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営業の事業サイクルを確立しよう!~持続的成長を目指して~

皆さん、こんにちは。神村です。

前回は、オリンピックのスタッフとして関わった小出さんのエピソードやJリーグ後半戦の見どころについてお話してきました。
今回は、経営・ビジネスの話をしようと思います。特に8月下旬~9月にかけては、2022年の準備を始めることが肝になるので、本稿の内容を皆さんの仕事等にも活かせてもらえたら嬉しいです。

(本稿は「Off the pitch talk 」第134~136回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー&文責:神田さんでお届けします)

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#134 : https://stand.fm/episodes/612377bd420c220006fdf906
#135 : https://stand.fm/episodes/612606e6420c220006fe248a
#136 : https://stand.fm/episodes/6128b762cbf2db00069a0ea2

なぜ今、来シーズンの準備が大事なのか

(神村):Jリーグを見ているファン達は、今頃から「どのチームが昇降格するか」や「どのチームが優勝するか」ということに関心を寄せるよね。でも、フロントスタッフはちょうど8月終わりから9月にかけての期間、来年のことを考えて行動するタイミングなんだよ。この放送を始めた頃にも話したけど、事業成長の鍵は早期に予算を作成することから始まるというのが僕の経営の持論でもあるので、ここを再度深掘りしたいと思います。
(神田):よろしくお願いします。今から次年度に向けて早い時期から動き出せるかが重要と思うのですが、そもそも何で今からの準備が大事なんですか?
(神村):Jリーグの大半のJクラブは毎年1月決算です。そこから逆算すると、9月というのは5ヶ月前にあたりますから、予算作成時期として決して早すぎる訳ではありません。もっと早いクラブもあるかもしれません。ただ、Jクラブではそもそも予算作成のサイクル自体が明確じゃないことが課題なので、この時期からサイクルを確立する重要性を説く、早く動き出す意識を浸透させることが第一段階にあるんだよ。一方で、スポンサー企業に目を向けると、その多くは3月決算や12月決算なので、お客さんが予算作成を始めるタイミングに合わせて、我々の提案したいことを予算に組み込んでもらう必要があります。だから、絶対に今から用意して提案しなければならないということです。
(神田):なるほど!フロント内(内側)と対顧客(外側)それぞれに大事な理由があるんですね。
(神村):よくさ、営業していると「今年の予算はもう使い切ってるから厳しいよ。もう少し早く言ってくれたら検討できたのに…」というお客さんの言葉があるよね。来年以降に持ち越されるのを防ぐ意味でも、特に高額案件の場合は今のうちから、予算の中に組み込んでもらうことが重要なんです。
(神田):ただ一方で、現場から意見では、「今の仕事で手一杯だよ」とか「頭でわかってるんだけどね」という意見もあると思うんですが、それについてはどのように思いますか?
(神村):誰しもやらなければいけないことがあるのは、百も承知だよね。当たり前のことですが、今期の数字をないがしろにして来年の話ばかりするのはナンセンスです。それは単に現実逃避と言われても仕方ありません。以前も話したように、”緊急かつ重要”、”緊急じゃないけど重要”の二つのタスクを並走することが大事。1度このリズムが決まれば、8月から11月ぐらいは並走する時期だと、自然に浸透していくと思うんだ。実はみんな頭では分かってるんだけど、「いつも自転車操業になってしまう…」というケースが後を絶ちません。ですから、経営のトップや組織のリーダーが、次年度への意識を現場に持たせることの重要性を発信するべきなんです。
(神田):組織の上に立つ人が、率先して組織全体の風土を変えていく、そして一人ひとりの行動習慣を変革するということですね。

営業計画作成の基本ステップ(企画編)

(神田):では、次年度の予算をどのように策定すればよいか、具体的なプロセスを教えてもらえますか?
(神村): まず最初にやるべきなのは、「事業カレンダー」の作成です。9月から11月を第1ターム、12月から1月を第2ターム、2月から8月を第3タームとして、それぞれの期間でやるべきことを可視化するイメージです。
(神田):カレンダーの中で具体化する項目には、例えば何がありますか?
(神村):大きくは、①今期の売上に直結すること(スポンサー営業、チケット売上など)、②今期のフォローに関わること(ファン感謝デー・スポンサー報告会など)に分かれます。それらへの準備をしっかりと行える道筋を立てた上で、③来期の営業に関わることを可視化するのです。
(神田):縦軸に3項目を並べて、横軸に時期を並べる、合計9マスの表をつくるイメージですね。(下図)

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(神村):そうだね。この中身を埋めていく中で大切なポイントが、全部で11ステップあります。初めてやる人達にとってはなるべく細かくした方が良いと思うので、あえて細かく区分しながら説明していきますね。
(神田):僕も今、営業企画として働いているのですが、現場での営業経験が無いので、今回の話は非常に参考になります。
(神村):神田君みたいに企画系の人にとっては、当たり前にように見える事かもしれないけど、現場サイドでは常日頃から意識できない実態があります。第1ステップは、「今期の取り組み整理」です。具体的には売上を企業別と商材別に整理するということを指します。前者は、仮にA~Z社があったとして、前年比の増減(アップセル / ダウンセル)や、その要因を深掘りしていきます。例えば、地元企業との付き合いで「とりあえず、今年は500万払うね」という案件だと、何に対してお金を頂いているのかが不明です。それだと、結果的に景気に左右されやすくなるため、お金の出所を具体化することが大切です。もう一つが、商材別の分析です。各商材でいくら受注(アップセル)したのか、目標に対してどうだったのかを整理します。実は、これをしないまま予算作る時に「今年100万円だったから、来年は110万円」みたいな気合論で話が進む企業も結構あります。神田君の会社でも、これくらいはちゃんと分析してるでしょ?
(神田):はい、企業別と商材別には見ています。僕が勤める会社でも商材が複数ありますが、アップセルの他にクロスセル(1つの商材を別の領域で売る)案件もあるので、新規、既存(アップセル/クロスセル)の3軸で見ています。
(神村):企業別と商材別で見るのは結構当たり前だけど、 Jクラブでは金額を見ることはあっても、中身を深く見たりはしない傾向なんだよね。そこは業界ならはの特徴かもしれないけど、そこを変えることでスポンサー様に更に還元できるものは何かを検討していくことになるから、とても重要です。第2のステップは「今期のアクション評価」です。これはシンプルで、目標額に対して何パーセント達成できたかという定量的な部分と、顧客満足度による定性的な評価があります。単純に売上額の増減だけを追うのではなく、お客様の我々に対する期待・評価は何かを理解する事が大切です。第3ステップは、第2ステップまでの分析を基にした、「継続・非継続の判断」です。言い換えれば、今後伸びる市場や商材を特定するということです。これは個々の営業マンによって議論が分かれやすいポイントなので、丁寧に進めていく必要があります。
(神田):特に、非継続(その市場/商材は来年は売らない)の判断って、現場サイドからすると結構難しいと思うので、より大切だと感じます。第4ステップもよろしいですか?
(神村):第4ステップは、「来期の数値目標(意思)のディスカッション」です。会社あるいは上司から「来期はいくらやれ」と言われる前に、前もって自分たちの目標を定める意識を醸成するために、核となるポイントです。いうなれば、自律的目標かな。
(神田):自分たちで目標ややるべきことを決めるスタイルって、リクルートを彷彿とさせます。神村さんもリクルートご出身ですし、一般的にリクルート出身の方って「お前はどうしたいの?」って口癖のように言いますし。あ、これ全く偏見ではないですよ(笑)
(神村):たしかに(笑) 僕なんてリクルートに居たのは30年近くも前になるけど、今でも染み付いているもんね。でも、自分で決めるってことは、「やらされ感」じゃなくなるってことだから、自分でやり抜く責任感も醸成されると思うんだよな。第5ステップは、「商材レビューと新商材ディスカッション」です。既存商材を来期に向けてどうブラッシュアップすべきか、はたまた新商材をどのように売るべきかを話し合います。単なる批判や駄目だしで終わらないよう、冷静に議論することが大切です。
(神田):シンプルに、「この商材って売れるの?」、「どうやったらもっと売れるの?」を考えるということですね。新商品についても「どんなものが売れるのか?」を皆で考えるということでしょうか。
(神村):そうだね。今の時代、デジタル領域を筆頭に新しい商材が次から次へと出てくるから、プロダクトアウト/マーケットインの整理、顧客ニーズの把握や商品価値の訴求など、考えるべき点は多岐にわたります。第6ステップが、「基礎数値(既存顧客 + アップセル ー 離脱)の見通し策定」です。最低限、ここまでは見えるというラインをきちんと見定めておくことが大事なんです。今年100できた、来年120やりますって時に、来年のスタートラインが90なのか、既存のアップセルが見込めるから実質105からのスタートなのかを見通す。これが第七のステップの醍醐味である、「営業戦略、営業戦術の策定」の肝になってきます。目標との差額分の精査と覚えておいて欲しいな。
(神田):見えない中で暗中模索するよりも、イメージしやすい方が戦略も立てやすいですよね。

営業計画作成の基本ステップ(現場編)

(神田):ここまで第7のポイントを詳しく解説していただきましたが、第8のポイントは何でしょうか?
(神村):ここからは現場の話になるけど、第8のポイントは「商材/ターゲットの売り方の整理」です。プロダクトとカテゴリーをきちんと区別し、商品特性や営業戦略を明確に持つ。そうしないと、どうしても営業って属人的というか、個に依存しやすい体質になってしまうんだよね。
(神田):「足繫く通ってくれた、〇〇さんのお願いなら断れない」みたいな、ある種の付き合いによる受注は実際ありますよね。
(神村):それもあるし、単純に経営者がサッカー好きだから、地域のクラブを応援するみたいな話もよくあります。だとすると、経営者が変わった途端に契約打ち切りになっちゃうかもしれない。大事なのは、お互いのメリットがある提案をすることなんです。そのために、どういう売り方をするのかをシェアするんです。ここは、意外と盲点だったりするんだよね。
(神田):なるほど。第9のステップについても教えてください。
(神村):次に大事なのは、「体制の整備」です。いくら計画がきちんと立てられても、それを実行する部隊が整わない限り、絵に描いた餅です。まず、組織の中の役割分担、あるいは今までやっていることと今後やるべきこと/やらなくても良いことを分別することが大事です。目標が上がることは、仕事が増えることを意味します。勿論時間は有限ですから、やるべきことに集中するためにも、やらないことを決めて注力する時間を自ら作らなければなりません。
(神田):個人の生産性を上げるのと同時に、人を増やす(採用)にも力を入れる必要があるんですね。
(神村):まさしくその通り。次に大事なステップが、「行動計画とKPIの設定」です。これは一般的にもよくいわれることだから、実行しやすいと思う。具体的には、月次/週次で管理する指標を皆で話し合って決めて、それをPDCAで回していくようにすることかな。そして最後のステップが、「目標達成したらこうしよう!という思い、やりたいことの共有」です。実は、これが一番大事だと思っている。
(神田):僕も事前に原稿読んだ時から、これが一番大事じゃないかなって気がしてました(笑)
(神村):リクルートの話で、”Goal in Bonus”(通称GIB(ギブ))という制度があって、月間目標を達成した組織に対して、一人ひとりに月次ボーナスが出るんです。営業所やチーム単位で、それを毎月積み立てて1年間貯めていきます。1年たった時の貯金額で、ご褒美に何ができるかが変わります。それを期初に皆で話し合うんですよ。通常のボーナスとは別に支給されるので、組織の業績が良ければ、たとえば「みんなでハワイ行こう」とか、ちょっと予算的に厳しければ「国内の温泉にでも行こう」か、みたいな会話が自然と生まれます。皆と一緒に達成を共有できる時間を夢見る時間をつくることが、とても大事じゃないかと思うんだ。
(神田):それは面白そうですね!より高い成果を出そうって皆でコミットできそうです。
(神村):社員もみな人間だからね。仕事をする以上、数値で分析したり戦略を練ることも大事だけど、感情の部分を大切にしながらチーム全体で協力し合えると、結果的に強い組織へと成長していけるんじゃないかと信じています。

まとめ:各々の計画に落とし込んで、行動する

(神田): 営業って、個人の成績次第でボーナスが決まったりするので、出来高次第って意味では、スポーツ選手と似ている気もしますね。
(神村):もちろん、大抵の会社には個人へのインセンティブも人事制度としてあります。でもクラブが組織で喜びを分かち合える機会を、サッカーのチームの順位だけじゃなく、フロントスタッフが歓喜できる機会を設けていきたいと思うんだ。それが9月中のやるべきカレンダーづくりで大事じゃないかな。
(神田):そうですね。営業に限らず、先々を見据えて早目に行動することは大切だと思うので、僕も業務の整理をするためにも早速カレンダーに落とし込んでみます!それでは、今回もありがとうございました!

(文責:神田)

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