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【振り返りメモ(前半)】SaaS営業組織で「ベストチーム賞」を獲れた10個の要因【マネジメント編】

2020年第4四半期(1月-3月)、ボク自身が担当する営業組織において「ベストチーム賞」を受賞することができました。

■受賞の要因
①新規アカウント獲得数(対前四半期比157%UP)
②インサイドセールス(※IS)とフィールドセールス(※FS)の連携度
③一人当たりの生産性

※①は担当する製品がSaaSモデルのためアカウント獲得数自体は収益を見るうえであんまりピンとこない方もいらっしゃると想定されますが、ここではシンプルに「アカウント数」として記載しました。

本来は、MRR(ARR)やLTV、ARPUなど月次・年次の循環売上・顧客単価などをベースにベンチマークしていきます。詳細は割愛しますが、チャーンレートが2%(例)を切っているか、LTVがCPAの3倍以上を作れているか(マーケ部署は特に重視している点)
特にセールスが見ておきたい指標は個人的にMRR(総アカウント数の月次収益)と新規MRR(当月、新規で獲得したMRR)初期費用など。

仰々しく発信したい思惑というより、何に取り組んだのかを要因をまとめて自分自身の再現性のヒントにしたいというメモ的なものです。

ただ、おこがましい点では1%でも特に自ら営業を行い組織をマネジメントしている身分のため、同じ業界や営業職としてプレイングマネージャーTipsとして何かの参考となればうれしいです。

注意点として、SaaSビジネスに関わっておられない方やコアビジネスに関与されていない(ex.新規事業関係者)にはあまり参考にならないです(汗)

今回取り上げているボクが関わっている事業はコアビジネスのため、新規事業やイノベーション事業とは主要KPIのポイントが全く異なるからです。

新規事業では財務リターンやROIなど営業利益・PLを見るより、いかにCPF(顧客の課題を抽出できているか」、PSF(顧客の課題を製品で解決できるか)、PMF(市場の課題を的確に捉えたソリューションになっているか)が大切です。
そうした場合は過去や現在のトレンドを見ながら指標をHow論で組み立て成長させるコアビジネスとは毛色が異なり、定量化できないインタンジブル要素(Whyの設計、ヒトの成長具合など定性要因、顧客のインサイトを見極めているか等)がポイントになるでしょう。

故に今回の投稿は以下のような自身への問いがポイントです。

今後の参考にすることで新しいチャンレンジの局面に「思い返す自己回帰用」としてのレコードとなるかと思いました。

●「打ち手から再現性かつ他事業への横展開が可能なエッセンスは何か?」
●「ハードシングスな状況でも役立つGridポイントは何か?」
●「戦略・戦術の上位にあるメンタルモデル(物事の考えかた)に良い影響
 を及ぼすことで組織マネジメントのヒントになることは何か?」

大前提ボク自身の頑張りで当然達成できたわけではないということ
 美辞麗句でもなく、メンバーの成長や"ラストワンマイル"的なこだわりや想い、普段からユニット内で支えてくださるマーケ・カスタマーサポート、カスタマーサクセスの仲間&上司がいたからこそ、なし得たものであることをこの場を借りて強調しておきます。

noteはオフィシャルな場のため、具体的な数値や人名・昨対比からの売上推移など個別事象も含めバイネームで露骨に出せませんが、エッセンスはなるべく抽出。その中でポイントを10個に絞ってみました。コロナの影響からクォーターの途中から外的要因も変わり戦術も見直していきましたので、自分なりに「これはやって良かった」と思えるものをここでは取り上げたいと思います。

10個の要因(前半/マネジメント編)

では、ここから実際に挙げていきます。実際に自分自身が現場で営業しながら組織を見ているため、前半と後半でそれぞれ5つずつに要因から打ち手を分けてみました。今回は前半です。

前半(要因1~5):マネジメント中心の打ち手
後半(要因6~10):個人営業中心の打ち手

要因1 Salesforce項目の断捨離とデイリーチェック対象の見直し
 当社はSFA/CRM領域でSalesforceを使用していますが、他事業は主にリード管理(標準オブジェクト)中心。MAツールを扱っている自部署はカスタムオブジェクトも活用しレポートを組んだり営業案件の管理をしています。

ただ、これまで多くの項目があったことで営業の入力の手間や何より「どこを見たらええの!?」というノイズが多かったことも事実です。
具体的に断捨離した要素の一例(↓)

・活動内容コメント(クロージングコメントに寄せる)
・ヒアリング内容
・コンペリングイベントや決算月など(次回アクション日に寄せる)

ポイントは「入力することで満足し、営業活動に影響しない項目」「よく見ると他の項目と目的が被っていてムダな贅肉項目)を探すことでした。

このあたりは当社のマーケ責任者や上司と何度も話し合いスリムアップしてきました。ボク自身、営業しながらメンバーの案件も見てパイプラインをチェックするため、【本当に知りたいことは何なのか】→【そのために必要な項目は何か】→【必要な項目はこれ、不要なものはこれ】という観点って本当大事なんですよね。

得てしてCRMやSFAはいくらでもカスタマイズできるため、加点式で項目を増やしてしまったり、過去の組織形態からなんとなく残っている暗黙の文化みたいな項目が残骸のように入っているケースがあります。

そんな時こそ「本当に必要な項目って何だっけ?」という観点から仕切り直しをすることはスピーディに優先度をつけリソースを活用する管理職にとっては必須の考えかたかもしれません。

業務シーンに合わせて必要なレポートを自分のブックマークから開けばメンバーとの面談、会議でちょとした議論や会話の流れもスムーズになります。会議の目的によっては、アジェンダにそれを入れておくことで円滑です。


要因2 インサイドセールス(※以下IS)の強化

 当社のISは俗に言う「アポイント獲得型」です。つまり主要KPIはアポ獲得数になります。先TEL(お問合せ系のインバウンド型リード)や保有ハウスリストへメールマーケを行い、配信対象の動き(この辺りはMAツールを使っているので便利)を見て架電やメールアプローチでアポイント打診します。ただ、その中でどうしても日々の数値に変動が出たり、目標達成に届かないメンバーもいたことから、主にその原因を3つの観点で分解しました。

原因1.アプローチ先の問題
原因2.トークの問題
原因3.コミュニケーションの問題(ISとFS)

それぞれに対しての打ち手はこんな感じです。

対策1.アプローチ先を細かく細分化し「内訳リスト」を新設。
 アプローチ数とアポ数をデイリーで入力し、日々のアポ率を定点チェックし、打率の高い内訳(リードソース)をまず見つける。※簡単に更新できるスプレッドシートがやりやすい。これにより、これまで属人的だった「アプローチ選定」が数値を根拠に優先度が出ることでISの日々の成果が徐々に上がる土台ができたことがデカかったです。

対策2.録音システムを使いトークRECを残す。
 毎日アポがNGになった録音内容と切り返しトークをスプレッドシートにまとめた「トーク振り返りシート」を使い、ボクや上司&周囲のFSメンバーがアドバイスとして具体的にフィードバック。このとき『●分●秒のところの下りなんだけど…』とタイムラインを明確に伝えてあげると良きです。
(アポが取れたサクセスRECも共有し、要因を横展開する動きも並走)

IS側はフィードバック内容を次のアクションから早速試し、効果検証。
実際にこれは3か月間ほぼ毎日行いましたが、ISメンバーの意識やトーク自体も底上げされる取り組みで今でもフィードバック機会をルーチンで回せる文化に。
ISのトーク力が平準的に底上げされると「商談目的」「導入背景」「キーマン同席のオファー」などFSが商談時に案件を進捗させる要因を事前に把握でき営業組織においてはかなりメリットです。

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対策3.オフラインとオンラインの接点をとにかく増やす
 以前からの反省でしたが、ボク自身がFSとして個人営業やメンバーの同行で現場に出向くことが多かったため、社内にいるISメンバーとのコミュニケーションがあまり取れていませんでした。上司にも支援頂いて、これらのことをスタートしました。ポイントはオンラインとオフラインを混ぜること。行動結果や振り返りを時間を取って対話する時間と、デイリーの中でスピーディに成果を上げる目的で会話する場合で上手く使い分けることが大切でした。今ではコロナの影響で3月からリモートワークとなりますが、この朝会は変わらず毎日実施していますし、以下のオフライン施策も継続中です。
(オフラインはSlackのチャンネルをIS用に複数テーマ毎に新設)

-オフライン-
①朝会の実施
 →昨日の結果、今日の目標、トークの振り返り、アプローチ先の報告

②フィードバックMTG(隔週)
 →FSが商談後、各フェーズごとの案件をISにフィードバック(※FB)し案件化の要因・原因を共通認識にする目的の場

-オンライン-
③IS成果向上を目的としたトークのFB、アプローチ先の報連相をデイリーで行う場。スピーディにデイリーの改善やセミナー(ウェビナー)、カンファレンスなどスポット的なキャンペーンの対応進捗を確認する場としても活用。

④ISが獲得したアポをFSに報告し、事前に把握しているヒアリング内容や会話内容の録音を共有する場。FSが商談前に顧客のナマの声や温度感、見極めイメージを持ち、商談時の提案精度を向上を図る目的。


要因3 パッケージトークを作成(訴求方法とストーリーの組み立て)

 担当するMAツールはいわゆる"デマジェン"(案件化や受注の可能性が高いリード【見込み顧客】を営業部門へ渡すマーケティング活動全般)の中でもナーチャリング(育成)がメインの性格上、商談相手が複数いたり意思決定フローがまたがったり、潜在ニーズの運用担当と顕在ニーズの戦略責任者の両方を口説くなど…、THE・法人営業という感じです(笑)

そのため、提案資料通りに説明するとスクリプトを棒読みしているだけで結果、相手の感情に刺さらないし、フリートークで案件が進捗するほど甘いものでもありません。("費用対効果"のみで完結する製品ではないため)

そこで、作成したのが「パッケージトーク」です。何がパッケージされているのか一言で言うと、お客様の心理作用から逆算してロジックを組み立てる流れをパッケージにしています。

●営業アクションのテーマ(ここでお客様の心理に作用させたいこと)
●目的(なぜ、それをここで言うのか)
●想定時間
●トーク中に見せるスライドや外部資料(提示する資料に意味を与える)
●実際のトーク例

というのも、これまで案件相談やメンバーとの対話の中で「何を伝えるか」「どう伝えるか」といった小手先的な議論が営業組織内でも多かったことが気になっていました。それを「なぜ、これをこのシーンで伝えるか」という観点にすることでお客様に対して、営業自身の信頼性を訴求できるようになるのです。

特にMAを始めとしたSaaS業界は競合がひしめく"血の海"状態なので、機能やスペックをいかにうまく伝えても差別化は図れないと思います。問題自体が希少化し解決策がネット上に溢れかえっているため、「月並みなソリューション営業」をしても悲しいかな今の時代お客様の心は動きません。結果、実態のないコンペ負け(営業側の思い込み)となり、お客様自体はそこまで本気で検討していなかったという顛末になりがちです。

「高機能なドリルを案内する」から、
お客様が気づいていない「ドリルで開けるべき穴」「開けた穴から何が得られるか・できるのか」へ。

言い回しやフレーズなどこれまで現場で上手くいったことは実際のトーク例として落とし込み、「これさえあれば必ず受注できる!」虎の巻として組織内で展開することもあわせて重要だったと思います。

この辺りのトーク設計は自身のユニット内だけではなく、部門を越境し、他ユニットの営業メンバーやマネージャー達と連携し「営業ロープレ大会」「平準化プロジェクト」といった取り組みを運営したことが大きかったです。ヒアリングやクロージング、提案方法を体系化してきたことでスムーズに言語化できたことはラッキーでした。
(これは同プロジェクトで話した"ヒアリング"についてアップしたもの)


要因4 メンバーとの1:1面談を必ず実施する

 元々、当社はいわゆる「ホラクラシー組織」でニックネームで呼びあう文化からもフラットな環境です。以前、ボク自身がゴリゴリの体育会系の営業会社にいたので俗にいうザズ文化で軍隊のような組織に7年間勤めていました。もちろん営業マインドとして学べたことは多分にありましたが、現在は異国のため、成果を上げる目的は一緒でも方法論が全く違うわけです。

ただ、そんな中であえて共通点を一つ挙げるとすれば、メンバーの能動性を最大限高めるということです。営業会社は「数字こそ正義・人格」の文脈でインセンティブや昇格など外発的要因で強力にモチベートする仕組み作りが顕著(あくまで個人的な印象)ですが、フラットな組織では「本人の成長」「貢献欲求」をベースとした内発的動機形成がポイントになると思います。

フラットな組織だからこそ、何でも意見を言い合える良い反面、昨年は「コミットメント感が弱いなー」とか「なかなか思い通りに組織が動かない」とメンバーとの距離感や行動に対して悩むことがあったのも事実。

そんな時、定期的に社長と営業マネージャー間で行っていた読書会で著書『嫌われる勇気』を取り上げる機会がありました。(名著なので以下にリンク貼っておきます!)

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過去だけに捉われず、承認欲求に縛られない、「自分と他者の課題の分離ができているか」など気づかせてくれたことで、今この組織において自分がこう動いて欲しいではなく、彼らがどう動きたいかという視点で考えられるようになったのです。

メンバーによっては、期首に決めたMBOの確認から現状の進捗をチェックしたり、細かく週次のKPIを確認、営業案件の動きから次回の打ち手を話し合います。ただ、基本的には一緒に考え「ここまでやったらベスト」というラインまで本人たちがアウトプットできるまで煮詰め、メンバーの自発性を促すという目的でした。

そのためには、自身のタイムマネジメントが大切です。
ともすると、週一の面談でも複数メンバーがいると日々の営業活動で時間が被ることもあります。
このあたりは前述の録音システムで商談が入りやすい曜日の分析や仮に商談とタイミングが被った際でも「今週はやらない」ではなく「必ずリスケして実施する」徹底と工夫が必要です。

要因5 営業成果の可視化(日次・受注報告)
 細かな取り組みは色々ありますが、ここでは主に日次と受注報告について取り上げてみます。

<日次報告>
「メンバーの営業活動を周囲に届け、その日の行動が見える化」し、目標達成マインドを高める動きとして効果的です。

毎日19:00までにSlackで自部門のチャンネルに各自上げていく(追記する人は最初の人のスレッドでまとめると他の人も確認しやすい)。大事な点は本人達自身がその日を振り返り能動性を高めるものですが、せっかくなので周囲からのリアクションをもらえるよう、メンバー本人の当日良かった行動を大きく取り上げたり、周囲の役職者に見てもらうよう裏側でロビー活動をすることも時折します。
ボク自身が送る日次(※以下はそのひな形)は担当製品のデイリー推移やフェーズ変化などを細かく記載します。こうすることでメンバーにも自分達の案件が組織に影響している協働コミット感が生まれる気がします。メンバーはもう少し川下のKPIやアクション数を中心に報告する形を取りました。そして、必ず定量だけではなく定性も含めることが日々の振り返りに拘っている点です。
特にお客様のナマの声や市場感を社内に持ち帰ることができるのは、接点が多く受注前の提案をする新規営業がいちばんリアルな意見に触れるため向いています。持ち帰りPMFに生かす、製品のアップデート案として開発部隊にフィードバックできる機会も仕事の一つとして発信するようにしています。

FY21 1Q全体
<LFアカウント獲得数>
Q直販目標●件
Q直販現状実績●件 (●%)【+-】
Q直販落着件数●件 (●%)【+-】
<MRR落着>
当月目標/●●円
当月落着/●●円(●%)【+-】
当月初期費用目標/●●円【+-】
当月初期費用落着/●●円(●%)【+-】
【担当製品A】 
4月落着:●件 ★現在
5月落着:●件 
6月落着:●件 
<当月案件内訳>
・AA ● 【+-】
・A ● 【+-】
・B ● 【+-】
・C★ ● 【+-】
・C ● 【+-】
【担当製品B】
4月落着:●件 ★現在
5月落着:●件 
6月落着:●件 
<当月案件内訳>
・AA ● 【+-】
・A ● 【+-】
・B ● 【+-】
・C★ ● 【+-】
・C ● 【+-】
コメント: 

【担当製品A】
当月アカウント増減比
Qアカウント増減比

【担当製品B】
当月アカウント増減比
Qアカウント増減比

<定性報告>
その日の実施した打ち手の感触やメンバーの活動について追記。
今週のゴールラインや動いた案件、Good&Moreをそれぞれ書く

<今日の個人To Do>
・会議×3 3.5h
・個人商談×3 3.0h
・追客(メール・コール) 1.5h
・顧客フォロー対応 1.0h
・SF入力・更新など雑務 1.0h

■本日の商談結果
①㈱●●様
結果:2020年5月C
→コメント(相手の属性・商談で得られた市場感や提案内容を記載)

<受注報告>
この取り組みはあるISのメンバーがカンファレンス参加後に「是非やりたい」という意見から始まりました。よくインサイドセールス界隈では意見として『営業=フィールドセールスが目立つ』『インサイドセールスの立場と成果がいまいち雲隠れする』などが散見されますし、社内でもISメンバー自身が"営業のみなさん"とフィールドセールスのことを指して話す時に違和感を感じていました。(あなた(IS)も営業だよ、と)

新規営業の組織においては、追っているKPIはちがえどアカウントを増やしトップラインを伸ばすというKGIはインサイドもフィールドも変わりません。その中でISのメンバーがちゃんと受注に貢献していることを明確にしたかったこともあり、始めた背景としてあります。
もちろん社内ではちゃんと目に触れる場に鮮度を意識して発信し、他チームからのリアクションをもらうことでユニット全体で営業の活動に興味を持ってもらい、普段のコミュニケーションの話題づくりにも事欠かない空気を作り出せたりします。

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こうした取り組みを日々地道に行い、結果的にメンバーが自発的に成果を出しやすい体制ができてくると、強いマインドが醸成され全体的なパフォーマンスにもヒットすることが分かりました。

以上、ここまで長々まとめてみましたがマネジメント編でした。後半では「個人営業編」についてまとめてみようと思います。

何かしら今現場で頑張っている営業職の方々の参考になれば幸いです!

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