性同一性障害当事者が改名した話
2019年03月に、性同一性障害当事者が改名した話。
GID・FtM。元の名前は縦から見ても横から見ても女性名。"さくら"みたいな。何かと困った。入院中に死のうとしたりとか。
ちまちまと使用実績を積み重ね、もうよかろうという頃合いで申請し、受理された。
流れをググる
ググって。先駆者がたくさんいるから。ここ以外も見て回って。
職場や学校で通称を使用しているときは、上司や先生に「いつからいつまでこう呼んでいました」と一筆書いてもらって物的証拠にしておくのが便利。あとは通販と文通で乗り切ろう。私は従姉の結婚式の座席表とかも通称にしてもらって案内状をコピった。とにかく、日付と通称がセットで載ってる紙をたくさん残そう。私の場合は、期間は通算で2年、バイト先上司からの一筆書き + Amazonの領収証 + 突然文通に目覚めた友人からの手紙 + 結婚式の案内状 + 入院中の親族からのハガキ、って感じで出した。
書類を貰う、説明を聞く
ここは入院中家族にやってもらったからあんまり分からん。申立用の書類を一揃い貰って、ググっていたら知っているような説明を一通り聞くらしい。下まで読んでもらうと分かるが、ここで添付書類をどのように提出するのかをきっちり訊き出しておいて、二度手間をなくすのがよいと思われる。
書類を作る、揃える
渡されたパンフレットにはこうある。
ここで大事なのが、「名の変更の理由を証する資料」のうち、通称使用履歴のコピーはまだ作らないこと。なぜならば、回答書で添付形式が指定されるから(少なくとも今回はそうだった)。A4サイズ以下、左側に3cm幅で空白を設ける、とか。ここでコピー取って封筒に詰めて重くなったから切手追加して……とかやると二度手間になってしまう。
それから、診断書は原本ではなくコピーを提出すること。回答書で「コピーでいい」と後出しジャンケンを仕掛けてくるため(少なくとも今回は)。もし原本出せと言われたら、そのときに添えればいい。
申立書を提出する
直接家裁に持ち込んで提出するもよし、お手軽に郵送するもよし。
照会書を受け取り、回答書を提出する
回答書では、「変えると戻すのめっちゃ大変だけどいい?」とか「借金あったりしない?」とか、改名に際していろいろ訊かれるので素直に答えればよし。ここで、「資料はこんな感じで付けてね」って言われるのでその通りにする。
審判書を受け取る
審判書と、やり取りで余った切手が送られてくる。この審判書は役所に提出したら戻ってこないので、勝訴ごっことか記念コピーとかはあらかじめ済ませておこう。
役所で手続きをする
審判書には「名の変更の審判を申し立てた方へ」と題された丁寧な案内もついてくるので、それに従って役所で戸籍届出をする。
諸機関で手続きをする
折しもこちらのツイートがTLを流れてきたので、倣わせて頂いた。住民票→保険証→免許証→銀行→携帯会社。その後に、診察券とか会員証とか。
ただし私の場合、保険証は書き換え期間中没収された。医療機関によっては、保険証コピーだと10割負担で届いたら返金とか、3割でいいけど届いたら見せに来てくださいとか、結構めんどい。覚悟か確認をしておくとよい。
これはやっとけ
新しい名前の、漢字、ひらがな、カタカナの練習。漢字 (漢字表記ならば) はもちろんだけど、振り仮名が案外盲点。あたかも"生まれてこのかた何百遍も書いてきた字ですよ"ってツラできるくらいに練習しまくろう。
漢字の説明の練習。電話口とかで、「命令のレイに和むで礼和です」とかって言うやつ。→名前 漢字 説明 - Google 検索
(200919追記)ローマ字表記も。ゆとり最後の世代である私はヘボン式に疎く、本名用に作ったメアドがダサくなってしまった。
感想
終えてしまうと、結構あっけない。
私はあくまで戸籍名から女性性を除去したかっただけで、家族や友人からは普通に旧名の方でも呼ばれるし普通に返事をするので、もう誰も私を女性名で呼ばないのだ……といった満足に浸ることはないのだが、それ故に、赤の他人である受付事務の人などから呼ばれる新たなフルネームは、なかなかに感慨深い。
そして、記した本名から外見を3度見されたり、「失礼ですがご本人様で……?」を食らったりすることは確かになくなった。しかし結局は、戸籍の性までを変えねば根本の問題は解決しない。ここはまだ通過点に過ぎず、これはまだ及第点に過ぎない。
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