【考察②】〜番狂わせ・ジャイアントキリング〜
スポーツの世界では、稀に(?それとも結構多く?)「番狂わせ」や「ジャイアントキリング」といわれる“弱者(格下のチーム)が強者(格上のチーム)に勝つ”ことがあります。
私はこれまで①バレーボール②硬式野球③卓球と、高校部活動の顧問をしてきましたが、やはり競技によって「番狂わせ」「ジャイアントキリング」が“起こりやすい競技”と“起こりにくい競技”があることを、試合の様子を見ていて実感してきました。
(1)ネット型スポーツ
まず、バレーボールや卓球といった“ネット型”のスポーツでは格下が勝つような「番狂わせ」は滅多に起きません。
大抵は競技の経験が長く技術的に上手い“格上”のチームや選手が勝ちます。
理由を考えてみましたが、おそらく一番の主の理由として挙げられることは、「攻撃の成功(≒守備側のミス)が“すべて1点”として得点になること」だと考えます。
技術・能力が下の選手が、上の選手に攻撃(アタック・スマッシュなど)をすれば、拾われて返されることが多いです。
逆にその後、技術・能力が上の選手が、下の選手に攻撃をすれば、それを弾いたり、返せなかったりすることの方が、前者より圧倒的に多いです。
そのミスがいつ起きるかどうか、という場面がネットをボールが越えるたびに起こります。
そしてミスが起きれば、それがすべて“1点”となり、相手の得点となります。
そして、あっという間に“25点”や“11点”を取られてセットを取られます。
相手との技術・能力がある程度拮抗していれば、メンタル面の勝負にもなってきますが、対峙してみて力の差を感じるチームには、なかなか精神面だけで乗り切るのは厳しく、メンタルを維持し続けるのも難しく感じます。
(2)ゴール型スポーツ
次に、“ゴール型”のスポーツです。
試合中は攻撃をすれば同時に守備もする流動的なスポーツですから、“ネット型”のスポーツのように「ミス=1点」ではなく、ミスが直接得点となるスポーツではありません。
その点では、“ネット型”のスポーツより「番狂わせ」「ジャイアントキリング」が起こしやすいと思います。
ただ“ゴール型”のスポーツは、さらに競技の特性で分かれてくると感じます。
例えばバスケットボールは、なかなか格下のチームが勝つことは難しいと思います。
逆にサッカーは、試合のスコアが0-1や1-2などロースコアになるため、「とにかく必死に守って0-0の展開を維持し、最後に1点をもぎ取って勝つ」みたいなことが起こせます。
これは完全な私見ですが、サッカーはバスケに比べて攻撃(シュート)が決まる確率が低いですし、“1点”を獲得するまでの労力が大変だと思います。
そのため、格上の強者が“0点”の時も往々にしてよくありますし、その時に格下の弱者が点を取ることも起こり得る話です。
わかりやすい例が昨年のサッカーワールドカップだと思います。
サッカー関係者やファンの方々に怒られそうですが、FIFAランク下位のチームが勝つ、日本代表のドイツ戦やスペイン戦が良い例です。
(決して日本の勝利が偶然だとか弱いだとか言っているわけではありません。あくまでFIFAランク下位のチームが勝ったということを例としています。)
(3)ベースボール型スポーツ
最後に、野球やソフトボールといった“ベースボール型”のスポーツです。
競技の特性としては、時間制で流動的なスポーツではなく、1球ごとにプレーが止まる、時間の“間”のあるスポーツです。
“ネット型”のように“●点先取”というスポーツでもありません。
野球だと9回の攻撃と守備を両チーム平等に行います。
一方的に片方のチームが攻め続けて、攻撃のチャンスも与えられずに、制限時間で負けました、●点取られたので終了です、といったことはありません。
私はサッカーと同じように、“ベースボール型”のスポーツは「番狂わせ」「ジャイアントキリング」が起こしやすいと感じます。
まず、「攻撃が決まる(得点が入る)確率が低い」です。
打撃でいうと「打率(ヒットになる確率)3割」で好打者といわれるので、7割は凡打・ミスショットです。
守備は1試合に何失策もエラーはなかなかしませんし、したとしてもそのエラーによって直接“1点”取られるわけではありません。
必ずそのエラーがその後の“1点”に繋がるかどうかもわかりません。
とにかくヒットを打たれてもエラーをしても、ホームベースを踏まれる前にアウトを3つ取ればその回は0点です。
チーム全体で2桁安打したとしても、点が入らないこともよくありますし、ヒット0本で点を取れることもあります。
つまり、ただでさえ確率の低い攻撃(打撃)がうまくいったとしても、(もちろん状況によりますが)直接得点になることはないですし、エラーをしたとしても、同じです。
“ネット型”のように、攻撃の成功や守備側のミスがそのまま“1点”になることはありません。
それとは逆に、「満塁ホームランで一挙4点」などホームラン1発で展開がガラッと変わることもあります。
それに加え、ただでさえ確率の低い攻撃を大事な場面で決める、逆にピンチの大事な場面でミス(エラー)をしない、メンタル面も大きく結果を左右します。
どんなに相手にヒットを打たれても、自分のチームがエラーをしたとしても、できるだけホームベースを踏まれない(点を取られない)ように必死に守り、数少ないチャンスをものにして点を取って、最終的に相手より1点でも多く得点できていれば良いのです。
そうすれば、こういうことも起きるということです。
(4)何を鍛えるべきか
それでは「番狂わせ」「ジャイアントキリング」を実際に起こすには、日頃の練習で何を頑張ればいいのでしょうか?
まず“ネット型”のスポーツは、まずとにかく守備側のミスを減らす技術を高めていくしかありません。
攻撃をしたとしても、その攻撃をミスしたら相手に“1点”ですし、その攻撃を拾われたら相手に攻撃されます。
そして相手に攻撃され続け、攻撃されるたびにミスをしていたら、攻撃し返すチャンスもありません。
“ゴール型”スポーツも、とにかく守りです。
格下のチームが大量得点をすることは望めないので、少ない得点で勝つために、とにかく相手の点を少なく維持することだと思います。
ここまでは完全にすべて私の私見です。
実際はどうなのか、その競技の経験者の方の考えや、実験・研究の結果などがあれば、教えていただきたく思います。
では最後に“ベースボール型”、特に野球はどうなのかですが、これが難しいところです。
人によって意見・考えがかなりわかれます。
「とにかく0点で守りきれれば負けることはない」という方もいれば、「失点覚悟でとにかく打撃を強化して、5点取られても6点取れれば勝てる」という方もいます。
とにかく良い投手を育てるか、とにかくエラーをしない守りきれる守備力をつけるか、とにかく打率・長打力を伸ばして攻撃力をつけるか、あるいは一瞬の隙を突く走塁力か。。。
もちろん初めから「番狂わせ」「ジャイアントキリング」狙いではなく、すべての力を伸ばして格上の強者と対等な関係になり得ればいいですが、高校の部活動ですと、たった2年ちょっとしか時間がありません。
野球だと、格上の強者と対峙するために最低条件として必要な力は何なのか。
そして、何に特化して最優先に鍛えていくことが必要なのか。
次回の投稿では、実際に計算式を使って考察した結果を投稿しようと思います。
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