初めての浴衣

今年の夏にフィンランド人妻は浴衣デビューを果たした。
白地の生地に紺色を基調とした葵の葉や花が刺繍された実に日本らしく、落ち着いた雰囲気の浴衣だ。

念入りに整えられた髪には、私が妻の誕生日にプレゼントした簪(かんざし)が銀色に輝いていた。


黄色の帯も似合っていて綺麗

小物を入れる巾着袋はなんと、妻が手作りしたものだ。100円ショップで適当に買ってきた布を縫い合わせて袋状に成形し、口の部分に紐を通したお店に売られていてもおかしくない質のものだ。
しかも、特に作り方の本などを見たわけではなく、頭の中にあるイメージから作ったというから驚きだ。
妻は私と違い、チマチマとした作業が好きで、正確な作業をするのが得意だ。


妻が作成した巾着袋

これらの初めて着る素敵な浴衣のおかげで、40度に迫る勢いの今年の酷暑すら楽しんでいるようだった。

実は昨年の夏こそ、日本に移住してから初めて浴衣を着ることになるはずだったのだが、私が適当すぎたのが原因でオジャンになってしまっていた。

生来より、衣服にお金を使わない私は、そこら辺の呉服屋でもない普通の洋服店でセールの吊るしの浴衣を買えば良いと気楽に考えていた。
一番の過ちは、妻の体型を考慮していなかったことだった。
妻の家族には身体の大きな人が多く、女性も含めて身長が180cm~190cmがゴロゴロいる家系なのだ。妻も例に漏れず、身長が172cmもあり、日本人男性の平均身長並である(ハイヒールを履かれたら私も身長を抜かれます泣)。

そのため、中高生が買うような安価な吊るしの女性用浴衣では、まず丈が合うものがなかった。手足も身長に比例して長いので、一番大きなサイズでも肘までが限界だった。しかし、どうしても浴衣を売りたい洋服店の店員に無理やり見栄えよく着せられたせいで、案外行けるなと思い買ってしまった。
家に帰って改めて浴衣を着てみると、全くダメで、一歩でも歩こうものなら浴衣がはだけてしまう状態だった。

これを見かねた母が急遽、母の行きつけの呉服屋に連れて行ったのだが、やはり呉服屋でも既製品では丈が合うものがなかった。結局は、オーダーメイドで購入することになった。
そして、浴衣の作成には、最短でも1ヶ月はかかると告げられた。1週間後に地元の花火大会を控えた私たちにとって、その年の花火大会には浴衣を着て参加することが不可能となった瞬間だった。

今年は去年の屈辱を晴らすため、初夏の早い段階から呉服屋を訪れ、地元の花火大会に間に合うように作ってもらったのが冒頭の写真の浴衣だ。
今年の夏は、重要なことにはしっかりとお金と時間をかけるべきだと再認識させられた夏だった。

まだまだ夏は続くので、もう一度くらいは妻の浴衣姿を目に納めておこうと思う。

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