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思考

心理学における思考の話です。思想ではなく。問題解決と推論の2つを扱います。

1. 問題解決と思考

人間を含め、動物が思考するのはなんらかの解決すべき問題が生じた時です。心理学においてその思考の仕組みを明らかにすべく、動物の行動を観察し始めたのがThorndikeでした。1890年代のことです。

Thorndikeは「問題箱」というギミックが付いた箱の中に猫を入れて、その猫が箱から出ようと試行錯誤するのを観察し、練習の法則と効果の法則を見出しました。
練習の法則とは、ある状況下で同じ反応が何度も繰り返されると、その反応は再び同じような状況に遭遇した時に行なわれやすくなることです。練習によって特定の刺激と反応の連合が強まることを示唆します。例えば、問題箱から脱出するのにレバーを引けばいいことを覚えれば、箱に入れられたらレバーを引くようになります。
効果の法則とは、問題解決に役立つ反応を行なうと、その反応を引き起こした刺激と反応との間の連合が強まることです。WatsonS-R連合理論(学習は条件づけによって形成される刺激stimulusと反応reactionの連合である)の元となりました。


2. 推論

推論には帰納的推論と演繹的推論の2つがあります。

帰納的推論とは、観察した事実や事象にもとづいて、状況を生じさせている原因や法則性を推理することです。例えば、卵焼きを食べたり親子丼を食べたりするとアレルギー症状が出るなら、これは卵アレルギーなんだろうと考えるのがそれです。

仮説検証を妨げる要因があります。
人間は、幼稚園や学校での活動を通してさまざまな知識を得ます。身の周りを観察することによって自然に獲得する知識体系を素朴理論といいますが、これはしばしば正しい科学理論と矛盾した知識になってしまいます。多くの子どもは、学校で地球は丸いという科学を教わるまで、地面が平らであることから地球は平面であると考えているなどです。
確証バイアスも仮説検証を妨げます。確証バイアスとは、自分の立てた仮説を反証するよりも確証することの方を好む傾向のことです。
自分の導き出した仮説がどの程度正しいかに関する直感的な確率判断が、ベースレート(基礎確率)の無視によって歪む傾向もみられます。例えば、95%の正確さであることがわかっている癌の検診で「癌の疑いがあります」と言われたら、多くの人が自分は癌なんだと考えて落ち込むと思います。しかし、その癌の発症率が1000人に1人であることを基に計算すると、「疑いがあります」と診断された人が実際に癌である確率は約1.9%にすぎません。( (0.001×0.95)÷{(0.001×0.95)+(0.999×0.05)}=0.019 )

演繹的推論とは、ある主張や仮説が正しいと前提を置いた時に、その前提から論理的に正しい結論を導き出す推論のことです。例えば、あらゆる物質は温度が上がると体積が増えるという仮説を立てて、金属は物質だから、金属も熱すれば体積が増えるという結論に至るのがこれです。

この推論にもいくつか妨害要因があります。詳しくは省きますが、感情や信念、雰囲気の影響を受けやすいことが知られています。


以上、思考の話でした。
どうでもいいんですが、最新技術によって作られたAIの思考って人間の思考と何がどう違うんでしょうね。僕は気になります。

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