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『離レ姫』関係者インタビュー〈第4弾/建築家 鷹野魁斗さん 〉


先週、終幕いたしました、
劇団幻ノ國第11回本公演『離レ姫』。


作品を共に創り上げた多彩なメンバーへおこなったインタビューを、
全7回にわたり連載しています✨


今回は第4弾


お相手は、
『離レ姫』にて舞台の空間設計を担当された
建築家鷹野魁斗さん」です。


普段は設計事務所で働かれ、
個人でもお仕事をされている鷹野さん。

今回、離レ姫のセットはどのようにしてつくられたのでしょうか…?!

詳しくお伺いしてみました✨
ぜひ最後までご覧ください!


🌻 離レ姫 企画のお話を聞いたときの心境はいかがでしたか?

  自分は演劇に関わった経験が少なく、演劇という世界が未知でした。未知の世界で空間を考えられることにワクワクしました。


🌻離レ姫の空間設計をされる際に意識した点はありますか?

   海斗さんが演劇とは「救い」を与えるものだと考えていると聞いた時に、観劇するお客さんや演じる俳優たちがこの演劇を通して伝えたいこと、表したいことがわかりやすくなるようにとは思っていました。そこで具体的な表現としては舞台に現れる構造物は幾何学的な形であり、俳優同士や俳優とお客さんの距離感が分かりやすく認識できるような形式としました。

   また上手のスロープが舞台の上から飛び出すように作ることは重要なポイントでした。これは特に俳優とお客さんの関係性を複雑にしようという考えからでした。
   舞台と客席が幕で切られ、舞台が画面のように見えるのではなく、生の表現として客席側に飛び出すことで舞台と客席の関係が変わる。お客さんはどの席で見るかで見え方が変わり、俳優はお客さんとの関係が変化することで届け方を意識してくれるだろうかと考えていました。俳優とお客さんのコミュニケーションが生まれるようにと。
  またスロープはお客さん側に構造の柱が落ちないようにしていました。それは飛び出しつつも舞台の上であるということを表現することで俳優の芝居がより迫力を持ったものとして届くようにと意図しました。

スロープ仕込みの様子
美術制作は、俳優座さんにお世話になりました。



🌻演劇舞台の設計と建築物の設計、大きく違うと思うのですが、鷹野さんがそれぞれにおもしろいと感じられる部分はありますか?

   自分は演劇の空間も建築の空間も同様の思考を通して考えています。それはつまり空間をいろんな人間が経験し、使うことを考えて設計するということです。ただそういう意味では演劇空間は普段考えている人の経験とはまた違って面白かったなとは思います。特に俳優さんがこの空間で芝居をするということ考えて設計するのは難しかったです(笑)スロープの上は芝居をするの難しいのではないかなと思っていたけれど、みんなが楽しそうにスロープの特徴をうまく使って芝居をしていたことはとても嬉しかったです。自分の想像力を超えて俳優さんたちが設計した演劇空間を楽しんでいるのがとてもよかったです。

  確かに演劇空間は建築空間よりも身体との関係が強いなということはありました。曲線をなぞって動いたり、スロープを滑ったり飛び降りたり、芝居の中で空間がより生き生きとして見えました。

スロープを使っての芝居シーン
撮影 : 中村正行さん



🌻普段設計をされる際、何からインスピレーションを得ますか?

   自分は一緒に作る相手やその空間を作る街からインスピレーションを得ることが多いです。
   今回であれば劇団を主宰する海斗さんとの毎週の議論はすごく自分にとって大きな影響があったと思います。展示させていただいたノートには議論のメモがたくさん残っているのですが、お互いに難題を投げかけあっていたと思います(笑)

   また今回の劇場を見学に行った時に見た街の雰囲気やそこから隔離された地下の劇場という事前のリサーチが空間を考える上で大切なことでした。

街の雰囲気からもインスピレーションを
得られるのですね…!
会場入口では、舞台設計の展示をおこないました


🌻ここは苦戦した…という点がありましたら教えてください。

    舞台空間の特徴を掴む最初の段階がなかなか苦戦して進まなかったタイミングはありました。自分の意図をどういうところに表現するか。そもそも舞台空間の中で何を表現したいのか。演劇という芸術の特徴を掴めていなかったからこそ悩んだ時間がありました。

   あと今回の空間を設計した中でもう少し考えたかったなと思ったのは舞台空間が一過性のものであるということです。祭りのように準備をし、祭りのように過ぎ去っていく。何かその点にもっとアプローチできたらよかったなという悔いは残っています。



🌻空間設計とは、どのようなプロセスをふんで行われるのですか?

  インスピレーションの話と少しかぶるのですが、一緒に作る相手が考えていることやその空間が建つ街の雰囲気を知ることから始まります。そして街からこの空間が経験されることや話を通してこうなると面白いとか模型やスケッチなどを通して具体的な空間を考えていく流れが主ですね。

   また自分の中の哲学の一つとして多様な振る舞いを受け入れる空間を作りたいという思いがあります。みんなが自分の主張を持ち、それらが出会う場を設計したい。世界はそうあるべきだと思う。



🌻離レ姫を観に来てくださった方が知ったら、より作品を楽しめそうなことがありましたら教えてください!

  今回の空間は幻ノ國という世界があり、その一部が劇場を通してこちらの世界に現れていると自分は考えていました。だから舞台空間は下手の赤い丸が半分で切れていたり、上手のスロープのカーペットも上空に伸びて見えたりと意識していました。またスロープがあくまで舞台の上から伸びていることで幻ノ國とこちらの世界は直接的に交わることはない。
と妄想して海斗さんに伝えていました。

   離レ姫を紡いだ者たちがまた別の物語でひょっこりとあちら側の世界で顔を出すかもなあと思っています(海斗さんには負担が増えますが笑)


改めて舞台は、総合芸術であることに気付かされますね。

設計に込められたこだわりや意図を知れて、
劇場空間がより生き生きとしたものに感じました✨

お忙しいなかインタビューにお答えくださり、
有難うございました!

次回は、衣装を担当された 
Toshiyukiさん / Chieさん」へのインタビューです!

公開をどうぞお楽しみに。

文責 : 幻ノ國 広報

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