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夜になってやっと思い出す

酒と人と文学が救い。

元気じゃない。元気に振る舞えるときもあるけれど。
だって、人といることは楽しいから。愛おしい時間だから。
だけど、きっとまだ例の "black dog" は巣食ってる。
何をすれば治る?ううん、治らない?
治らないとしても。たとえ一生抗うつ薬と付き合っていくことになるとしても、今より良い未来を信じたい。
デザインがしたい。人と働きたい。人を愛したい。生活がしたい。
好きなものを好きと言って、美しいものを美しいと感じたい。
それだけのこと。

こんなにシンプルで、機械的にすら動けるはずのものを、当たり前にできなくなってちょうど一年が過ぎた。
一年前の今、わたしは仕事ができなくなった。
何も考えずにやるだけのルーティンが、サッと処理すれば終わるはずのタスクが、何もできなくなった。メモを取ってもメモが読めず、会議が始まっても一言も喋れなかった。なぜかわからないけど、いつの間にか壊れてた。
会議中に救急車に運ばれようと、何とかやってたのにね。
思い通りに自分の手足と頭が動かなかったことが、まじで怖かった。
鬱だなんて信じたくなかった。なんかどっかにちっちゃい欠陥があって、薬を飲めば綺麗さっぱり治るもんだと期待して受診しただけだった。
何がダメだったのか、今になったって分からない。喧嘩すらしたとある上司を敬い、憎み、社会の醜さに絶望し、何がなんだか分からなくなっただけ。

そのまま一年が過ぎた。
その間、できたこともできなかったこともあったけど、
幸せになるための人生の方向性を考えることはやめなかった。
まあ、ここ数年の中では最も本当の幸せらしい幸せに近づけた一年だったんじゃないかと思う。自分の弱さも守りたいものも、しっかり自覚できたから。いっぱい弱くなって、いっぱい泣いたから。


酒と人と文学が救い。

そうだ、夜になったらあの、ぶっきらぼうな黒髪のお姉さんのいる古本喫茶でビールかウイスキーを飲もう。
よく分からないエッセイか、サガンのシニカルな小説を読もう。
そうじゃない日はジムに行って、かつて好きだった筋トレをしよう。
背中を鍛えると良いのよ。ベンチプレスだってやるよ。
あとお尻ね。ダイレクトに大臀筋に筋肉痛が来たときの達成感ったらないよね。
本当は有酸素もある程度やって、しっかり呼吸をやんないとね。
そんで、煩悩を洗い流して寝るの。寝酒を飲んだって良い。
悪い夢を見ず、見たとしても綺麗に忘れられますように。


昼も嫌いじゃないけど、たいていこういう気持ちを思い出せるのは決まって夜なのね。本当の自分に還れる時間。誰もが自分のために時間を使い、本当に独りになれる時間。


あのね。

大好きな、あるいは愛していきたい人たちに、わたしは弱い人間なんだよって打ち明けるときは怖いよね。
強くならないと資本主義の歯車になれない気がしちゃうからさ。
だけど、弱いなりに幸せになれるんだよって希望はこの一年で持てたから、相変わらずわたしは人と会う。
たとえその後数日、疲れて寝込むとしても。
また独りの夜が心を綺麗にしてくれるって知ってるから。


まじで馬鹿みたいって思わない?
何を幸せと呼べるのか、どれだけの人たちが問うたんだろう?


入院してたときね。
同じ大部屋にいたおばあちゃんの元に、何人もの家族が面会に来た。
おばあちゃんはいつも嬉しそうだった。息子さんのお嫁さんにキティちゃんの靴下をもらって看護師さんに自慢したり、お孫さんがきたときなんてワントーン明るい声で話しかけてすんごい可愛がって嬉しがった。娘さんがいらしたときはあれこれ大きな声で言えるわけじゃない相談をしてて、頼りにできる人がいて安心してる声をしてた。

ああ、こういうことなんかなあ、って思ったの。
子供めっちゃ欲しいとか思ったことなかったけど、たぶんわたし、こんなふうに家族を愛していきたいのかもしれないなって思ったの。


酒と人と文学が救い。

心を美しく保つための独りの夜を大切に過ごせる日が、これから一日でも多く増えますように。


そう、これは殴り書きです。


Emoru

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