著名人のビジネスを買収する理由|ニュース解説プレミアム Vol.26
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2021年7月26日、INCLUSIVE社グループのNewsletter Asia社は株式会社田端大学校からオンラインサロン事業及びコンテンツ配信事業を譲り受けると公表しました。
田端大学校はその名のとおり、田端信太郎さんが運営するオンラインサロンです。
買収金額は非開示とのことです。
実はINCLUSIVE社にとってこのタイプのM&Aは初めてではありません。
2021年2月19日、INCLUSIVE社はSNSメールマガジン社の全株式を取得しています。SNSメールマガジン社は堀江貴文さんが99.9%保有するSNS media&consulting社が株式保有していました。
ちなみに、SNSメールマガジン社は社名変更し、Newsletter Asia社となり、今回田端大学校社の事業を買収しています。
この二つのM&Aの共通点はなんでしょうか?
立て続けに2人の著名ビジネスマンが経営する事業を買収したことになります。
では有名人の経営するビジネスを買収することが目的なのかといえば、そうではありません。
堀江さんも田端さんもライブドア繋がりとかそんなことでもありません。それもきっかけにはなってるでしょうが。
答えはM&A時のINCLUSIVE社のリリースにあります。
以下はSNSメールマガジン社取得時の抜粋です。
今後の事業展開について
当社では、個人課金ビジネスモデルをグループ成長戦略の軸の一つとして、今後も継続して投資を行っていく方針です。新たな展開として、2021年夏前を目処に、主要SNSと連動し、登録・決済・コンテンツ管理等の機能を搭載した新たなサービスをローンチする予定です。
これらの展開を行う中で、各種ソーシャルネットワークサービス、YouTube、サロン領域などで卓越した知見を持ち、また、今回取得したSNSメールマガジン株式会社の価値創出に多大な貢献をしている堀江氏のノウハウ、コネクションも最大限に活用していく方針です。
続いて、田端大学校の事業取得時の抜粋です。
事業取得の狙い
INCLUSIVEは個人の情報発信のデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じてパートナーとの持続的な共創の実現を目指しております。
発信者×表現方法×コミュニティ性の三軸で事業可能性を検討し、順次事業として展開する「クリエイターエコノミー構想」を、戦略子会社のNewsletter Asia株式会社を中心に推進しており、7月1日にローンチした「WISS」はその第一弾、「田端大学」は第二弾という位置づけです。
この「クリエイターエコノミー構想」は、SNS等を通じた個人による情報発信が活発化し、ユーザーのニーズが大きく変化する中で、クリエイターが発信する情報への正当な対価を獲得できるエコシステムを構築することを目指すものです。
オンラインサロンという、個人を中心としたコミュニティに立脚するビジネスモデルへの進出・拡大は、この「クリエイターエコノミー構想」の展開に有益である上、当社グループがこれまで培ってきた事業開発ノウハウや、事業のスケール拡大に有効な制作・編集効率化ノウハウとのシナジーが期待できると考えています。
今後はこの領域において実績とノウハウを持つ株式会社田端大学校及び田端氏と連携して、同事業を拡張するための施策や、コミュニティを中心とした新規事業を共同で企画し、「クリエイターエコノミー構想」の実現に向けて展開してまいります。
一貫して優れた個人、ここではクリエイターと言っていますが、彼らを中心とした事業開発を行うことを主張しています。
発信者×表現方法×コミュニティ性の三軸で事業を検討とあり、この2社のM&Aはまさにこれに合致します。
両社には個性的なクリエイター(発信者)がおり、YouTubeやメルマガなどあらゆる媒体(表現方法)で情報発信を行い、かつ、オンラインサロンなどのコミュニティを持っています。
田端さん、堀江さんがこれに合致するサービスを運営していたからM&Aに至ったのであって、もし仮に2人が著名経営者でなかったとしてもM&A自体は行われていた可能性はあります。
クリエイターエコノミーの価値を高めているもの
とは言ったものの、両社の事業価値を高めているものは田端さん、堀江さん自身であることは間違いありません。
それぞれのクリエイターエコノミーを作り上げているのがまさにこの2人だからです。
ただし、そうだとするとM&A一般論でいえば買い手にとってリスクの高い案件になります。
個人に依存したビジネスの場合、個人のやる気や能力次第で事業が左右され、買い手にとってコントロールが難しいためです。
しかし、INCLUSIVE社はこの点についてリスクヘッジを行っています。