始発待ちアンダーグラウンド世界最遅1stアルバムレビュー
黒人奴隷のワークソングからブルースが生まれリズム&ブルースになり、アイルランド移民が持ち込んだ民謡をルーツとするカントリーミュージックと融合した音楽を白人がロックンロールと呼んだ。みたいな話から始めたら皆さん怒りますかね。
人名が300人くらい出てきちゃうの。たぶん2ndアルバム発売までに読み終わらないそもそも書き終わらない。
ということで早速僕の妄想を垂れ流していきます。
#1
始発待ちアンダーグラウンドの音楽性が語られるとき、よく言われるジャンルのひとつにUKロックがありますね。
その所以はアルバムのリードを飾る『風街タイムトラベル』にあります。
この曲には明確なルーツがあって、って僕が勝手に言ってるだけですからね。
83年にChrissie Hynde姐さんが率いるPretendersの世界的大ヒット曲「Middle Of The Road」なんですよ。聴けばなるほどと思われると思いますが、僕がここで念を押しておきたいのは、Middle Of The Roadをなぞっても風街は作れない。どちらもアウトプットなんですよ。クリッシー姐さんも今村さんも様々な音楽を聴いて大好きなロックを書いたら出来上がったアウトプットなんです。だから似ているようでやはりまったく違う曲。だけどすごく類似性があるから嬉しくなっちゃうUKロックなんです。
サイレン・ギターソロがとてもいいですね。
すべて僕個人の体感ですから異論はどうぞでいきます。
#2
『感情線惑星』に関しては、ド頭から様々な要素が渦巻き過ぎましてね。ごった煮です。非常にプリミティブなビートとエッジの効いたギターがとか僕の中ではなんだっけ!?これ!?琴線触れまくりなんだけど!エロいんだけど!めっちゃエロいんだけど!となるので、だからあのMVは正しいんですよね。肉欲の曲だから。重たいビートやそのプリミティブなグルーヴが「山羊の頭のスープ」あたりのストーンズマナーを少し感じますね。あと僕は変態なのでSuzi Quatroの一連の曲をマイナー調にしたら感情線惑星になるなって思いました。世界に3人はいて欲しいそういう人。
#3
『フラストレーション』はギターロック或いはこれもまたUKロック的な要素があると思います。90年代的に感じる方が多いかもしれませんが、僕は日本のロックバンドの至宝ザ・モッズが80年代初頭に出した1stと2ndアルバムあたりを想起します。あとアルバム「ギャングロッカー」かな。
そういう意味ではパンク以降のロックで尚且つしっかりとした歌メロがついている日本のロックですね。ザ・モッズの曲ってメロディが強いんですよ。ある種の艶歌とも言える。フラストレーションのメロディは完全に艶歌ですよね。それをとても洗練された形でロックに昇華させているのでエグいんです。
あとフラストレーションのギターはマジで凄いですよ。あのテイクは信じられない。
#4
始発待ちアンダーグラウンドの名前の由来はホーム的な所が地下にあったのと当然Velvet Undergroundからいただいてるのは否定しようがないわけですが、じゃあヴェルヴェッツみたいな曲やってるの?っていうと「外にいた青」になります。ただヴェルヴェッツ(Lou Reed)が退廃を歌っていたとしたら、始発待ちが歌っているのは絶望です。
ルー・リードの「Street Hassle」は外にいた青を完全に重ね合わせることが出来る曲ですが、歌詞が最高に酷いんだ。外にいた青の中では彼女らは絶望を告白し、それでも生きていくことを拙いポエトリーリーディングで我々に伝えてくれます。号泣ですよ。書いてて泣いてます。
ここでのムラタの優しさと哀しみの混ざりあった声を聴いていると以下略ですよ。あと号泣ポイントはオクヤマさんの「私、バカだから・・・」のところからですね。もうね、もう、ダメだ...。
#5
僕は始発待ちのステージを初めて観る直前に友人から『HELP ME』をお勧めされて聴かせてもらったんですよ。友人は僕が60年代のガールグループスが好きなのを知っていたので紹介してくれたんですが、僕は初めてHELP ME聴いたとき驚愕しましてね。
60年代~のガールポップ的なものというとThe Ronettesの「Be My Baby」のドラムとかモータウンサウンド(The Supremes)みたいなものって割とずっとあるものなんですが、HELP MEはMartha and the Vandellasの「Dancing In The Street」にも通じるダイナミックさがあったんですよね。僕はThe Shangri-lasやThe Shirellesなんかが特に好きなのでHELP MEはすごくフィットしました。
この曲のハイライトはアスミィの「僕を愛しく思ってぇ」の「ぇ」の息が漏れるところです。これが録れただけでも音源としては完璧ですが、ホーンが入ってるはずだと僕は主張してます。入ってないそうです。妄想でした。
ライブでは間奏での素早いダンスステップ(語彙)が本当にカッコいいです。
#6
『フリフリ』で始発待ちはガレージロックをやるグループと認識されていた頃もあったかもしれません。そのくらいインパクトはあった。ただ皆さんご存知の通りこんなド直球のスリーコードのロックンロールを誰でも知ってるようなリフでやって、どこにも無い曲にしてしかも今やるって…僕初めて聴いたときゲラゲラ笑いましたよ。嬉しすぎてですよ?
その後怖くなりましてね(なってないけど)。なんにもしてないんですよこの曲。なんにもしてないのにこの高揚感なんなんだ?と考えていくとこのアルバムがどのくらい贅沢に作られているか分かるかと思います。本当に贅沢な音だと思います。
#7
『犬とメシア』はライブではパーティーソングみたいになってますが、スタジオ録音はもう少し妖艶な感じがありますね。この曲は歌謡ロック、GS的な捉えられ方がされていて間違ってないんですが、東南アジアのローカルロックは現在進行形でこういった曲をやってるグループがあります。タイとかカンボジアのロックバンドにこの匂いがあります。正解はインドネシアンロックらしいですが。
この曲のキモはベースです。ベースを聴いて下さい。めちゃくちゃ気持ちいいですよね。これだけボキャブラリーあるベース弾けたら楽しいだろうなあ。バンドマンの間ではベーシストは変態でなければならない。いいベーシストほど変態である。という言い伝えがありますが、たぶんこちらのベーシストさんは変態だと思います。
#8
『指先未来予想図』はオーセンティックなカントリーロックの味わいがありますね。でもギターの音が汚いんですよ(笑)。そこがいいんですよね。今までこの曲はアレだコレだと書いてきましたがバンドサウンドに一貫性がある。アンプノイズがある。ああ血が通ってるなあって僕は思うんですよね。そして、それらがきちんと彼女たちのための曲になっていて、彼女たちは見事に歌い上げてる。奇跡のようなアルバムですよ。歴史に残ります。
#9
そして歴史に残る最大の理由はアルバムのクローズド・ナンバーが『夜の終わりに』であるからです。
「フラストレーション」が始発待ちアンダーグラウンドの代表曲ではありますが、初期の始発待ちを体現していたのはこの「夜の終わりに」です。
滴り落ちるようなギターが鳴り響く中、夜が過ぎるのを待ちながら世界が終わるのをじっと見ながら自分の存在すら危うくなっていくのが始発を待つ彼女たちの姿であり出口のない叫びだった。
あれもこれも無い無い無いと否定しながらそれでも私はと希求する相反する欲望こそが始発待ちアンダーグラウンドの世界観(の一端)だったのではないかと僕は思っています。
なので、未来を指差す「指先未来予想図」の後に「夜の終わりに」を置いてクローズしたこのアルバムはパーフェクトなのです。
以上です!
そしてこのほど『くだらない世界』が収録された2ndアルバムが出来上がりました。
信じられないことにこの曲は2年前に出来上がってたんですよね。
世界が終わるのをじっと見てたと思ったら、くだらない世界を君と僕でドキドキしたいよって。つ、強くなってんじゃん..。
今回、既にこの曲がアルバムのラストナンバーであることが発表されていますが、僕はたぶん2ndアルバムを通して聴いて十分に納得して聴き終えられる気がします。
正直待たされたけど(笑)、その間に彼女らのライブを観て着実に成長している姿を見てきたので、2ndアルバムが楽しみで仕方ない。あと長いんでもう終わります。ありがとうございました。
23日に会おう。
2021/07/19 mab
2023/11/11 mab(edit)
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