見出し画像

心理学史

公認心理師試験では心理学史そのものはあまり出題されないと思いますが、誰がどのような学派を提唱したかについては出題されたことがあるので、この記事を書くことにしました。

1. 構成主義

人間の心理を科学的にとらえる試みが始まったのは19世紀後半です。1879年にWundtが世界初の心理学実験室をドイツのライプチヒ大学に設立しました。

Wundtは、実験参加者に自身の意識の内容を観察・報告させる内観法を用いて、厳密に統制された条件下で意識の分析を行ないました。そして、意識の構成要素は純粋感覚と単純感情の2つであり、それらの複合体として意識の成り立ちを説明できると考えました。これが構成主義です。

ちなみに、Wundtはドイツの人ですが、構成主義をアメリカに伝えたのは弟子であったTitchenerであるとされています。Titchenerはドイツ留学から帰った後、アメリカでコーネル大学の実験室を指導していました。彼は意識の構成要素は感覚、感情、心像の3つであるとしました。


2. 行動主義

一方で、Watsonは、意識を研究対象にするWundtの考え方を厳しく批判しました。意識は外部から観察することのできない主観的なものだからです。

心理学が科学であるためには、外部から客観的に観察できる行動を研究対象にするべきだとするのが行動主義です。

行動主義にはいくつかの理論があります。
S-R理論というのは、人間の行動のメカニズムをS(Stimulus:刺激)に対するR(Response:反応)の結びつきで考えようとするものです。この考え方は、後にオペラント条件付けの理論を構築するSkinnerなどに受け継がれました。
行動主義では基本的に、脳を中心とした中枢神経系よりも末梢神経系の反応に注目します。Watsonが1907年に行なったラットの迷路学習成立の実験で、ラットの感覚器官を1つずつ損傷させていっても、運動感覚機能だけで迷路学習を成功させることができたからです。これを末梢主義といいます。
また、Watsonは徹底的に客観というものを重視していて、主観的な思考を認めず、思考は頭の動揺にすぎないとまで言い切りました。この考え方は環境主義と呼ばれます。本能や思考よりも、頭の動揺(要するに心)は周囲の環境的影響によるものであるとしました。


3. ゲシュタルト心理学

アメリカで行動主義が提唱され始めた頃、ドイツではWertheimerらが、意識を要素の複合体であるとするWundtの構成主義に反対しました。
心理現象全体が持つ特性はそれを構成する要素に還元することはできないので、ひとつのまとまりとしての全体を研究すべきだと考えたのです。心理は全体の部分の総和以上のものだとします。この考え方をゲシュタルト心理学といいます。
現在は主に知覚に関する研究でこの視点が用いられています。
ちなみにゲシュタルトというのは、個々の要素や部分の総和を超えた性質を備えていて、それぞれの部分を説明する方法では表現できない形態や構造のことです。

また、この学派に賛成したLewinは、人間の行動は個人の特性と環境の双方から影響を受けている(関数が存在している)とする場の理論を提唱し、集団力学の創始者となりました。


4. 精神分析学

S. Freudは、人間の精神活動においては意識よりも無意識の方が重要で、意識の分析をするだけでは心を深く理解することはできないと述べました。
そこで、自由連想法や夢分析を用いて無意識の世界を探るための精神分析を創始しました。

精神分析については別の記事で詳しく解説しているので、内容を知りたい方はそちらを読んでください。


5. 現象学的心理学

最初にWundtが実験によって心理を解明しようとしたのに対し、Sprangerらは心理学が実験中心の自然科学的な方向へ進むことを反対しました。
人間の心を理解するためには、生きている人間の精神活動をありのままに追体験することによって了解しなければならないと唱えました。この考え方を現象学的心理学といいます。


6. 日本における心理学の発展

心理学は、アメリカでDeweyに学んだ元良勇次郎や、ドイツでWundtに学んだ松本亦太郎によって日本に持ち込まれました。

20世紀に入るといよいよ心理学も定着してきて、まず初めての学会として1927年に日本心理学会が設立されました。これの会長は松本亦太郎です。

臨床心理、教育心理、社会心理に関する学会は第二次世界大戦後に設立された、比較的新しい領域です。1964年に日本臨床心理学会、1982年に日本心理臨床学会ができました。(紛らわしいからもっとなにか別の名前をつけてほしかった)


現在の臨床、発達、社会、認知などの各心理学はこのような学派から発展してきたものです。
人名と主義名はセットにして覚えておくと試験対策になると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?