私的な概念空間が思考の限界を画定する
こんにちは、馬渕です。
今日は、「「思考の限界」はいかにして決まるのか?」という哲学的なテーマについて、私なりの視点からお話ししたいと思います。
これは抽象的な問題でありながら、同時に私たちの人生にもとても大きな影響を及ぼす大事なテーマでもあります。
特に哲学に関心がある方にお読み頂ければ嬉しいです。
思考できる領域/思考できない領域
人間の脳の前頭前野は、「思考の座」と呼ばれることがあります。
二重過程理論という仮説によると、人間の思考には2種類の異なるモードがあるのですが、この前頭前野は特に、意識的に・制御をしながら・ゆっくりと進む「遅い思考」に関わっていると考えられています。
この人間に固有の思考のプロセスについて、私は「自由さ」という切り口から十年ほど研究を続けてきました。
自由度という観点から眺めた時、人間の思考プロセスには、2つの領域が関わっていることに気づきます。
それは「思考できる領域/思考できない領域」です。
この2つの領域は、形は異なるものの誰にとっても存在します。
思考不可能なエリアを「外部」としてイメージしてみると、
私たちは普段「考えること」をするとき、殆どの場合、思考できる領域の「内部」に留まっていることがわかります。
思考には、いつも自由な運動を妨げる檻のようなものがあり、限界を越えて思考不可能なエリアに到達することはとても難しいことだと言えます。
思考することができる領域、思考することができない領域…。
この2つの領域は、本質的には何が異なるのでしょうか?
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「思考できる領域/思考できない領域」という表現は、少しイメージし難いうえに、考察を深めるうえであまり適さないので、ここでは私が普段使用している別の概念をご紹介させてもらえたらと思います。
K領域/U領域
私はふだん、人間の思考プロセスを【K領域/U領域】という用語を用いて考察するようにしています。
これは非常に便利な記号としても活用できるので、ぜひ覚えてもらえたら嬉しいです。
こちらの図をご覧ください。
「K領域」(Known area)とは、既知の領域を意味する概念です。
これは、既存の知識・情報・知覚・理解・経験・概念・考え方・アイディアなどの認識が含まれるエリアだと思ってください。
こうしたものすべてが含まれる領域です。そして、
「U領域」(Unknown area)とは、未知の領域を意味します。
これは、未知の知識・情報・知覚・理解・経験・概念・考え方・アイディアなどの認識が含まれるエリアです。
こうしたものすべてが含まれる領域です。
※先ほどの「思考できる領域/思考できない領域」は、ある程度このK領域/U領域に重ね合わせることができます。
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今回、特に注目して頂きたいのはU領域(未知の領域)です。
このU領域は、十分な知識・情報がなく、未だ踏破されたことがない土地であり、光によって照らされていない暗黙的な領域(ダークエリア)です。
もともと殆ど認識される可能性がないうえ、もしこの帯域の存在に気付いた場合でも、全く手掛かりがなく思考することができない領域なのです。
概念の重要性
①思考できる領域➡K領域(既知の領域)
②思考できない領域➡U領域(未知の領域)
この2つのエリアの本質的な違いは、概念の有無であると考えられます。
私たち人間は、成長の過程で多様な概念を獲得・形成・蓄積していきますが、この概念を用いることで思考のプロセスを進めていくためです。
十分な概念が揃っているもの(テーマ)については、私たちは「思考する」ということが可能なのですが、反対に
概念が不足しているもの(テーマ)については、私たちは十全に「思考する」ということができないのです。
概念の空間
概念が不足している、という点についてもう少し明確に述べたいと思います。
先程、人間は成長の過程で多様な概念を獲得すると言いました。
このとき、複数の概念は相互に結び付けられネットワークを形成しますが、このように概念が相互に接続しつつ浮遊する状態をイメージすると、「概念空間」というものを考えることができます。
この概念空間は、この文脈では、個々人で全く異なるためにとてもパーソナルなものだと言えるのですが、
これこそ、思考できる領域/思考できない領域を決定付けるのです。
最後に
今回は、「思考の限界がいかにして決まるのか?」という問題を扱いました。
分かりやすい解説を心掛けようと思っていたのですが、かなり理解し難い文章になってしまった気がします。
結論だけまとめてみると、
このように考えられると思います。
少しでもご参考になれば嬉しいです。
・・・
もしご質問・ご感想などありましたら、気軽にコメント頂けたらと思います。
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