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背中に残るもの

別に深い意味をつけたのは

この気持ちを肯定したいからだった。

友人には大層な理由をつけて

信念のある人を演じた。


でも実際にはそんなことはない

理由などなかった。


背中にタトゥーを入れた

自分で決めたんだ

両親にも話していないし

誰かに相談もしていない

自分の意思だけで入れた


ただ生きている感覚が欲しかった

タトゥーは痛いと聞いた

一生残るから後悔すると聞いた

だから入れた


痛みとは生きている象徴で

後悔とは生きたいという気持ちの表れだ


たったそれだけの理由で

僕は背中に一生残る傷を彫った


それだけの理由で

僕は一生の後悔を背負ったのだ


実際のところ

今は一片の後悔もない


背中は自分で見えないから

自覚がないだけなのかもしれないが

彫る前と後の僕は何一つ変わらなかった


針の刺さった跡に綺麗に腫れ上がった皮膚が

数日じんじんと痛かった

それから僕の身体は生きるために

皮膚を治癒し始めて痒みが出た


僕の身体は生きようとしている

自らが入れた傷を治して生きようとしている

僕の気持ちとは裏腹に。


身体と心は直結していないようだ

だから傷ついた心に見合うように

身体にも傷をつけたかったんだ。


たったそれだけの理由だ。


僕は一生この狼と共に生きていく。



jun.

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