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国際霊柩送還士という仕事

佐々涼子さんのエンジェルフライトという本を読んだ。
海外で何らかの事情で亡くなった方のご遺体を日本に帰国させてご遺族へ送り届ける仕事だ。

わたしは高校時代に同級生を海外で亡くしている。
ホームステイ先でホストファミリーとキャンプに出かけ、不慮の事故で亡くなった。
初めての海外で目鮮やかな経験の中、突如死の淵へと放り出された彼の心境はいかばかりだったか。
そして元気いっぱいに戻ってくることを疑わなかった我が子の訃報を聞いた両親のことを思うと更に胸が痛んだ。
彼も同じように日本へ戻ってきたのだろうか。

海外で日本人が亡くなり、ご遺族が飛行機で対面に向かうシーンを何度かニュースで見かけたことがある。
亡き家族と共に生きて旅することができたら、どんなに楽しかったことだろう。力なく機内に乗り込む背中に悲しみがつのる。
そこには必ず、現地から日本へご遺体を送る誰かの手があるのだ。

エンジェルフライトを読み、海外で亡くなった方が遺族の心を癒やす姿で戻ってくることが如何に困難かを知った。
長い旅路を帰ってきた親が、子が苦悶の表情を浮かべていたら、生前とは違う痛々しい身体で戻ってきたら、遺族はその姿を一生忘れることはできないだろう。

国際霊柩送還士はご遺族が胸の張り裂けるような心の傷を負うことから護ろうとしてくれているように感じた。
容易いことではないし、緊張の連続、そして正解のない仕事だとも思った。
仕事、と言ってしまうのも躊躇われるような有り難い職務を全うされている存在だと。

国際霊柩送還士の方々を知ることができたことを感謝している。


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