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フルーツサンドの天使、あるいは⑧

 明日は、はるかとピクニック。
仕事は予定通りで、万が一呼び出しがかからないように、ピンチヒッターを同僚に頼み、準備万端だった。

のはずが…トラブルがおこった。
パソコンのサーバが急に接続できなくなり、部署内が大混乱となった。理学部だった僕は、得意というわけでもないのに、パソコン関係の担当であり、トラブルシューティングは暗黙の義務だった。お願いだ、直ってくれと願いながら必死に作業に当たったが、就業時間になっても事態は収束せず、残業してサーバ復旧作業を進めた。結局、目途が立ったのは午後10時を過ぎた頃だった。残りの作業は週明けにすることにして、帰宅することにした。

 ほとんどの同僚は帰宅し、残っているのは僕と宮島だけだ。
「今日は散々な1日だったな。」
「本当だよ、俺明日早いのに。」
「残念、飲みに誘おうと思ったのに。」
「まじかよ、どうしよう、今日は飲みたい気分だよな」
「少しなら良いだろ?付き合えよ」
「しょうがないなぁ、明日寝坊したらお前のせいだからな」
トラブルのせいでむしゃくしゃしていたし、少しだけ飲んで帰ることにした。

 フロアの消灯を確認し、廊下に出ると、岡崎さんがちょうど帰るところだった。
「岡崎さん、今から飲みに行くんだけど一緒に行かない?」
宮島が軽い調子で誘う。
「 いいですね! 私も今日は飲みたい気分なんです。先輩たちもですか?」
「そうそう、今日はトラブル続出で調子くるってさー。」
「さっき廊下で田村さんたちが話してるの聞きました。大変でしたね。こんな日は飲むしかないですよ!」 
彼女は快諾し、飲みに行くことになった。3人で飲むのは初めてのことで、これからこんな機会が増えるのかと思うとワクワクせずにはいられなかった。さっきまでは、早く帰らないと、と焦っていた気持ちが薄らいでいく。
                         ーつづくー

※画像は、アトリエともみ様の作品を使用させていただきました。素敵な作品をありがとうございます。
 

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