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つながるための対話、そこからどうやって未来をつくるか

「大人のしまね留学―地域で教育を仕事にするという働き方―」と題して、島根県内の教育魅力化コーディネーター等の皆さんと一緒に、合同採用イベントを開催させてもらった。

企画を一緒に考えてくれたメンバーとの「一緒にやるのがやっぱり面白そうだよね。面白いことをやりたいよね。」という会話から始まったこのイベント。

これまでにも採用を目的にしたイベントは行っていたが、今回いくつか新たな試みをしてみた。例えば、
・スタッフの採用を検討している島根県内6地域の教育魅力化関係者(10人!)が一堂に会し、「教育×地域」という切り口で複数の自治体の取り組みを知れるようにした
・朝10:30~17:00までという6時間半(比較的長時間)の有料(実費にも足りずやや赤字ですが…)イベントにした
・ストレートに採用というより、「地域で教育を仕事にする」ということについて、参加者と一緒に対話できるような形にした
・現役コーディネーターと参加者が同じ言葉をきっかけに対話ができる様に「学校と地域をつなぐパターン・ランゲージ」を活用した
など。

これまでに接点のなかった教育関係の仕事をしている方はもちろん、多様な関心から集まって下さった方々。最初はこちらからお伝えする場面も多かったのだけど、だんだん参加してくださった皆さんが声を発する場面が増え、熱量も、終わりに向けてだんだん上がっていくのを感じていた。

教育について、地域について、自分の思いや考えを伝えて、相手のそれを聞いて、さらに自分の意見も重ねて、一人ひとりがあらめて考える時間になっていたのではないかと思う。

採用にすぐに直結するかと言うとまだ分からないが、島根を、島根の教育を、県内各地で教育に取り組む方々の目を通して知ってもらい、興味を持ってもらえたようだった。(終了後のアンケートで、現場を見に行ってみたい、島根で働きたいを選んでくださった方もたくさんいらっしゃった。)
そこには、一方向の場では実現できなかった関係性が生まれていた。

学校と地域の協働もまずはそこからではないか。ということで、対話に関連して、次のような文章を書いている。

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以下、「教職研修」2017年5月号からの引用。
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学校と地域の連携はどのように始まり、進められていくのか。そのきっかけも進め方も学校・地域ごとにさまざまではあるが、今回は隠岐島前高校での取り組みの経緯(主に地域との連携・協働体制の確立等)を紹介したい(*1)。
島根県の隠岐諸島にある西ノ島町・海士町・知夫村の三町村を合わせて島前地域と呼ぶが、隠岐島前高校は島前地域唯一の高校である。少子化の影響で入学者数が激減、このままでは統廃合という危機に直面していた。島から通学できる高校がなくなれば、保護者は仕送り等の負担が大きくなるため家族で島を出ていかざるをえなくなり、人口減少が加速する……。
このような危機感から、隠岐島前高校魅力化プロジェクトが始まったのは、2008年。三町村と高校が連携し「隠岐島前高等学校の魅力化と永遠の発展の会」を立ちあげた。この会は、三町村の首長・議長・教育長・高校長・中学校長・PTA会長・OBOG会長等で構成され、危機脱却に向けて高校を核とした地域創生案策定の議論がなされた。高校にはプロジェクトを推進するコーディネーターを配置し、学校に外部人材が入ることへの抵抗感を乗り越えながら連携も進めていった。生徒や保護者、教員からのアンケートや意見交換を重ね、2009年2月に「隠岐島前高校魅力化構想」が完成した。
この構想では10の柱が掲げられた。たとえば、地域資源を活かしたカリキュラム編成、学力向上とキャリア教育の充実を支援する公立塾「隠岐國学習センター」の設立、それらを魅力として全国各地から生徒を集める「島留学」制度などだ。これらの取り組みの結果、島外からの入学者数の増加とともに、当時4割程度だった島内からの入学率も8割以上に増え、14年には全学年2クラスに戻った。高校生が地域のイベントや伝統行事に出ていく機会も増え、地域全体が活気づいている。
隠岐島前高校の場合は廃校による人口減少という危機感が強力な後押しとなったが、そうでない学校にとっては地域との連携に積極的になれないケースもあるだろう。ただ、第1回でも述べたように、児童・生徒によりよい教育環境をつくるうえでも連携は有効だ。
では連携のスタートは、どこにあるのか。それは、当事者である児童・生徒を含め、多様な立場の関係者が対話しながら考えていく場をつくり、共通の目的・目標を持つことではないかと考える。学校側が地域に対して連携の意義を示す必要もあるだろう。学校と地域をつなぎ、取り組みを推進していくコーディネーターの存在も重要になる。推進力を持ち、持続可能な取り組みにするためには管轄の教育委員会や市町村・都道府県の行政との連携も欠かせない。
小・中学校はもともと地域とのつながりが強いかもしれないが、教職員が地域との対話を深めればつながりはさらに深まり、学校や地域はより魅力的になるはずだ。

(*1)詳しい軌跡は『未来を変えた島の学校――隠岐島前発ふるさと再興への挑戦』(山内道雄・岩本悠・田中輝美著、岩波書店)をご参照いただきたい。

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対話を通してそれぞれの思いを知り、どういう未来に向かっていくのかを一緒に描いていくことで、共に子どもたちを育てていく、地域をつくっていく仲間として、一方が他方に期待する(期待に沿わないときには批判する)というのではない、関係ができるのではないだろうか。
そうした関係性があることで、一人ひとりが、「じゃあ、自分はこれをやってみよう」と思えたりするのではないか。

そんなことを思う場に居合わせることがこのところ続いている。

ただ、今回の「大人のしまね留学」に関して言うと、そこで生まれた関係性や一人ひとりの思いを具体の何かにつなげるには、1回だけではまだまだだなぁという感覚もある。ここからどうやって未来をつくる具体的な動きにつなげていくのか、その中で何が必要なのかは、引き続き考えていきたい。

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