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永谷園ホールディングスのMBO

2024年6月3日に公表された、永谷園ホールディングスのMBOについてまとめます。丸の内キャピタルと組み、TOBを実施しスクイーズアウト手続き後、上場廃止となる予定です。

当初は2021年からアプローチし、2023~24年にかけて戦略や価格に関する議論を行い、実務担当者は非常に細部まで検討したことが伺えます。

取得価額は1株あたり3,100円と過去株価推移で見ても応募が見込まれる株価水準となりそうです。取得価額総額は最大約480億円になるとのことです。

株主間契約の公表内容に基づくと、4年後の何かしらEXITアクションに向けて動くことが想定されているようですので、同期間の運営がどうなるか楽しみです。

狙い

「お茶づけ海苔」などの創意工夫された商品を国内に広め、業界での地位を確立。しかし、厳しい経営環境や消費者のライフスタイルの変化、インバウンド需要の増加に伴う日本食の再評価などを受け、今後の海外展開や設備投資、M&Aの必要性を認識。これにより、外部の経営資源を活用することが有益であると判断

海外展開の拡大

  • 国内市場の成長が限定される中、海外市場の取り込みが必須

  • 既存海外事業の拡大と新商品の開発を通じてグローバル市場を創出

  • M&AやPMIの支援を行える人材、ブランドマネージャー、経営管理人材を投入し、海外事業の経営管理基盤を強化

既存商品・ブランドの競争力強化

  • 「永谷園」ブランドを時代に合わせて再構築し、強化

  • 消費者購買行動データを活用したマーケティング施策の立案・実行

  • 工場稼働の最適化や販売チャネルの増強を通じて生産・販売の効率化を図り、高い収益性を確保

新たな事業の柱の構築による売上拡大

  • ライフスタイルの変化に対応し、ヒット商品を生む仕組みを整備

  • 新たなカテゴリーへの挑戦を通じて新市場を創出し、売上拡大を図る

業務提携及びM&Aによる収益機会の拡大

  • 先端テクノロジーを持つベンチャー企業や海外市場で高いプレゼンスを持つ企業との業務提携やM&Aを機動的に実行し、非連続な収益拡大を実現

案件概要

当事者

  • 公開買付者: エムキャップ十二号株式会社(丸の内キャピタル)
    https://www.marunouchi-capital.com/invest/

  • 売主: 株式会社永谷園ホールディングスの株主

  • 対象企業: 株式会社永谷園ホールディングス(当社)

案件目的

  • 永谷園ホールディングスの株式を非公開化し、機動的かつ柔軟な意思決定を可能とする新しい経営体制を構築

  • 外部の経営資源を活用し、企業価値の向上を図る

取得価額

  • 普通株式1株当たり3,100円

実施期間

  • 2024年6月4日~2024年7月16日: 公開買付者が永谷園ホールディングスの普通株式を対象に本公開買付けを実施。

公開買付け実施後

  • 2024年7月下旬: 創業家一族が公開買付者に対して本再出資を実施。

  • 2024年9月下旬: 本株式併合を用いた本スクイーズアウト手続を実施。

  • 2025年3月下旬: 本自己株式取得を実施し、三菱商事が所有する当社株式の一部を取得。

  • 2025年3月下旬: 公開買付者を存続会社、永谷園ホールディングスを消滅会社とする本吸収合併を実施。

公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由

  • 永谷園HD取締役会の意見内容:賛同、応募推奨

スキーム概要

  • 代表取締役会長 永谷栄一郎氏(所有割合:4.10%)、代表取締役社長 永谷泰次郎氏(4.10%)、取締役副社長 永谷祐一郎氏(0.61%)が、取引成立後、公開買付者に出資し、取引成立後も継続して当社の経営にあたることを予定。公開買付者を吸収合併存続会社、当社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を実施

  • 応募契約 ※取引契約含む:永谷栄一郎氏、 永谷泰次郎氏、永谷祐一郎氏

  • 不応募合意株式:三菱商事保有分(所有株式:2,084,998 株、所有割合:11.93%)

  • 買付予定数:上限を設定しておらず、応募株券等の総数が買付予定数の下限以上の場合は、応募株券等のすべての買付け等を行う

  • 買付予定数の下限:成立した場合に公開買付者が所有する当社の議決権数及び不応募合意株式に係る議決権数(20,849 個)の合計が当社の議決権総数(当社が所有する自己株式を除いた総株式数(17,474,480 株)に係る議決権数である 174,744 個)の3分の2以上となるように設定(
    二段階買収にスクイーズアウト手続きとして株式併合が必要となり、株主の議決権の数の3分の2以上が必要である特別決議の要件を満たす / 「マジョリティ・オブ・マイノリティ(majority of minority)」に、応募合意株式数(1,540,554 株)を加算した株式数(8,465,019 株、所有割合:48.44%)を上回る)

  • 本スクイーズアウト手続後、当社が三菱商事の所有する当社株式の一部(三菱商事の本吸収合併後の公開買付者における議決権割合が 10.00%となるよう算出される株式数)を取得。みなし配当の益金不算入規定が適用されるため、本自己株式取得に応じた場合に得られる税引後手取り額が同等となる金額として本スクイーズアウト手続の実施前の当社株式1株当たり 2,638 円を予定

  • 本スクイーズアウト手続後、創業家一族が追加の資金調達を実施し、公開買付者に対して追加出資した場合、創業家一族の本吸収合併後の公開買付者における議決権割合は、最大で 49.9%(創業家一族が追加出資しない場合、34.5%)となる可能性がある。創業家一族が公開買付者に対して追加出資をする場合における公開買付者の普通株式1株当たりの払込価額は、本再出資における公開買付者の普通株式1株当たりの払込価額と同一の価格とする予定

  • 当社に関して、永谷栄一郎氏及び永谷泰次郎氏が共同で3名、三菱商事が1名、丸の内キャピタル3号ファンドが2名の取締役をそれぞれ指名する権利を有する

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2899/tdnet/2454999/00.pdf
  • 株式間契約の締結

    • 本株主間契約の締結から4年間の、公開買付者又は当社の株式の譲渡、担保権の設定又は承継に関する制限

    • 本株主間契約の締結から4年経過後の永谷栄一郎氏及び永谷泰次郎氏のコールオプション

    • 本株主間契約の締結から4年経過後の丸の内キャピタル3号ファンドのプットオプション

    • 本株主間契約違反時のコールオプション・プットオプション等

検討経緯

  • 2021年6月下旬、金融機関を通じて丸の内キャピタルを紹介され、以降、定期的に成長戦略や資本政策について意見交換を実施。丸の内キャピタルは、国内市場の成長余地が限定的である一方、海外市場の成長可能性を認識しており、永谷氏らと共に海外展開や新事業の構築、M&Aによる収益機会の拡大などを議論

  • 2023年8月中旬、永谷氏らは、丸の内キャピタルの経験やノウハウを活用する必要性を再認識し、同時期に丸の内キャピタルとも認識を共有した。丸の内キャピタルは、豊富な投資実績とグローバルなネットワークを持ち、当社グループにとって最適な経営資源の提供者であると判断され、具体的なスキームの検討を開始

  • 2023年9月上旬に本取引への関与について三菱商事に打診し、2024 年3月下旬に公開買付者への出資を通じて本取引に参加することについて協議を進める意向を確認

  • 2023年10月26日に、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏及び丸の内キャピタルより、当社の取締役会に対して、本提案書の提出を受領

  • 2023年11月7日に、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏及び丸の内キャピタルに対し、本取引の協議に向けた検討体制を整備する旨の意向を示し、同日より、本取引に関する具体的な検討を開始

  • 2023年12月8日付の取締役会決議に基づき、本取引の提案を検討するための特別委員会を設置

  • 2024年1月29日、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏及び丸の内キャピタルから、本取引の公表予定時期の延期を決定する旨の申し入れ

  • 2024年1月30日、当社より口頭で了承した旨の回答

  • 2024年4月5日、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏及び丸の内キャピタルから、2024 年6月上旬を目途に本取引を公表することを目指す旨の提案を受領し、同日当社より口頭で了承した旨の回答

  • 2024年4月 19 日、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏及び丸の内キャピタルに対し、特別委員会より本取引の目的・意義、実施時期、ストラクチャー、条件、本取引後の当社の経営方針等に関して書面による質問を提出

  • 2024年4月23日、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏及び丸の内キャピタルより書面による回答を受領

  • 2024 年4月 25 日、特別委員会より 2024 年4月 23 日に回答を受けた本取引の目的・意義、実施時期、ストラクチャー、条件、本取引後の当社の経営方針等に関する書面による追加の質問を提出

  • 2024 年5月7日、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏及び丸の内キャピタルより当該追加質問事項について書面による回答を受領

  • 2024 年5月上旬、三菱商事は本取引スキームに合意

  • 2024 年5月8日以降、買付価格を検討(下記参照)

  • 2024 年5月31 日、当社は提案者に対して、最終的な意思決定は本特別委
    員会の答申を踏まえた上で当社取締役会決議を経てなされるという前提の下、最終提案が当社の少数株主にとって不利益なものではないと考えられることから、本公開買付価格を 3,100 円とする旨の最終提案を受諾する旨を回答

  • 2024 年6月3日、永谷栄一郎氏、永谷泰次郎氏、三菱商事及び丸の内キャピタル3号ファンドとの間で、取引契約を締結。公開買付者が本公開買付けの開始を決定

買付価格の検討過程のまとめ

初回提案(2024年5月8日)

  • 価格: 1株当たり2,700円

  • プレミアム:

    • 提案日の前営業日(2024年5月7日終値2,326円)に対して16.08%

    • 直近1ヶ月間の終値単純平均値(2,287円)に対して18.06%

    • 直近3ヶ月間の終値単純平均値(2,251円)に対して19.95%

    • 直近6ヶ月間の終値単純平均値(2,213円)に対して22.01%

第2回提案(2024年5月13日)

  • 価格: 1株当たり2,850円

  • プレミアム:

    • 提案日の前営業日(2024年5月10日終値2,328円)に対して22.42%

    • 直近1ヶ月間の終値単純平均値(2,296円)に対して24.13%

    • 直近3ヶ月間の終値単純平均値(2,256円)に対して26.33%

    • 直近6ヶ月間の終値単純平均値(2,214円)に対して28.73%

第3回提案(2024年5月17日)

  • 価格: 1株当たり2,950円

  • プレミアム:

    • 提案日の前営業日(2024年5月16日終値2,175円)に対して35.63%

    • 直近1ヶ月間の終値単純平均値(2,238円)に対して31.81%

    • 直近3ヶ月間の終値単純平均値(2,251円)に対して31.05%

    • 直近6ヶ月間の終値単純平均値(2,216円)に対して33.12%

最終提案(2024年5月24日)

  • 価格: 1株当たり3,100円

  • プレミアム:

    • 提案日の前営業日(2024年5月23日終値2,190円)に対して41.55%

    • 直近1ヶ月間の終値単純平均値(2,281円)に対して35.91%

    • 直近3ヶ月間の終値単純平均値(2,258円)に対して37.29%

    • 直近6ヶ月間の終値単純平均値(2,218円)に対して39.77%

最終的に、2024年6月3日に本公開買付価格を3,100円として、本取引の一環として本公開買付けを開始することが決定

価格算定の概要

  • 市場株価法 :2,219 円~2,255 円

  • DCF法 :1,865 円~3,407 円

    • 割引率は加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost
      of Capital)を採用し、日本:5.0%~7.0%、MAIN ON FOODS(米国子会社):9.5%~11.5%、海外子会社(MAIN ON FOODS 除く):9.5%~11.5%を使用

    • 継続価値の算定にあたっては定率成長モデルを採用し、永久成長率を日本:0.5%~1.0%、MAIN ON FOODS(米国子会社):1.5%~2.5%、海外子会社(MAIN ON FOODS 除く):1.5%~2.5%として算定

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2899/tdnet/2454999/00.pdf

アドバイザー

  • リーガル・アドバイザー:TMI総合法律事務所

  • 第三者算定機関:大和証券株式会社

公正性担保措置の概要

  • マーケットチェックは積極的に実施していない

    • 本取引においては、積極的なマーケット・チェックが実施されていないものの、情報管理の観点等から実務上の問題があることやMBOという本取引の性質を踏まえると、本公開買付けを含む本取引の公正性を担保するために実施された各種措置の内容、その他本取引における具体的な状況に鑑みて、これを実施しなくとも特段、本取引の公正性が阻害されることはないことが本特別委員会において確認されている。

  • マジョリティ・オブ・マイノリティ:上記参照

対象企業概要

  • 企業名: 株式会社永谷園ホールディングス

  • 事業内容:

    • 和風即席食品及び洋風・中華風即席食品の製造販売

    • フリーズドライ食品・パンの製造販売

    • 菓子の製造販売

    • 関連商品の販売

  • 歴史:

    • 1952年に「お茶づけ海苔」を考案し、製造販売を開始。

    • 1976年に東京証券取引所市場第二部に上場、1983年に第一部指定。

    • 2015年に持株会社制を導入し、現商号に変更。

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