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記憶

今回は基礎心理学の話です。

1. 記憶の過程

記憶とは、過去経験を保持したり後でそれを再現して利用する機能です。符号化、貯蔵、検索の3段階に分けることができます。

まず符号化です。入力された感覚刺激を意味に変換し、記憶表象とするまでの一連の情報処理過程のことを指します。
人間は基本的に、意味を理解することができなければ、情報を長く記憶しておくことはできません。まったく知らない外国語の講演を記憶することができないことから明らかです。ただし、数秒以内であれば意味に変換される前の情報を記憶することができます。これを感覚記憶といいます。感覚記憶には、目で見たものを写真のように覚えておくアイコニックメモリーと、耳で聞いたものを音として覚えておくエコイックメモリーがあります。

次は貯蔵です。符号化された情報を覚えておく作業です。情報の中で、枝葉末節がカットされたり、推論や解釈に基づいて実際には入ってこなかった情報が付加されたりすることはよくあります。

そして検索です。貯蔵された情報を再現することができます。ただし、一旦貯蔵されても情報が忘れられることがあるのは周知の事実ですね。


2. 短期記憶

入力された情報を15~30秒ほど覚えておくのが短期記憶です。会話、読書、計算、推理など種々の認知課題の遂行のために情報の変換や検索といった処理を行なう役割を担います。

短期記憶に関するいくつかの特徴のうち、初頭性効果と新近性効果について触れておきます。
例えば10~15語程度の簡単な単語を一定の速度で呈示して覚えてもらうとします。そしてすべてを呈示した後にどれだけ再現できるかを調べてみます。
すると、最初の方に呈示された単語が多く再現されます。これを初頭性効果といいます。また、最後の方に呈示された単語も比較的多く再現されます。これを新近性効果といいます。しかし、リストの呈示後に30秒程度の遅延時間を設けると、新近性効果は消失してしまいます。


3. 長期記憶

今後再び利用するかもしれない情報、何度も繰り返し入力された情報は30秒を超えて長く貯蔵されます。これを長期記憶と言います。
長期記憶には、宣言的記憶/意味記憶/エピソード記憶、手続き的記憶、潜在記憶といった種類があります。順に説明していきます。

記憶の種類

宣言的記憶は、言語的に記述することができる事実に関する記憶です。例えば「ちょうど1年前に北海道へ旅行に行った」といったようなものです。
これは更に意味記憶とエピソード記憶に分けられます。意味記憶は、言語や概念などに関する一般知識の記憶です。例えば「日本で一番高い山は富士山だ」などがあります。エピソード記憶は、個人的な経験に関する情報の記憶です。先ほどあげた「ちょうど1年前に北海道へ旅行に行った」がこれに当たります。

手続き的記憶は言葉で説明できるとは限らない、いわゆる身体で覚えた記憶です。基本的に長期間の反復練習によって習得されます。例えば自転車の乗り方がこれです。

そして潜在記憶は、自分が覚えているとはっきり意識していないのに貯蔵されている記憶のことです。
単語完成課題で説明しましょう。実験参加者に「し〇〇ん」という手掛かりから意味のある単語を完成させるよう求めます。この時参加者が出してくる答えは「新聞」「質問」「敷金」などが想定されます。しかし、課題の前にあらかじめ「新聞」という単語を呈示しておくと、それを覚えたと意識していないのに、課題で「新聞」と答える確率が高くなります。


4. 忘却

最後に忘却の話をします。一度覚えた情報を忘れてしまうことです。

有名なのはEbbinghausの忘却曲線でしょう。

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Ebbinghausは「xeg」「kib」「ghi」のような無意味な綴りを実験参加者に覚えてもらい、それをどのくらいの時間保持しておけるかを調べました。
それによれば、無意味綴りの記憶の保持率は、20分後で58%、1時間後で44%、1日後で34%、1カ月後で21%というように、覚えてから1日以内に急速に下がっていくことがわかりました。


以上、記憶の基礎に関する記事でした。

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