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これからの行政は、テクノロジーだけでも語れない?(若林 恵:次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方)

先日、5月末まで緊急事態宣言の延長が発表された。新型コロナウイルスへの各国・行政・自治体の対策を見ていると、本当に様々な考え方、価値観、アプローチがあるんだなと思う。

・4/7〜マスク2枚を配り、不要不急の外出自粛を要請する日本(その後補助金対応も続々でてきた)
・より多くの人をウイルスにさらすことで集団免疫を獲得しようとしているスウェーデン
・3月13日から、学校や飲食店を閉鎖し、国境も封鎖。18日以降は、商業施設の閉鎖や10人以上の会合なども禁じたデンマーク
・5月10日時点で外出制限を段階的緩和したインドは、経済的な影響が大きく貧困層の苦しい生活を守ることを優先している

気になってる国をピックアップしてみただけでも、これだけ対応や考え方の違いがあるし、対策の背景や国民のおかれている状況も人種も価値観もバラバラ。このような状況の中、まさに次世代の政府はどうしていったらいいんだろう?を考える1冊だと思う。

次世代ガバメント 小さくて大きい政府の作り方

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2020年すぐに在庫切れになり、4月にようやく入手できた黒鳥社 若林恵さんの新しい本、次世代ガバメント。

若林さんは元 WIRED 日本版編集長で、2017年末に解任。
その時若林さんが出した「おしらせ」の記事が本当に大好きで。
このゆるい語り口調も、テック雑誌を編集しながら文化人類学的な視点で「ほんとうにそうなの?」と問いかけにもいつも「そんな風にも考えられるかー」と思う。
リンク先:いつも未来に驚かされていたい:『WIRED』日本版プリント版刊行休止に関するお知らせ

そこから黒鳥社(若林さんが主催するコンテンツレーベル)の本は度々チェックしてて、今回も楽しみにしていた。

これからの政府って、いままでの政府って

タイトルに、「小さくて大きい政府」とあるように、これからの政府は、中央集権(=強力な中心がある)ではなくその場その場で判断できる現場の中心がいくつもでき自立した組織の集まり、つまり分散集権が連携することによってバランスが取れていくのではないか?という印象がしている。

今当たり前になっている「国家」や「政府」を中心とした考え方のほうが、生まれて歴史浅いという。国家がなかった時代は、中心なものなどなく、小さな中心があつまり成り立っていたときも長い。政府と民間が連携して、お役所仕事の最適化を自然に行なっていたりとか。

国民だって政府に対して「こんなけ税金払ってんだから、政府隅々までよろしく頼むよ」ではなかったと。行政が完全にサービスになってしまったから、ちょっと歪みがうまれている。
そして当たり前だけど政府は全ての国民のニーズに対して、サービスを届けることは難しい。より多様性化が進む時代の中で、声の小さい人やニーズの数が少ないものは、我慢したり、損をしたりすることが起きている。

これは、どうしようもないことなんだろうか?

インターネットが生まれたことで、一人ひとりが情報を発信したり取得できるようになった。情報に対してだいぶんフラットになったはず。だったらば、国家が生まれる前の、政府と民間が連携していたころ回っていたシステムのいいとこ取りは、ネットを使えばもっと気軽に行えるのではないか?

プラットフォームとしての土台・すべてを提供しない姿勢

行政はプラットフォームとしてあらゆる登録や申請をオープンにするかわりに、個人や自治体や企業がそれを活用してアレンジする可能性が広がる。

「行政がすべてのサービスを提供する」のではなくて、自治体やNPOがサービスを提供できるようにするにはどうすればいいのか?を支援したり伴走する。
この主体をどこに置くのかの考え方や、プラットフォーマーとしての方向性は、私が今働いているSaaS系スタートアップにも通づるところがあり印象的だった。あくまで主体はユーザー。ユーザーニーズへの多様性に答えるには、もしかしたら「私達企業側がすべて対応する」という考え方を変えていってもいいのかもしれない。もっとコミュニティ的な、月額にたいするサービスという範囲ではないシェアできる知恵やHOW TOを届けられないか?

プラットフォームは、人が主体に・クリエイティブになれるような地盤をつくるようなものなのだ。どうすればできるようになるか?は一定のコツがある、それさえあればスケールできる・効率化できる・お互いに助け合える、という希望が見える。

構成・編集は、あえてカオスらしい。読みやすくはないところがいい笑

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まぁ、本の構成は普通ではない。たぶん、読みにくいと思う笑
誰が話してるのか、誰が聞き手なのかわからないままずっと会話が続き、引用や図解もあちこちに散らばっている。もうカオスでまとまりがないけど、そのまとまりのなさ・カオスな様がこの次世代のガバメントを表現してるって思うと「なるほどなぁ」とさえ思ってしまう。

デザインがとてもかっこいい

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写真やデザインはすごくカッコよい。これは電子書籍じゃなくて、ぜひ実際の紙の本で見てもらいたいなぁなんて思う。

アートディレクションは藤田裕美さん
写真は平松市聖さんとのこと。他の黒鳥社のブックデザインも手掛けてるようで気になります



「次世代」とかいいつつ、このデジタルシフトが進むなかで
改めて「紙の良さ」を感じているのも、次世代っぽくないなーと矛盾していて面白いところ。



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