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ロシアのウクライナ侵攻で注目された映画「親愛なる同志たちへ」

映画(親愛なる同志たちへ)

「暴走機関車」のアンドレイ・コンチャロフスキー監督作品です。旧ソ連の巨匠ですが、なぜ公開が注目されるかを考えてみると、やはりロシアのウクライナ侵攻がその理由だと思われます。
「ひまわり」が再上映で注目されているのもこの侵攻がトレンドになったせいで、映画の次元は同一ではありませんが、同様に今注目されている映画だと思います。 

映画の内容は旧ソ連時代に、現状の不満を抱える工場労働者のストライキに対して、国家が武力による鎮圧を行いながらも、当局により隠蔽された事件を取り扱ったものです。 

主人公の女性はストライキがあった地区の共産党の幹部であり、当初は役所に詰めかけた労働者との対話と交渉を模索しますが、突然鎮圧部隊による発砲が始まります。
信頼していた社会主義体制の国家の暴走に戸惑いながらも、行方不明になった娘の捜索に全力を注ぎます。

全体主義国家では、個人の主権よりも国家の国益が優先して尊重されるのが前提であり、スターリン時代の頃は国家指導者への個人崇拝が高まっていきました。国家のために忠誠を誓っても、個人の主権が保障されるものではありませんし、個人の自由などはある意味、国益とは対極に位置するものと捉えられかねません。
国家に忠誠を誓った熱心な共産党員だった主人公も、こういう事態に陥ればもはやなすすべもなく人生の価値観さえ崩壊しかねません。

一方の現代のロシアによるウクライナ侵攻で、ロシアの国内世論は、ハイブリッド戦争の一環である国家による巧みなプロパガンダの洪水で、洗脳に近い状態での侵攻支持の調査結果が出ています。もはや洗脳されれば迷うこともなく、支持に留まらない崇拝の域にまで達することもあり得ることです。

自分が信じていた国家の暴走に苦慮する主人公の姿は、まだ国家に心を売り渡していない証拠でもありますし、資本主義体制の歪を是正するために誕生した共産主義体制の本来の姿を必死に模索する姿かもしれません。 

ウクライナ侵攻を契機に、今後も同様の主旨の映画が上映されることが予想されますが、改めて戦争の愚かさと、そうした好戦的な土壌を醸し出した国家体制の病巣を考える時期に来ていると思います(写真は公式サイトより引用しました)。

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