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性別二元論に冒されし無垢なるヒヨコ鑑定士らに捧ぐ

2022年06月の書きかけを発掘したので供養。
LGBT法に興味はあるけど中立的な資料の探し方がわからないので略称しか知りません。マツリゴト オッカナイ。誰か助けて。


時は令和だというのに、トランスジェンダーへの対応が皆無な病院に入院してきた話をする。
これは病院への苦情が半分、自分のかかりつけが石頭でめんどくせえというぼやきが半分だ。それ以上でも以下でもない。

はじめに、私の性別を説明する。
自分ではFtMと思っているが、FtXといった方が分かりやすいだろう。
生まれが女性、自認は男性。ホルモン療法を6年行い、胸オペを済ませて5年経ち、SRSはまだ。身体は、股間さえ隠せば男性風呂に入れる程度の筋肉と脂肪の分布。
性表現は女性寄りの全性。
性指向は全性(パンセクシャル)。
声域は、カラオケで米津玄師を-1する程度。
髪はメンズのショートを4ヶ月放置した長さ。
体毛は、首より上と、肘より先と、膝より先を剃る。臍から尾骶骨までも。

たしかに、私は四人床への移動を希望した。個室ベッド代 ¥7000/日 が払えなかったから。
主治医は、病院にかけあったがダメで、ルール通り戸籍性の部屋にしか入れられないと説明した。私はそれを飲んだ。背に腹は代えられなかったから。
看護師は、入口に掲示するネームプレートは、女性用の色のフルネーム表記にしかできないと説明した。私はそれも飲んだ。そのためにわざわざ選んだ漢字表記だったから。

同室のご年配の方は、私をボーイッシュな女の子として認識して接した。ホールで会った方々は、私を若い男性と認識して話しかけてきた。やがて病棟内で情報は矛盾して、意図しないカミングアウトが発生した。

常ならば、「あなたが認識した私の性別」は私が定めるところではなく、私はその性別を尊重する。ボーイッシュな女の子と思うならそれでいいし、若い男性だと思うならそれでいい。
どれも部分的には合っていて、全体としては間違っており、そして私は自分の性別全ての理解を望まない。
知識のない人へ逐一説明を重ねて認識を正して回るには私の性別は複雑すぎるし、自己紹介にこの情報密度は相応しくないと考えるからだ。

しかし、病院の対応は、認識と称するにはあまりに暴力的で曝露的だった。

私に何ができた?
オーバードーズで入院し、生活を壊し、職と収入をなくし、パートナーにショックとストレスと経済的困窮と家事を強い、現代人の第二の脳たる電子機器とネット環境を失い、コンクリートと強化ガラスでできた隔離病棟で、抑鬱と希死念慮と自責と戦って一日が終わる中で、追い討ちのアウティングフルコースを食らう中で、一体何をすべきだった?
月額21万で尊厳と私秘を買う?
10通ほど書いたものの回答がなかった意見箱を、100通捻じ込んでパンクさせる?
なけなしのテレホンカードを費やして、電話室の張り紙にある医療安全支援センターの相談窓口へ訴える?
遠くの男女共用トイレに行かず、最寄りである男子トイレと女性部屋を往復する姿を晒してささやかな抗議活動とする?
個室のシャワールーム(と足拭きマットを担うためのタオル契約¥350/日)ではなく共用の浴室を使うと主張し、女性風呂に闖入して罪なき患者を脅やかし、事態を病院規模で炎上させる?

// 私なりの気遣い
病棟内では普段に輪をかけて中性的に振る舞った
相手に応じて性別を演じ分けた
剃れなかったヒゲはマスクで隠した
移行の初期に女子トイレで三度見されたり女性用の健診車から追い返された経験で自分が男性としての脅威を持ち合わせている理解

私は未だに、前回の入院時のことを思い出す。入院に際し、改名前なので人前でフルネームを呼ばないでください、と伝えたことを。食事を配るホール——患者全員の目前——にて、看護師がうっかり食札の名前を全て読み上げたことを。その後一人床のベッドを倒立させジャージの長ズボンで首を吊ったことを。即刻発見されて逆戻りした保護室で、主治医が「女性名でもいいや、って風には考えられませんかね」と宣ったことを。
これは、大学生がアウティングを受け自殺した報道のわずか数ヶ月後の出来事だった。
「先生、今あなたは、私がもう一度自殺するくらいに酷いことをおっしゃいましたよ」。私はそう告げるべきだった。衝撃があまりに大きすぎて、当時の私は全く反応できなかった。
もちろん、自己肯定や自己許容が大事なのは理解している。だが私の場合、"付けられた名前"は自己に含まれない。そもそも、「でもいい」と「呼ばれてもいい」は全く別次元の話だ。

そんな3年前から、ここは何ひとつ変わっていない。
いや失礼、ひとつだけ変わっていた。私物に名前を書いて貼るビニールテープの色を、選べるようになっていた。男性用の緑、女性用の赤、そしてどちらでもない白。
——テープを1色増やすのに3年かかるなら、ネームプレートの表記と色は、戸籍性の扱いは、何年待てば変わるんだ? この病院は天然記念物の仲間入りか、博物館への収蔵でも目指しているんだろうか?
それとも何か、私が世間に疎いのは自他共に認めるところだが、世間は未だこの程度なのか?
それともサンプルの偏りか? 他に知る例が山梨医大で胸オペしたとき問答無用で男性部屋に突っ込まれたやつしかないのがいけないのか?

ちなみに、その後、私の食札は姓のみ表記となった。自殺未遂をしたことでインシデントレポートが書かれ、カルテにデカデカと載ったのだろう。そして退院して改名が済んだ後も、延々、外来の待合で姓だけを呼ばれ、呼び出しを聞き逃し続けた。3回くらい頼んでようやくカルテを上書きしてもらった。

// 書きかけ
男女で部屋を分けるという考え自体が、総合的な性がXで、性指向がパンセクシャルである私を受け付けていない
全部が全部戸籍性に則れば無問題、はマジョリティの傲慢な暴論
それで運用したいならちゃんと例外処理も用意してくれ


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