「とりあえず一番になってみる」ということ
「競争」がキライだ。むかしっから。
小学生のころは、短距離走が大キライだった。走ることは好きだったのに、足が遅いせいでクラスの男子にバカにされたからだ。
「早く走れる人がそんなに偉いんか!!!?」
……って心の中では叫んでいたけれど、そんなことは言えなかった。だって世は、競争社会だから。やっぱり、一番になれる人は強かったと思う。
小学校という狭い社会ではどうしても、足が速い人、勉強ができる人、クラス全員を笑わせられる人が勝つ。
そして「秀でてる人」と「そうでない人」に分けられてしまう。
国語の授業でステキな詩を朗読してくれた先生も、テストとなると「違い」をきっちり「評価」してきた。
ー早く走れる人はA。でもあなたはC。
ベストタイムを更新しても、何度走っても評価は変わらない。通信簿を見るたびに、心にグサリとナイフが刺さった。
学校の評価は相対的なもの、だから仕方ない。一度はそう思った。でもやっぱり納得できなかった。
だって偉人はみんな「ライバルは昨日の自分」って言うじゃないか!
どうして人と比べられなきゃいけないの?
なんで一番を目指さなければいけないの?
てか一番になって、なにかいいことあるの?
ちびまる子ちゃんのサブキャラっぽいよね(笑)と言われるくらい平凡代表のわたしにとっては、一番になるメリットよりも「そうでない」というレッテルを貼られるデメリットの方が大きい。
たかがストップウォッチに表示されたタイムで優劣が決まってしまうのは、とても悔しかった。……というより悲しかった。
だからわたしは「競争」がキライだ。
*
所属している朝活コミュニティ「朝渋」で、昨日あるイベントを開催した。
内容はコミュニティ代表とメンバーの対談で、トークテーマは「突き抜ける人材」だった。
これに対してわたしが真っ先に思ったのは、小学校のときのいや〜な記憶。
だって唯一無二の存在になるためには、競争社会に勝ち抜かなければいけない。ライバルがいたら蹴落とす覚悟でやらなきゃ!なんだろうし、そんなの平凡代表のわたしには辛すぎる。
「みんなちがってみんないい」金子みすゞ先生だってそう言っていたじゃないか。それなのになぜ競う必要があるの?
そんなふうに思っていた矢先、イベント登壇者のメンバーがこの問いに対して、こんな言葉を投げかけた。
こう話したのは、東南アジアでプレーしている現役サッカー選手のタクヤさん。
スキルやフィジカルで海外選手に劣ると感じたときは、初心に立ち返り「誰よりも走る」や「誰よりも声を出す」といったスキル以前の基本を徹底的に行うそうだ。
もちろん新しいスキルを習得することは大切だ。しかし誰しもが持っているものでも、それを徹底的に磨き上げれば唯一無二になれる。そう話した。
たしかにそれは朝活コミュニティの代表にも共通することだ。だって朝渋代表の5時こーじさんは「早起き」で突き抜けた人だから。
誰しもが「起きる」という行為を毎日しているけれど、早起きが得意な人は意外と少ない。幼少期から5時起き生活だった5時こーじさんは、自身の強みを活かして「朝渋」を立ち上げた。
それは言い換えると「早寝早起き」という本来誰にでもできることを、誰にも真似できないくらいやり続けたからこそ得たものなのだろう。
なるほど……。
誰にでもできることを、誰にでもできないレベルに……ね。
*
この話を聞いてふと思ったのは、わたしは「一番」という意味を勘違いしていたのかもしれないということだった。
わたしの考える「一番」を例えるなら、ビーチフラッグのようなイメージ。
よーいドン!で始まり、ライバルよりも真っ先に旗をとる。ぶつかろうがなにしようが、とにかく「旗をとる」ことが重要で、蹴落とした相手のことは後でケアをする。そんな認識をしていた。
たぶんわたしの思う「一番」は、競争の先で得られるものだったのだろう。競争とは読んで字のごとく、競い合って争う……だ。
小学校のときは恥ずかしながら、よく蹴落とされていた。
どんなに頑張っても、与えられたレールの上では結果を出せなかった。だから「一番」を諦めた。だってこれ以上、傷つきたくなかったから。
でも「誰にでもできることを、誰にでもできないレベルに」となれば話は変わる。レールは用意されていないから、自分で探さなければならない。その道のりは大変だけど、この方法なら競争せずに「一番」になれる。
周りでやっている人は誰もいない……となると、もしかすると今すぐ必要とされていないかもしれない。そんなことを使命と思って全力でやる。それで突き詰めれば周りはきっと喜んでくれる。そうなれば、自分だって嬉しいはずだ。
「好きだから、行動する」のか「行動するから、好きになる」のか。こんなの、ニワトリが先か、卵が先か……みたいな話なんだろう。
その答えは、いたってシンプルだ。
好きなものがなければ沢山行動すればいいし、好きなものがあるならば、それを狂気染みるくらいに突き詰めればいい。
要は、どちらの入口でもいいから自分でレールを作る。これが大切なんだろうな。
*
イベントの最後に、5時こーじさんはこんなことを話した。
家族・職場・コミュニティなんでもいい。
自分の周りの、小さな世界でいい。
些細なことでいいから、まずは1/100になってみよう。そう言った。
「競争をしないで一番になる」ということは、想像以上に難しいかもしれない。だってレールが敷かれてないんだから。ロールモデルがない分、自分で道を切り開き、耕さなければならない。
でもその耕した道の先には、きっと周りを幸せにする何かが得られるんだろう。周りを笑顔にするだけでなく、自分の新たな強みに気付けるはずだ。
「とりあえず、一番になってみる」
「とりあえず」ということは、一番はゴールではなくて「あくまで通過点のひとつ」という意味なのだろう。
競争嫌いなわたしだけど、とりあえず一番になってみたい。そう思った。
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