見出し画像

アセスメント

アセスメントとは、対象となる事例の心理的側面に関する情報を収集し、その情報を統合し、問題について総合的な査定を行なう作業です。クライエントのニーズや来談経緯を聞くところから既に始まっています。精神医学的診断と似ていますが、アセスメントは人の心理的特性を幅広く測定するという点で、病理を診断する精神医学的なものとは異なります。
大枠と方法について見ていきましょう。

1. ケース・フォーミュレーション

クライエントの問題がなぜ生じたのか、問題はどのように変化しているか、問題が持続しているのはなぜか、改善のためにはどのような介入が必要かといったことに関する仮説を立てることをケース・フォーミュレーションといいます。アセスメントで得られた情報をもとに、ケースを理解し、適切な介入計画を立てるために行なわれます。

プロセスは3段階に分けられます。
第1段階にすることは問題の明確化です。適切な仮説を立てるために、現在問題になっていることについてクライエントに詳しく語ってもらい、問題を特定します。また、クライエントがどのような支援を必要としているのかも明らかにします。
第2段階は仮説の探索です。クライエントはさまざまなことを語りますが、心理士はその中から対象とするべき問題群を見定めます。そして、問題群の発生要因と維持要因について仮説を立て、その仮説を裏付けるために更に情報を収集します。
第3段階はフォーミュレーションです。問題群と介入に関する仮説を確立し、クライエントと目標を再確認し、その後の介入に繋げます。


2. 方法

アセスメントの方法には、面接法、観察法、検査法があります。順に概説します。

まず面接法です。会話を通して情報を得ます。言葉のみならず、仕草や表情も情報です。調査面接と臨床面接があります。
調査面接は、単なる情報収集のための面接です。面接者は調査目的に沿った構造的な質問をしていきます。
臨床面接は、心理援助のための面接です。クライエントの語りを中心とした非構造性が特徴で、面接者はクライエントの語りを共感的に傾聴することが大切です。

次に観察法です。文字通り、行動を観察することで情報を得ます。
他の方法と比べてのメリットは、①行動の生起頻度や持続時間、強度、連続性などさまざまなデータから事実をきちんと把握できること、②面接法や質問紙法が適用できない乳幼児、高齢者、障害者なども対象にできること、③日常生活上の自然な行動を対象にできることです。一方デメリットは、①客観的なデータを得るにはさまざまな配慮や訓練が必要なこと、②プライベートな行動や内的経験にはなかなか触れられないこと、③ある特定の文脈で得られた結果が他の場合に当てはまるか限界があること、④対象者が「見られている」と感じて言動を変えてしまう観察反応が生じる場合があることです。
大きく分けて3つの技法があります。自然観察法は日常場面の観察です。対象者の自然な状態を把握できますが、多様な情報が入ってくるので焦点が絞りにくいことがあります。実験観察法では、観察の目的に合わせて状況を操作・統制します。やや不自然な行動になってしまう可能性があります。そして組織観察法は、自然観察を効率的に行なうために観察の場面や時間を制限します。

最後に検査法です。検査法はなんらかの課題の遂行結果を情報とします。種類が多く、質問紙法、投影法、知能検査、神経心理学的検査、脳画像検査などがあります。
質問紙法では、対象者にいわゆるアンケートに答えてもらいます。質問文に対していくつかの選択肢があるので、そこから当てはまるものを選択する方法をとります。信頼性と妥当性が確認されているものであれば、群間比較や個人内差などを数値で確認することができます。なお、この方法は識字可能で文章の理解が可能な人でしか使えません。また、対象者は検査の意図を察して本当の気持ちでない回答をすることがあるので注意が必要です。
投影法は、被検査者を曖昧な状況に置き、それに対する反応を見ます。例えばバウム・テストでは、紙と鉛筆を渡して木を1本描かせます。文章完成法(SCT)では、文章の先頭(例:子どもの頃私は)だけが書かれている紙を渡して、それに続く文章を自由に書いてもらいます。インクのしみを見せてそれが何に見えるかを尋ねるロールシャッハテスト、曖昧な場面の図版を使う主題統覚検査(TAT)、欲求不満場面を描いて自分ならその場面でどう発言するかをみるP-Fスタディも投影法の検査です。質問紙法と比べて、被検査者は何を答えればいいかはっきりとわかりにくいので、検査の意図が読み取られにくいという特徴があります。
知能検査では、知能指数(IQ)を測定して知的障害の有無と程度を判別したり、高次脳機能の指標を得たりします。IQという数値以外にも、具体的な回答内容や実施中の様子など、多様な情報から総合的に結論を導き出すことが重要です。
神経心理学的検査は、高次脳機能の障害の同定と測定を目的として開発されたものです。代表的なものは認知症の検査でしょう。認知症の検査についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

そして脳画像検査は、CTやPETを用いて脳の形態、活動状態、機能を画像化して調べます。


以上、少し長くなりましたが、アセスメントについてケース・フォーミュレーションとデータの収集技法に関する記事でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?