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サックスブルー

『プラダを着た悪魔』で主人公のアン・ハサウェイが着ていたセーターの色について「ヴォーグ」の編集長のメリル・ストリープが発するセリフが好きである。
翌月の彼の誕生日プレゼントに何をあげようか悩んでいる。そういえば推しのアーティストがPVで以前着用していたカーディガンが素敵で、どこのブランドのものなのか気になりだし調べ始めた。さり気ないけどお茶目さがあってお洒落。歳を重ねても時々こういう少々遊び心のあるファッションをしている人を良いなと思う。他で同じものを余り見たことが無い。ネットで検索していると、当人についての噂記事が眼に付いた。謎が多い芸能人。ファンは皆思い入れが強いので噂も様々に立てる。そこで「芸能人っぽい日本人離れした容姿の女性と食事をしているのを見かけた」というタレコミを見た。いや、別に全然悪くない。独身だし誰と付き合おうが自由に決まっている。そう思いながらカーディガンを検索し続けていると思い当たる販売サイトに行き着いた。判明したブランドは「マークジェイコブズ」。違うかもしれないが。例の服とは色目は違うが似たようなデザインのカーディガンだ。成程。写真からしてパッチワークの配置具合が絶妙だ。黄金配置。他のブランドの服が野暮に思えてしまう。素材も良さそう。肌ざわりも良いのだろう。さすが世界のトップブランド。大学時代の友達に勧められ見た「ファッション通信」でよく聞いた名だ。そのカーディガンはメルカリの中古が唯一あるだけで、他にそのデザインのカーディガンは見つからなかった。でも値段が。¥24310ー。中古で。とすると新品でショップに並ぶ値段は10万弱位はするのだろう。10万のカーディガン。きっと彼は着たがらない。たじろぐ姿が目に浮かぶ。しかし推しはさらりと、良く似合っていた。いや、きっとスタイリストさんが用意したもの。私服風で見えても、あれは女性のチョイスのような気がする。本人が選び探し着用しているのでは無い可能性が大きい。しかし似合う。日本人離れした容姿の業界人風の彼女も飽くまで噂であり、事実では無い可能性がある。しかしそうである可能性も十分ある。むしろそうであろう。うーん。今まで考えたことは無かったが急に生々しい。推しの作る詩はどちらかというと草食系であり奥手でありロマンチストではあるが不器用であり、基本的に不幸なのだ。というとその切なさというのは完全に商品。それは言い過ぎなのかもしれないが、勿論本人にその素地が無ければ表現にはならないのだし。しかし、取り敢えず人に夢を売るというのはとても大変。推しの場合は頑なに私生活を秘密にしているが、その方が良い。ファンなら思うだろう。知りたくない、それ以上。
その噂をアップした主に対して他のファンが名言した。「そっとしておいてあげて下さい」。そういう発言が出来る人が真のファンであるのだろう。私はきっとその心境には至らない。
因みにその後、これからの季節にも使えそうなしっかりしたブランドの麻の生地のカーディガンを見つけたのだが、彼に着てもらいたい色だけが売り切れだった。値段はジェイコブズの十分の一だった。皆同じこと考えるんだなあ。残念。