低めに調整することが非常に難しいらしく、そこは神村酒造さんの製造技術がキラリと光っている。

ミミガーの和え物は春雨とパパイヤの柔らかな食感に、ミミガーのコリコリが加わって香り爽やかな一品だった。

ミミガーは豚の耳。コリコリとした軟骨がうまい。

ミヌダルに添えられているのはクワンソウという花

こちらは冒頭でも触れたミヌダル。
琉球宮廷料理の代表的一品とも言える。

同じ大きさに切られた豚肉を、反り返らないように細かく包丁を入れて処理してから蒸す。
黒ごまを擦って、擦ってペーストにしたものを丁寧にまとわせていく。

見た目以上に手が込んでいる。
手間をかけることこそが「琉球のおもてなし」なのだ。

今では、ミヌダルを食べさせてくれる店が沖縄でも少ない。
なかなかここまでの手間暇がかけられないからだと推測している。

添えられているクワンソウはユリ科の植物。
別名、アキノワスレグサとも呼ばれて睡眠効果がある。琉球王国時代、国王が安眠のために食していたのだとか。
湯がいて梅酢など、酢の物にされることが多い。

さて、コースは佳境に入っていく。
こちらはラフテーの味噌風味。

この器は豚の血を撥水剤として使用している


皆さんが見慣れたラフテーと違うかもしれない。
味噌で炊かれているからだ。
味噌ラフテーは身が柔らかく、箸がスッと通る。

その昔、那覇のラフテーは醤油で炊かれ、首里は味噌で炊かれていた。
私達がよく見かけるラフテーは醤油で炊かれたものが多い。

手前が豚の脂味噌・奥は冬瓜漬

箸休めとして提供された冬瓜漬。
こちらも立派な琉球宮廷菓子だ。

現在では那覇の謝花きっぱん店でしか作られていない。危機に瀕した伝統菓子。

そして、脂味噌の器にもご注目。
この器はデイゴの木で作られている。とても軽くて驚いた。
デイゴは沖縄県の花。真っ赤な花が咲く。

お猪口で頂く泡盛がおいしい


最後は私の大好き中身汁。こちらも琉球宮廷料理だ。
何度も下処理して臭みを取った豚の内臓を、カツオと干し椎茸の上品な出汁で仕上げた一品。

内臓の下処理と出汁に手間をかける程、中身汁は品よく香りよく仕上がる。
手抜き小手先では決して出せない味だ。

十分に下処理された中身汁には臭み消しのショウガも必要としない。

ひと口啜って感動。出汁の世界をぐるり駆け巡った。
なかなかここまで良質な中身汁には出会えない。
比嘉邸の中身汁は、今までで一番うまかった。

絶品比嘉邸の中身汁

いまや日本全国で親しまれている、ゴーヤチャンプルは沖縄庶民料理だ。
今回、比嘉邸で提供されるほとんどが琉球宮廷料理。
沖縄には琉球宮廷料理と沖縄庶民料理のふたつの顔がある。どちらもそれぞれにおいしい。

現在は庶民も宮廷料理が食べられる。
いい時代になったものだ。

ミヌダルとクワンソウ、中身汁は自信をもってお勧めする琉球宮廷料理だ。
機会があればぜひ、一度ご賞味下さい。





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