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SNS社会に対応する処世術を説いた本「超空気支配社会」

本(超空気支配社会)

本の帯に「SNSが拡散する「極論」を撃つ」「炎上時代の「空気の研究」」と書かれた本です。本の題名とこの2文だけで、その内容は大体想像がつくと思います。

筆者の辻田真佐憲氏は評論家で近現代史研究者でもあり、主に軍歌、君が代、プロパガンダ、大本営発表、教育勅語、検閲などをテーマに執筆をしており、この本も文春オンラインなど雑誌のデジタル版の掲載分を編集してまとめたものです。

テーマだけを並べて見ると、一見右寄りのイメージを抱くかもしれませんが、実際の文章は筆者が説くようにきわめて中間のスタンスを維持しており、プロパガンダの記述などは、音楽から観光まで極めて広範囲にその巧みな政治利用の実態が、北朝鮮の実例などを交えて考察されています。

話を本の主旨に戻せば、同調圧力に代表されるSNS社会=「超空気支配社会」に対応する処世術とでもいうべきことが書かれています。その前提として筆者がライターとして心掛けていることは、「赤旗から聖教新聞まで」というもので、ネット用語でのネトウヨやパヨクのどちらにも属さない、右でも左でもない中間のスタンスを維持するということです。

無論中間のスタンスには特徴がなく独自性がない、との批判を受けながらも以下のように続けます。
上記の考えを発展させていくと「人は正義と一体化できない」というもので、人は過ちを犯すものであり、正義を掲げるものが必ずしも正しいとは限らない。そのことを踏まえて冷静に行動した方が良いと述べています。

一つの正義に依存しすぎると、他の考えや価値観を否定することに繋がり、それが相反する相手や対象を徹底的に攻撃する炎上に直結してしまうという訳です。

そのために必要なのは、オタク的な専門分野に詳しい「専門知」に対抗する、広く浅いながらも全体を俯瞰的には把握して理解できる「総合知」の必要性を説いています。
「総合知」とは専門家の「専門知」に対する評論家的な立ち位置であるとも書いています。

確かにSNSに代表されるネット社会では、総合的な判断ができない専門的すぎるオタクの自己主張の側面も現状では大いにありますが、そうした相手との発展的で建設的な議論が全く期待できない現実では、一般の利用者は勿論、そうしたネット依存の住民にも冷静になって、是非一読してほしいと実感した一冊でした。

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