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WISC-Ⅴ

知能検査のひとつにウェクスラー式知能検査というものがあります。日本では、2歳6カ月~7歳3カ月に使うWPPSI、5歳0カ月~16歳11カ月に使うWISC、16歳~90歳11カ月に使うWAISがあります。
2022年2月にWISCがアップデートされて第5版が出たので、今回はその話をします。
WAISの方は別記事にしてあります。

WISC-Ⅴは、10種類の主要下位検査と6種類の二次下位検査で構成されています。視覚情報、聴覚情報、言語理解、微細運動の能力を使う課題になっています。

主要下位検査は、WISC-Ⅳにおいて基本検査と呼ばれていた課題です。
類似:共通の概念を持つ2つの言葉を口頭で提示し、それらのものや概念がどのように類似しているかを答えさせる (例えば「スプーンとフォークは何が同じですか?」と聞いて「両方とも食事に使います」のような回答を期待する)
単語:絵を見せて物の名前を答えさせたり、単語を読み上げてその意味を答えさせる
積み木模様:モデルとなる模様を提示して、2色の積み木を使って制限時間内にモデルと同じ模様を作らせる
パズル:新しい課題です。選択肢の中から、組み合わせると見本と同じになるもの3つを制限時間内に選ばせる
行列推理:一部分が空欄になっている図版を見せて、選択肢の中から空欄に当てはまる記号や絵を選ばせる
バランス:新しい課題です。天秤計りの重りの一部が隠されているので、選択肢の中から重りとして最も適切な物を制限時間内に選ばせる
数唱:数字をいくつか読んで聞かせ、それを同じ順番で復唱させたり、逆唱させたり、並べ替えたりさせる
絵のスパン:新しい課題です。一定時間絵を見せ、その後解答ページにある選択肢から同じ絵を選ばせる
符号:図形または数字と対になっている記号を制限時間内に書き写させる
記号探し:左側に提示された記号が、右側の記号グループの中に含まれているかどうかを制限時間内に判断させる

二次下位検査は、WISC-Ⅳでは補助検査と呼ばれていた課題です。必要に応じて適宜追加して検査します。
知識:一般的な知識に関する質問をして答えさせる (例えば「『吾輩は猫である』という物語を書いたのは誰ですか?」という質問をして「夏目漱石です」という正解を期待する)
理解:日常的な問題の解決や社会的ルールについての理解に関する質問をして答えさせる (例えば「お父さんから『テレビの音がうるさいよ』と言われたらどうしますか?」という質問をして「音量を下げる」「テレビを消す」のような回答を期待する)
絵の概念:複数の絵を提示して、共通の特徴を持つ絵を選ばせる
算数:算数の問題を暗算で解かせる
語音整列:数字と仮名文字を読み聞かせ、決められた順番に並び替えて言わせる
絵の抹消:いくつかの小さな絵の中から、制限時間内に動物の絵だけを探して線を引かせる

これらの検査から何を読み取るのかというと、言語理解(VCI)、視空間(VSI)、流動性推理(FRI)、ワーキングメモリ―(WMI)、処理速度(PSI)を測っています。これらは主要指標といいます。
言語理解とは子どもが獲得した言葉の知識にアクセスして応用する能力、視空間は目で見た幾何学デザインを理解する能力、流動性推理は目で見たものの概念やルールを推理する能力、ワーキングメモリ―は情報を保持・操作する能力、処理速度は判断や行動の速度と正確さに関する能力です。
言語理解は「類似」「単語」「知識」「理解」から、視空間は「積み木模様」「パズル」から、流動性推理は「行列推理」「バランス」「絵の概念」「算数」から、ワーキングメモリ―は「数唱」「絵のスパン」「語音整列」から、処理速度は「符号」「記号探し」「絵の抹消」からそれぞれIQを算出します。

ちなみにもうひとつ、補助指標を測ることもできます。この概念はWISC-Ⅳには無かったものです。補助指標は量的推理、聴覚ワーキングメモリ―、非言語性能力、一般知的能力、認知熟達度の5つがあります。

今年改訂されたので、公認心理師試験ではⅣとの変更点など細かく出題されるかもしれませんね。細かくと言ってもこの記事で書いたこと程度でしょうけど…(ほんとに?)


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