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初めて入院した時のこと

ずっと一人で抱え込んで突っ走ってきた。毎日のように何かしらの薬を乱用して、時には死にたくてたまらず、時には無気力で寝込み、それでもそれを誰かに話すこともせず毎日大学に通って"普通の人"のように振る舞っていた。

限界まで来て、諸々のキャパシティも超え、糸が切れてしまったかのように駄目になった僕が初めて入院した時のこと。


その日は希死念慮が酷くて、誰か助けてくれないかなと思って、大学にある『なんでも相談コーナー』という予約不要の施設に駆け込んだ。どうしましたか、と問われて、一瞬言葉に詰まったけれど「…死にたくてたまらないんです」と言ってしまった僕は、その場で堰を切ったように泣き崩れた。
対応してくださった相談員の方は、僕が普段から大学内の精神科に通っていることを聞き出すなりすぐそこに連絡してくれて、「今から予約無しだけど診てもらえることになったからね」と言って付き添って送ってくれた。歩きながら僕の将来の夢について話して「それはいい夢だね」と言ってもらったのを覚えている。

精神科では、初対面の医師がすぐ緊急入院の手配をして、僕は東大病院に送られた。

初診がすごく長くて、成育歴から現在の状況までめちゃくちゃ詳しく話した。死にたくてたまらないことも、自傷行為をやめられないことも、薬を乱用していることも、正直に全部話した。それが初めてだった。
自分は本当はすごく助けてほしかったんだな、ずっと一人で抱え込んできたんだなと思って、涙が止まらなくなった。それまで滅多に泣いたことが無かったのに。

閉鎖病棟に保護されて、外の世界のことを一気に諦めて、刃物も薬も失ったところで、久しぶりに死にたいとか切らなきゃとかキメなきゃとかを手放した。守られている。医師は怒らないし、看護師さんも優しい。こんな自分を誰も責めない。お前の脳が、考え方が、病気がとか誰も言ってこない。自傷も過量服薬も責められない。食事を少しでも食べられたか聞いてくれて、リストバンドを巻く時は手首から腕まで傷だらけなのに何も言われない。入院したら自傷できなくなるけどしないって約束してくれる?どうやって生活していったらいいのか一緒に考えていこうねと言ってくれる。

なんで誰も僕のことを叱らないんだろうと考えながら、そうか自分はいつも自分のことを責めてばかりいたんだなということに気付いた。自分はダメだと一番追い込んでいたのは、たぶん自分自身だった。死ぬことばかりを考えて、生きることを考えていなかった。

今もそうだけど、生きたくないけど、ここじゃ死ねない。

少しだけ休もう。この保護された空間で、ほんの少しだけ。


―2018.1.11

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