見出し画像

自分が好きなものへの敬意

まとまらない考え事をつらつらと。



「多ステしたいわけじゃないんだよなあ」とここ最近考えている。
※多ステ=同じ演目のお芝居を何度も観に行く事

推しさんのお芝居は観たい、だけどそれは、出来れば毎日じゃない方が嬉しい。
希望を言えば週1ペースくらいがちょうどいい。


ただ演劇という娯楽は短期間会場を借りて、その数日の間に同じ演目を何度かやるのが常。

今回は5日連続でやるというし、なんなら金土日は1日2公演やるから、であれば、行ける時に行くしかないかあ…という感じなのだ。
出来るだけたくさん観たい。
だって推しさんも推しさんのお芝居も好きなのだから。そりゃ観たいさ。

でも改めて
「5日間8公演連続で観たいか?」と考えると
「心理的にはたくさん観たいけど、時間軸として正直そんなに連続で観たいとは思わない」のだ。
それがわたしの本音だ。


整理のために洗い出す。

▼そもそも…

どんなに好きな映画でも小説でも漫画でも、
大好きなスピッツのライブDVDでさえも、
何日も連続で同じものを見たりしない。
好きな曲は1曲延々リピりながら仕事したりはするけど、たぶん耳以外は全て自由にできるしいつでも好きな時に聴くのをやめる事もできるからいいんだと思う。

観劇は始まったら休憩か規制退場まで、席に座ってひたすら黙って身動きも最小限に見続けるしかない。

細かいお芝居が日に日に進化するのを見つける楽しみもある。
推しさんのお芝居で演技で、そういう発見をするし、それが楽しく醍醐味なところはもちろんある。
その違いから自分なりにキャラの考察をしたり、推しさんのキャラ解釈の推察をしながら観るのも楽しい。

しかし初日に観るまで「そのお話が自分の好みに合うかどうか」すらわからんのだ。
確実にわかっているのは、推しさんが出演する事とあらすじと自分の席番くらいのもの。


なのになんで観る前から何枚もチケットを買うんだ????好きな話かどうかもわからないのに。
冷静に考えると正気の沙汰ではない。

ただ、推しさんが出るなら観たい。
その気持ちだけで「きっと楽しいはず」という期待で、内容のわからん1枚8000〜1万円のチケットを何枚も買ってしまうだけなんだ。

▼全通は博打(わたしにとって)

以前、仕事を死に物狂いで調整し、張り切って平日3連休を取り、土日合わせて5日間全通した。
もちろんあらすじくらいしか事前情報はなく、推しさんが出演する・推しさんのお芝居が観たい気持ちだけでチケットを買った舞台だ。

結果的に、大変申し訳ないが
全公演の特定のシーンでわたしは毎回寝ていた。

寝そうになる前の身体がポカポカするのをおさえるために小さいアイスノンを持ち込み、腕や足を何度もつねったりしたが、どうしても抗えなかった。

運が悪い事に脚本が全然好みじゃなかったのだ。

細かいセリフの言い回し・言葉選びにいちいち引っかかる。なんだその例え?とか、普通そんな比喩するか?とか、それどこの方言???とか。
(別に地方を舞台にした話じゃないのに)

お話の流れも細かい部分もなんだか肌に合わず物語に没入できず、キャラに感情移入できず。

わたしは小説を読む時、内容やジャンルよりも作家さんの言葉選びのクセが好みかどうかで選ぶ。
セリフや単語から受け取る情報でどれだけ言葉以上の裏側を想像できるか、想像力を掻き立てられるかを重視する。
その作品の脚本家さんのつむぐ文章では、どんなに役者さんが噛み砕いた演技をしてくれていても、どうしても物語に入り込む事が出来なかった。

脚本家さんが悪いわけじゃないと思う。
これはわたしのこだわり故の、趣向不一致なだけの不幸な事故。たぶんそう。

観劇2回目からもう既につらかった。
前売り入場特典でもらえる推しさんのチェキがかっこいいのと、入り込めない好みじゃないお話とはいえ、お芝居をしている生きた推しさんの姿を生で観られる事しか楽しみがなかった。

あんまり覚えてないけど8公演で7万円くらいだったと思うが、何であんな苦労して休み取って7万円払ってこんな気持ちになりに毎日出かけているんだろうかと思った。

少しでも体の疲れを残さず観劇中寝ないために、土曜日は急遽、劇場徒歩3分の距離にある宿を取って万全の体制で前楽・千秋楽に備えた。
でも寝た。

面白かったと思った人もいるだろう。完全にただ好みに合わなかった。運ゲーに負けただけだ。
でも「内容わからんお芝居のチケを前売りで買う」というリスクを身をもって知れた良い機会だったと思う。

その次の公演は過去一大好きな作品だったので、そっちに賭けていれば幸せだったのになあ

巷でよく聞く「虚無舞台」っていうのは
観客満場一致でなく個人的な好みで言ってもいいのだとしたら、これがわたしの初めての虚無だったんだと思う。

世の中には毎回全通して数々の虚無を潜り抜けてきた人がいっぱいいるらしい。わたしにはむりだ。またあんな気持ちを味わうかもしれない博打は打てない。


▼時間とHP

わたしの今の一番の趣味は仕事だ。
平日は休憩取りながらではあるが、リモートワークで朝10時から夜中22〜03時くらいまでだいたい仕事してる。毎日とても楽しい。
休みの日は寝たり脳みそを休めたりでぼーっとするか、お芝居に行ったりしている。

自由にお絵描きもしたい、小説や漫画も読みたい、ネトフリも見たいし、最近久しぶりにちょっと遊んだ戦国無双4もやりたいしクリアしきれてないwatch dogs legionもやりたい。
旅行にも行きたいし、自転車で出かけたいし、うまいパエリアとビリヤニも食べに行きたい。

多趣味なのに最近いろんなことができてない。

外にきちんとした格好で出かける趣味はしたくにべらぼうに時間がかかる。
ゲームなら部屋着のまま顔も洗わず、ただ飲み物とおやつを用意しモニターの前に座ってスイッチ入れればいいだけなのに。

平日休んで観劇するために予定ない土日や平日深夜に余分に仕事をして作業巻いたりする。
以前は舞台を振り返るアフタートークイベントなんかも平日にやったりしていたし、日曜千秋楽直後に開催されるイベントも行くので、帰ってすぐ寝ても月曜は疲れが残る。
だから月曜ゆるペースでいいように調整しとく。

自分で選んで仕事と観劇を優先しているわけなので、そこに文句があるとかではない。
ただ、観劇の楽しさとは別に「出かける億劫さ」「帰って来た後の疲れ」がある。
楽しかった気持ちでMPは満タンなんだが、HPを110%使っていて体力回復が追いつかない。

役者さんてそれを演じる側として動きっぱなしで毎日過ごすの、ほんとすごい。わたしなんか座って見てるだけで筋肉痛になる雑魚なのに。


▼全通って誰のためにすんの

観たい人が観ればいいと思う。
そもエンタメは楽しむためにあるもの。
無理してまで行くこたない。

そうなんだけども。

※以下は推しさんが言ったわけではないが同じ舞台に出る近しい人たちの発言

「全通してー」
「平日チケット売れてないです」
「売れないと次が出来ないかもだから」

わたしが言われたわけじゃないけど
「飛行機キャンセルしてでも!後悔させない」

こんな言葉を聞いてわたしの虚無が蘇った。

全通って売れてなくて困ってる役者のためにするもんなの??
したいけど躊躇ってる人の背中を押すにしても、そんな言い方する??
席埋まらないのはキャパ読み違えたのが悪いのでは???


つまらんもの作ろうと思って脚本書く人も、お芝居する人も居ないと思う。自信を持って面白いと思うものを届ける気持ちに嘘はないだろう。
実際今まで何度も面白いものを観せていただいているし、とても楽しかった記憶がたくさんある。

ただ、それとこれは別の話だろう?


飛行機代と追加チケ代と、それらを手配する時間、観に行く時間…
「それだけのものと引き換えに出来る程素晴らしいから観に来てくれ」ならわかるが
「売れてないから来てくれ」から始まる話なのだ。


ちょっと失礼な誘い方だなあと思うわたしの心が狭いのだろうか。
失礼というか、筋も道理もなくないか。

たまに「スーパーの売り場担当が発注数の桁間違えて在庫祭りで困ってます、買ってくれ」とかでバズるのは見るしわかる。
余る理由も明かされず、余るのに次々とキャパは上がっていき、毎回余るので買ってほしいと聞かされ続けるのはとても微妙な気持ちになる。


「売れなかったら次はないかも」
なんて、多ステしない客に罪悪感お裾分けみたいな言い方しなくてよくないだろうか。
なんで「次」を盾にするのか。
事実だろうけど客側が規模やキャパを決めてるわけじゃないのに。


エンタメを生業にする人間として、自分の提供する娯楽を楽しんでお金と時間使ってくれるお客さんに対してそんな言い方する奴があるかと、
仕事モードのわたしとしてはそこにめちゃくちゃ解釈違いをおこしている。


▼都合にあわせないファンに人権はない

一方で、ファンとしてのわたしは応援したい気持ちも持ち合わせていて。
素直にやはり、出来る限り観たい気持ちはある。
だから最初から少なくとも半分以上はチケ買ってるわけだし。
平日も初日は午後休ねじこんだわけだし。
毎回半分以上は必ず行ってる。

しかしそんな気持ちをぺしゃんこにされてしまった「チケット発売後に発表された平日特典」
平日の木金に観劇するとブロマが1枚、前売り予約特典とは別にもらえるらしい。
チケット発売後に急遽発表&追加されたものだ。

名目は平日特典だが、木金のチケが売れておらず、追加で買ってもらうための特典だ。
初日の水曜日には特典がないから、どんな言葉を使おうが、真意は「追いチケ訴求のための🐟」なわけだ。

初日の水曜日には特典がない。
「平日特典」なのに水曜日にはない。
水曜日は「平日」ではないから。
ここでいう「平日」は
「(それなりに売れてる初日以外の)(売る側の都合でもっと売れて欲しい)平日」だから。




「平日に来てくれてありがとう特典」的な名前なのに、水曜日に行く人はありがとうではない。

「言い訳して会社休んでー(そしてチケ買って)」と言っていたが、すでに水曜日を事前に買っているわたしは、ズル休みではないにしろスケジュールと工数調整をして休みを確保した上でチケットを買った。

でも「客ではなくやる側の都合で」「突発的な後出しで」優先度を分けられてしまうのだ。

特典ブロマが欲しければチケ買って休めばいいだけなので、やろうと思えばできる。
お金は問題ないので、仕事の休みをさらに調整すれば出来るには出来る。



ただ、
特典が貰える貰えないというより、自分の時間とお金をないがしろにされた感じ。
口では良さげな事を言っていても、「ありがとう、はい、だからもっと出してねー」というニュアンスを感じざるを得ない。そも隠そうともしていないのか。

その事実に虚無舞台の時の虚しさを唐突に思い出した。
でも虚無舞台は好みの問題故の不幸な事故なので、どちらかと言えば毒親に渡した生活費のお札を投げられた時に似た虚しさの方が近かった。


公演は回をかさねるごとに
会場キャパは広く、演者の数は増え、チケット代もじわじわ値上がりしている。

今回の公演はS席だと手数料入れて1万円を超える。
A席特典なしだとしても手数料入れて8000円。すべてA席だったとしても全通すれば7万円弱だ。


他人に7万円出してよーって軽く言えるものか。
全通してよーってそう言うことだ。
使う言葉が違うだけ。
その7万円を稼ぐために相手が何時間自分の時間を使っているか、それに平日休むならその負担と、観劇する時間も。

+公演DVDやパンフレットなどのグッズもある。
さらにブロマイドやチェキも買うと、物販だけで最低3万円は使う。
千秋楽後のトークイベント、後日行われるトークイベント、その際のチェキ会も。
全通しなくても1公演12万くらいは使うわけだ。



稽古期間中の配信を見ても作品の面白さを宣伝する内容より、買って買っての話ばかりなのでよくわからない。
誰のための何のためのエンタメなんだろう。


なんで売れないのかと問われれば
答えはそういうところなのではないだろうか。
ユーザーファーストを感じない売り方。
マルチや宗教みたいで嫌悪感が勝った。


※補足
わたしが個人的な好みで虚無った舞台以外はどれもとても面白かった。
ただ、作品単体での面白さと全通の面白さは別だし、作品が面白くても言い方ってもんがあろうという話。

▼自分の好きなものに失礼してはだめ

好きで応援している推しさんが活躍する団体。
今までたくさん楽しいお芝居を観せてくれた役者さんたち、好きな作品、旗揚げ前から楽しみにしていたたくさんの「楽しい予定」。

これからも応援したいし楽しみたい。
推しさんのお芝居がもっと観たい。

だけど、もっと優先順位は下げるべきじゃないだろうかと、それをここ数日考えている。


ファンとはいえ、友達でも家族でもない、自分以外の他人の時間やお金をあんなふうな言い方ややり方で受け止める団体に対し
自分の限りある時間と、時間と引き換えに得たお金を過剰に使うほど、多ステは楽しいだろうか。

大好きな仕事を調整してまで行くほど、優先するほど観劇は大事な趣味だろうか。

わたしはただ、推しさんのお芝居が観たいだけ。
推しさんに課金したいだけで、団体に対してではない。

団体への応援の気持ちは捨てて、ファンじゃなくただの消費者みたいな立ち位置になった方が
もっと違う見方が出来るようになるのかもしれない。
さくっと休みの日にだけ1回2回観るくらいの方が、幸せな記憶を多く残せるかもしれない。
すっぱり別の趣味に切り替えてリセットするのもありかもしれない。

何にせよ、また次も平日ちょっと頑張って都合つけて買った後にまたノリで決まった事でがっかりするのは嫌だ。
1秒でも楽しく楽に生きるために、つまんなかった出来事は繰り返したくないし予想して避けた方がわたしにとっていいはずだ。

疑問を持たず文句を言わずお金と時間を使える人だけにありがとうとしか思わない団体なのだとしたら
優先させては自分の他に好きなものに失礼だと思った。


わたしは自分の作ったサービスお金出して使ってくれたお客さんにあんな言い方できない。
わたしの仕事の矜持に合わないやり方をする人を仕事より優先させたら、仕事にも、自分のお客さんにも失礼だ。

わたしが自分の好きなものに敬意を払うために
自分に敬意を払ってくれないものを優先してはいけない。それはわたしの美学に反するやつだ。



ただ、
推しさんが言ったわけじゃない

でも、推しさんが属するコミュニティが決めた事なので、推しさんも了承したやり方なのかもしれない。

でも、そうだとしても
仮に根っこの話は変わらないとしても
推しさんならもっと違う言葉選びをしてくれたんじゃないのか、推しさんならもっと気持ち良くお金と時間を使わせてくれたんじゃないかなと。

だから余計にもやもやしてしまう。

先に話した脚本と小説のくだりの通り
わたしは推しさんの演技もだが
ちょっとしたお話の時の言葉選びが好きなのだ。

間違っても「全通して、まじで」なんて雑な言い方しない。
お客様ぶりたいわけでも神様ぶりたいわけでもないんだが、役者とファンは友達ではないのだから
最低限の距離感や節度を保って言葉をかけてほしい。


推しさんの距離感や節度が好きだ。
人としてちゃんとしていて、応援しながらこちらも負けじと背筋が伸びる人だからこんなにも魅力的なのだ。

推しさんにだけ課金したい。



書いたら少し答えが見えた。
少し寝て今日も仕事張り切ろう。