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『無いなら創る』高専生から学ぶ現場DXのヒント

DXDX!! いつか誰かがDX?


みなさんはじめまして。私はAEONグループのあるスーパーで、店長として約10年、今は本社スタッフとして勤務しています。今回高専生がチームを組んで、AEONグループの課題解決策を、プレゼン形式で発表し合うという、高専インカレチャレンジに、コメンテーターとして参加してきました。


店長時代は

「デジタルが進んで仕事楽にならないかな~」「新システム使いにくい!」

とどこか他人事、スタッフになると、各所からシステム提案を頂くものの

「費用対効果は?」「予算は?」
「いいと思うけど使うかどうかは現場の店長判断で…」

と、「いつか誰かがDXを進めてくれる」「いつか当たり前のように便利な世の中になる」と人任せな妄想を抱いていた。(私だけかもしれませんが…)

高専生の発表も「職場の課題解決アイデアのヒントがあればな~」という軽い気持ちで聞き始めたが、7グループの発表を聞き終えて、


正直圧倒された。


もちろん技術力にもだが、それ以上に「無いなら創る」「試してみて改善する」「課題を認識する」という『現場DX』の本質を、突き付けられた気がした。


①無いなら創る 自分たちで


Aチーム:「レジGoと連動したフードロス解消につながる買物提案」

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【詳細】
「素材」で検索し「栄養」や「節約」などの追加情報を掛けわせて、おすすめレシピを提案してくれるというアプリ。
既存のレシピ提案アプリとは違い、店舗のタイムセールとの連携や、購買データに基づいたレコメンデーションレジゴーとの連携など、リアルとデジタルを連携させた拡張性のあるサービスを目指す。
操作感・機能にもこだわり、文字を打ち込むのではなくなるべくピクトグラムでのタッチ操作可能。それでいて「子供と一緒に作れる」や「農家の方のおすすめの食べ方」などのオリジナリティのある切り口が斬新で、デモ版アプリを自分達で作り、主婦の方、下宿高専生、などいろんな方に試してもらいながら、アイデア→作る→アイデア→作るを繰り返したそう。すごい。下記QRから是非デモ版お試しください。

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【イオン関係者からのコメント】
レジゴーの中にレシピ提案機能を入れこむ案があり、課題として「レシピ検索しても素材が同じなら、毎回同じレシピになる」というものがあった。
みなさんの「素材」×「時短・節約・子供一緒に作る・セール・・・・」という、メニューの選択肢の広がるアイデア、非常に面白いと感じた。今後是非参考にさせて頂きたい。


Bチーム:iAEON アプリの問題点洗い出しとアプリ機能改善+追加機能提案

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【詳細】
同じく新規アプリの提案。ターゲットは「自分たち10代」、デモを用いて「どうすれば自分たちが行きたくなるか」を話し合い、結果「学割」ってスーパーで見ない、ならそれを作ったらいい!というアイデアに辿りついたそう。
自分も含め「他者や他部署の課題解決策は出せるけど 自分の課題になると意見無し」という方、多いと思う。まずプロトタイプを作り、自分達のニーズに向き合うことができていて、素晴らしいと感じた。
また「実店舗の価値」を上げるためには、地域に根差すかが大切であり、そのために「フードロス解決」が重要で、「学割」×「フードロス割引」というとてもユニークなアイデアを見出している。

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【イオン関係者からのコメント】
「10~20代のお客さま」「フードロス」どちらもイオンとして今後積極的にアプローチすべきキーワードであり、「学割」「フードロス割引」などのユニークなアイデアは非常に参考になる。割引だけでなく「フードロスポイント」のような形でお客さまに還元するなど、みなさんの企画を土台にしながら、今後に向けて更に色々と考えてみたいと思っている。


②試してみて改善する


Cチーム:地域と店舗の除雪について【👑チャレンジ賞👑】

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【概要】
雪かきが大変だから、雪の中にセンサーを仕込んで、デジタル宝探しにしちゃおうという企画。集めた雪で滑り台を作るなど、苦行のような雪かきを、地域の楽しいイベントに変えてしまおうという発想転換。
すごいのは、上図のように実際にプロトタイプを作り、実験検証し、課題にぶつかって一つ一つ改善しようとしている点。
作って実験することで「宝が見つからなかった場合はどうする」「イベントでけが人が出たらどうする」「実際メンバーはどうやって集まる」などの「リアルな課題」が出てきて、それぞれの課題に対してひとつひとつ、改善・解決策を考えていた。

まずプロトタイプを作る→壁にぶつかる→自分で作り直す のサイクルが素晴らしい。彼らのアイデアは長期的には必ず課題解決に結びつくと思う。解決できるまでサイクルを回し続ける姿勢に、ものすごく心を打たれた。

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【イオン関係者からのコメント】
地域の多くの方々がイオンに集まるきっかけとして、ユニークでとても面白い。ぜひやってみたく、実施に実現できるのか、と非常に興味深く見させてもらった。つらい除雪作業がイベントに、そして集客になるなんて夢のようなアイデア。ぜひまずは一度やってみて、お客さまの反応がどうかなど、試してみたいと感じた。GPSを使った宝探しゲームは世界でも注目されている。ぜひこれからも色々と知見を広げてほしい。


Dチーム:外国人労働者・従業員に向けた商品翻訳アプリ

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【概要】
バーコードスキャンで外国人の方向けに、各種表示が外国語が表示されるアプリ。「表示が分からないから困る」は「買おうと思った後」の話であり、「そもそも英語で書いていないから手にも取らない 買おうとも思わない」という、売る側にとって致命的な側面があるのではないか、という問題定義は的を得ている。
逆に英語表示ができれば、説明=POPの役割を果たし購買意欲につながるのではないか。在留外国人は年々増加していることも考えると、このアイデアは収益にもつながるという考察も、びっくりするほどロジカルにまとめられている。

実装内容も素晴らしいが、まずは英語版でプロトタイプを作成し、アンケートも実施。

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結果「そこまで必要でない」という結果も多かった。これをきちんと拾えて言語化しているところが素晴らしく、ビジネスの世界では隠しがち。できたことにに満足せず、どこがよくなかったのか、どすうれば他のサービスでは拾いきれない困りごとを解決できるのか、と更に進んでいけていて驚いた。

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【イオン関係者からのコメント】
需要が的確に捉えられていて、このままiAEONに入れてもいいのではないかというくらい、洗練されているアイデアだと思う。類似サービスとの差別化をより明確にしていければ、爆発的に広がる可能性もある。特許をとってもいいのでは、というレベルで、すぐにでも一緒に取り組みたいなと思っています。


Eチーム:タブレット付きカートの導入【👑最優秀賞👑】

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【詳細】
同じくスキャンすると商品情報が表示されるアプリ。情報は多い方がいいが「すばやく・簡単に」お客さまに届ける必要があり、多くの方が利用する「買い物カート」にデバイスを搭載しようというアイデア。
レジゴーと紐づけることで、情報と快適さを兼ね備えたスマートなお買い物を実現することができるというもの。

「生産者さんのこだわり情報を表示したい!」というアイデアが出たが、生産者さんに販促データを一から作って送ってもらうのは難しそう。そこで「テンプレートを作っておいて、簡単に商品情報を入れてもらう!」という解決策を思いついたそう。
デモを自作しているから出できた発想であり、「無理」とあきらめず、出たアイデアに対して試行錯誤を繰り返していて、どちらが課題の当事者なのか錯覚した…

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【イオン関係者からのコメント】
レジゴーの追加機能という考えた方もとても面白く、実現可能性という意味でも非常によく考えられている。即、今後の展開の参考にしたい。「レジゴープラス」という名前も非常にしっくりくる。お客さまが抱える「不」の分析も的確で驚いた。今回のアイデアが発展すれば、情報と機能を兼ね備えた「無人スマートレジ」が生まれるかもしれない。とワクワクさせられた。

③解決策の前に「課題」を認識


Fチーム:駐車場選びの無駄解消

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【詳細】
「混雑時に空きを探す難しさ」「混雑していない時間が不明」を解決すべく駐車場内ナビアプリを提案。「満」「空」だけでなく、どこに空きがあるかわかるようにしたいので、安全カメラから画像認識で、判別できるのではないかと考えた。
運転中にアプリは触れないので、駐車場内に入ると「音声案内」で誘導でする、帰宅予定時刻を入力してもらうことで、未来の混雑状況も推定できる、など工夫を凝らした。

「スムーズに止められること」
という課題設定が明確そのほかにも「駐車時間を縮めるためにクーポンを発行」「ARゴーグルを使って駐車スペースまで案内してくれたらどうか」など、課題に対するアプローチの手数がものすごく豊富だった。

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【イオン関係者からのコメント】
素晴らしいアイデアで、イオンモールの立体駐車場ですぐにでも活用したい。この提案から、アプリ会員限定で「駐車場の予約システム」などという新たな着想も得た。ストレスのないスマートな買い物体験へ向け、実現に向けて具体的なアクションにつなげていきたい。便利で爆発的に広がっていく可能性を秘めていると感じた。


Gチーム:移動販売の収益化

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【詳細】
お客さまの絶対数が少なく、売上確保が難しい過疎地での移動販売で、どう収益化するのかを様々な角度から提案タクシー会社との配送網の連携によりコスト削減を計り、地域との信頼関係構築を重要視して、一軒一人との関係強化を図ることによる客単価アップ、またデジタル予約注文システムを開発することで、お客さまのニーズを逃さない仕組みを考えた。
また個人注文が増えると、プライバシー保護や、個別の商品管理が必要と考え、トラックの中に個人ロッカーを組み込むことを提案。
ロッカーは実際にデモを作成し、使用感や費用感を算出までしている。

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「移動販売の収益化」という「課題」をまず明確にし、解決策に進んでいるからこそ、比較・試す・作り直す・ができている技術力の問題ではなく、マインドでしかない。
曖昧な「課題」のまま、どこかから「解決策」を提案され、「解決できる課題」へとすり替えてしまっていたり、「使いにくい」と使用感だけを批判していることはないだろうか、と自問自答した。

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【イオン関係者からのコメント】
入念に分析したうえで、今のサービスに足りないものを補う、というアイデアは素晴らしい。アプリを通して注文する世界が当たり前になれば、グループの取り扱い商品の幅を活用し、食品以外、例えば家電など、生活に必要な多くの「モノ」「コト」を、届けられるようになる。「信頼関係」という視点を更に広げれば、販売だけでなく、様々なサービス提供、つまり「御用聞き」にも拡張させることができる。非常に柔軟な発想、すぐにでも実務レベルで提案していきたい。

【イオン関係者からの総括】
みなさまのアイデアに正直圧倒された。このまま実装を進めるもよし、是非イオングループに参画して頂いて、一緒に夢のある未来を創っていきたいと、本気で思っている。オンラインでチームを組めるこの時代、世界中の様々な知識・知能と、高専生のみなさんが時に意見をぶつけ合い、そして共創していくことで、まさにマルチコミュニケーションが、そしてマルチバリューが生まれていくだろうと感じた。

創って試す それが現場DX


彼らは昭和生まれの私より、数倍デジタル技術がある。そのことと

①課題を認識する
②自分で創って試す
③意見をもらって改善する

とは何ら関係がない。技術ではなく、考え方の問題だと改めて感じた。

7つのアイデアは、今は実用的ではないかもしれない。いわゆる「会社の企画書」の出来栄えでいえば、荒いところはある。

でも彼らは自分で創り、誰かに試してもらい、時には酷評され、もらったフィードバックを受けて改善を繰り返している。手を動かしている。
見栄えや、計算式上の費用対効果とは比較にならない価値があり、既存の解決策から入ってしまい、課題がぶれるということもない。

複雑な課題の解決策として、DXの普及が急がれるが、待っているだけでは、サービス料を支払うだけの利用者になる。
だからこそ現場(営業だけでなく職場の全員)にいる、すぐに試せる人間が、自分で創り、意見をもらって改善できるようにならなければならない。それは高度な技術は必要ない。課題を知り・作る・試す・作り直す。それこそが現場DXのヒントだと、目を輝かせて発表する高専生から学んだ気がした。コメンテーターだったけど、こっちが教えられました。高専生ありがとう!! 次回も参加したい(*^^)v

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最後に宣伝。私自身も「自分で創る!」を目標に、来年の1月にクラウドファンディングに挑戦します。よければ応援お願いします!


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