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【ZWIFT】身長・体重が違うと同じ3倍で走っても速度は変わる?

ZWIFTでは出力(W)の絶対値よりも、自重の何倍の出力を出しているか(W/kg)が重要です。レースのカテゴリー分けも"B:平均3.2~3.9W/Kg"となっています。一方で特に平坦などは、体重90kg・3W/Kgと体重60kg・3W/Kgでは体重90kg・3W/Kgの方が早いと言われています。ではどれくらい違うのか?

今回の記事はPWRと身長・体重の影響を明らかにしていきます。
※この記事では体重出力比(W/kg)をPWR(Power-weight ratio)で表記していきます。

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1.空気抵抗と体重・身長の関係(空気抵抗係数)

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長い記事なので、時間のない方は上の表さえ押さえればだいたいOKです。
およそZwifterの平均と思われる、体重70kg身長175cmの人を基準に1.00にしています(※とあるイベントの平均体重を調べると約72kgでした)。表は同じ速度で走った時の空気抵抗をPWR比率で表しています。これを空気抵抗係数と呼ぶことにします。

例えば平坦を体重70kg身長175cm 3.0W/kg  時速38km/hで走っていたとします。上記表の値に3.0を掛ければ、同じ速度で走るのに必要なPWRが分かります。※ドラフティングの影響は無視して考えます。

体重70kg身長175cm 1.00×3=3.00W/kg
体重70kg身長165cm 0.96×3=2.88W/kg
体重70kg身長185cm 1.04×3=3.12W/kg
体重55kg身長175cm 1.13×3=3.39W/kg
体重85kg身長175cm 0.91×3=2.73W/kg

同じ体重70kgでも身長が異なればけっこう差が出ます。体重70kg身長165cmと体重70kg身長185cmでは、0.24W/kgも差が出ています。

また少し極端な例ですが、体重55kg身長175cmと体重85kg身長175cmでは0.66W/kgの差と約20%も差が出てきます。

身長は高くなると空気抵抗は増えていきます。
体重も増えれば空気対抗は増えていきます。しかしながら、体重の増加に対して空気抵抗の増減割合が小さいので、体重が増えるとPWRで見た場合は小さくなっていきます。

以上より、平坦では
体重が軽くて身長が高い(低BMI)ライダーはPWR的には不利。
体重が重くて身長が低い(高BMI)ライダーはPWR的には有利になります。

2.登坂抵抗と体重の関係(登坂抵抗係数)

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こちらの表は登坂抵抗と体重の関係を表しています(登坂抵抗には身長は関係ありません)。これを登坂抵抗係数と呼ぶことにします。速度が10km/h以下に落ちるような激坂(例えば勾配10%以上)では空気抵抗の影響は小さくなり、登坂抵抗が支配的になります。勾配10%以上の激坂で同じ速度で走る為の比率はほぼ上記の通りになります。機材重量は6.5kgで一定として計算しています。体重50kgの人の機材6.5kgと体重100kgの人の機材6.5kgは体重100kgの方が機材の重量割合が小さくなる為表のような差が生じます。
 ※別記事で機材重量に関しては記載しています。ただし、Zwift内で体重に関わらず機材重量を一定にしているかは分かっていません。現実世界ではフレームサイズが大きくなれば、若干の重量増があります。ただあっても数100g程度で計算結果に大きな影響はないので、機材重量は体重によらず一定とみなしても問題なしと考えます。

こちらも勾配10%を体重70kg・3.0W/kgの人に付いていくためには・・・

体重55kg  1.02×3=3.06W/kg
体重70kg  1.00×3=3.00W/kg
体重85kg  0.99×3=2.97W/kg

体重55kgと体重85kgで30kg差があっても0.09W/kgの差しかありません。空気抵抗に比べても、差が小さくなります。登坂抵抗は体重差によるPWRの差が生じにくい、激坂になれば体重に関係なくほぼPWR通りの勝負になると考えて良いでしょう。

表は登坂抵抗とあえて書きましたが、重量に比例する抵抗はすべてこの比率になるます。4つの走行抵抗の内、空気抵抗以外の3つはすべて重量に比例します。

■重量に比例する抵抗
・登坂抵抗
・転がり抵抗
・加速抵抗

■重量に比例しない抵抗
・空気抵抗

レースのスタート時は、速度0から一気に加速する事から、出力はほぼ加速抵抗に使われます。この場合も登坂抵抗と同じ比率になるので、ほぼPWRの勝負と見て良いでしょう。

平坦基調のゴールスプリントは絶対パワーの大きい重量選手が圧倒的優位かとも思われますが、ZwiftPowerでスプリントの出力を比べて見ると、重量・軽量に関わらず案外PWR通りの結果になっている事が多いです。

これはドラフティングを使う事で、空気抵抗の割合を小さくしつつゴール前はどれだけ加速できるかの勝負になっているからだと考えられます。

3.レース・グループライドへの活用

自分の倍率がいくつなのかをまず把握します。※最下部に1kg1cm毎の表があります。
例えば日本人にありがちな、体重60kg身長170cmで考えると

    体重60kg身長170cm   空気抵抗は1.06倍、登坂抵抗は1.01倍
※基準 体重70kg身長175cm   空気抵抗は1.00倍、登坂抵抗は1.00倍

 3-1.TTバイク・TTレースの場合

この場合はドラフティングの影響がないので分かり易いです。

体重70kg身長175cmの人が3.0W/kgで走っていたとします。体重60kg身長170cmの人が同じ速度で走るには、平坦では空気抵抗係数の倍率通りが必要で、勾配が大きい坂では登坂抵抗係数の倍率通りが必要となります。そこまで速度が落ちない登り(3%とか)はどうなるかというと空気抵抗と登坂抵抗の両方が作用するので、その間の数値になります。つまり体重60kg身長170cmで言えば、1.06倍~1.01倍の間にどんな状況であってもおさまることになります。

  ※TTレースの場合
                                            平坦        ~  激坂(勾配10%)
体重70kg身長175cm         3.0W/kg  ~  3.0 W/kg
体重60kg身長170cm         3.18W/kg  ~    3.03W/kg

 3-2.ドラフティングありのレース・グループライド

ドラフティングがある場合、空気抵抗は先頭に比べ集団後方では30%以上削減できると言われています。激坂に入った場合は、集団の速度が落ちて空気抵抗の割合が小さくなるので、先頭と集団後方の条件差が小さくなり、上記表の登坂抵抗係数通りの比率に近づいていきます。今まで集団後方で楽をしていた選手も先頭と同じPWRを出さなくてはならなくなります。登りで実力差が出るのはこの為です。

では、集団走行で今回の結果をどう活用するかというと

集団走行には、集団についてくための最低出力”カットライン”という物が存在します。特に大きな集団となった場合は、そこそこ上手く走れば一度も先頭に出ないで風を受ける事なく、最も効率良く走る事が可能です。この最高効率で集団内を走った場合の出力、言い換えるとギリギリ集団に着いていける出力を”カットライン”と言います。(私が勝手に言いました)
 
 例えば足を止めるような長い下りがない、平坦基調のコース(The Bell Lapとか)でのレース。大集団のままスプリント勝負でゴールしたとします。集団に残った選手の中で、平均出力の低い選手をピックアップして比べた場合、ほぼ空気抵抗係数通りになっています。

■The Bell Lap 24周(47 km)のレースを例に

私も出走したこのレースは30人が最後まで残っての大集団スプリントとなりました。私自身はせこせこと走って、ほぼ一度も風を浴びることなく、集団に引っ付いてゴールしました。最高効率で走ったと思われますが、結果を見ると私よりも平均PWRが低い選手だ何人かいました。しかしながら、平均出力を空気抵抗係数で割ると、どの選手もほぼぴったり同じ約4.0になります。

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The Bell Lapは基本的に平坦基調のコースですが、それでも24周すると獲得標高は367mにもなります。そうすると登坂抵抗係数は関係ないのか?

例えばこのレース私は平均4.17W/kg = 250W 、59:21(3561秒)でゴールしました。出したエネルギーは 250W×3561秒=890,250J となります。

では、このエネルギーはどこに消えたのか?
空気抵抗と転がり抵抗、あとスタートとゴールの速度が違うので加速抵抗になります。この中で転がり抵抗と加速抵抗は空気抵抗に比べて小さいので、ほぼ空気抵抗が支配的と考えて良いです。367m登っているのに登坂抵抗は関係ないかと言うと、周回コースなので367m下っています。エネルギー収支としては、±0となり登坂抵抗は関係なしとなります。※すごくざっくり書きましたが、また別記事で書きたいと思います。

何が言いたかったかと言うと、平坦基調のレース・グループライドで大集団になんとか着いていこうとした場合、自分の空気抵抗係数を知っていると集団の平均に対して自分がどれくらい出力を出さなければならないかがざっくり掴める。

例えば3.0W/kgのグループライドが平均して3.0W/kgでギリギリ着いていける集団だった場合。自分が体重55kg身長170cmだった場合は、3.33W/kg必要だと思って走っていた方が良いし、体重85kg身長175cmだった場合は2.73W/kgでも着いていけることになります。

4.体重身長の有利不利

単純に倍率だけ見れば、身長は低いほど有利で、体重は重いほど有利となります。しかしながら、大事なのは現実世界の実走に対してZWIFT内での設定は有利かどうかになります。

身長に関しては、やはり身長が低い程有利で、痩せ型高身長者には厳しい設定になっていると感じます。高身長ライダーは、足が長い分ペダリング時の股関節の稼働域に余裕がある場合が多いです。その為、身長が高くても低いポジションを取って空気抵抗を減らしているライダーも多くいると思います。そういった要素は考慮されず、一律身長で空気抵抗が増やされてしまいます。しかも身長による空気抵抗増加率はけっこう大きい

 ■高身長ライダーはやや不利

体重に関しては、どちらかと言うと軽いほうが有利だと思います。

登坂抵抗に関しては、機材自体がかなり軽い設定になっているのに加えて、本来はヘルメットやボトル、シューズといった装備重量も加わるのですが、ZWIFTでは装備重量は考慮されていないようです。体重に対して、機材+装備重量が小さくなる事は、軽量ライダーに有利に働きます。

空気抵抗に関しては、例えば体重が50kgから1kg増えた場合の空気抵抗の増加と、体重が100kgから1kg増えた場合の空気抵抗の増加はほぼ同じと見なしているようです。本来は体重が100kgから1kg増えた場合の方が前面投影面積の増加は少ないはずです。この点は重量ライダー不利に働きます。

 ■低体重ライダーやや有利

5.強くなる為の体重戦略

この記事を読んでいるほとんどの人はもう身長は変わらないでしょうが、体重は変える事ができます。

体重を変えつつ強くなる為の戦略は主に下記2つの方法があります。

 ■出力の絶対値を維持したまま減量する
 ■PWRを維持したまま増量する

この記事で基準としている、身長175cm体重70kgの人で体重を±3kg変えた場合を考えます。FTPが体重の4倍、つまり体重70kgでFTP280Wだったとします。体重の4倍を維持したまま67kg、73kgになった場合を考えると下の表のようになります。

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■PWR4倍維持で減量した場合
70kgFTP280W→67kgFTP268Wになった場合を考えます。②空気抵抗係数✕体重✕4.0(W)の列から、平坦で70kg280Wと同じ速度を維持しようとすると、67kg273.3W必要です。つまり67kgで4倍維持でFTP268Wになった場合は、平坦では遅くなる→弱くなってしまいます。

67kgに減量して平坦での実力も維持するには、273.3W・4.08W/kg 以上を維持する必要があります。これなら、登りも早くなるので確実に強くなったと言えます。

 減量で強くなる為には、現在の出力絶対値を維持しつつ体重を落とせるかが重要になります。

■PWR4倍維持で増量した場合
次に70kgFTP280W→73kgFTP292Wになった場合を考えます。これも②空気抵抗係数✕体重✕4.0(W)の列から、平坦で70kg280Wと同じ速度を維持しようとすると、73kg286.7W出せれば良いことになります。よって、73kgFTP292Wになれば、登りの能力はほとんど変わりませんが、平坦で早くなる→強くなったといえます。

 ざっくりした感覚として、体重変化の半分だけ出力を上げれば平坦の速度は維持できると覚えておくと良いでしょう。今回の場合では、70kgFTP280Wから、体重を3kg増やした場合は12W、FTPを上げなと4倍を維持できないわけですが、平坦の速度を維持するだけなら、6W上げれれば体重73kgで平坦の速度を維持できます。


理想的な体重戦略としては、体重増(筋力UP)で出力の絶対値を上げ、その出力を維持したままま元よりも絞る

 70kgFTP280W(4.0W/kg)→73kgFTP292W(4.0W/kg)→67kgFTP292W(4.36W/kg)

となれば、平坦も登りも劇的に強くなるわけですが・・・そう簡単にはいきませんよね・・・
 ZWIFT基準で話を進めましたが、実走でもほぼ同じ事が言えます。


ちなみに、どうやって空気抵抗係数を出したかというと、仮説→実験→補正を行ったのですが、とても長くなりそうなので今回はここで一旦区切りたいと思います。↓導出編はこちら

付録 空気抵抗係数 1kg1cm刻みの表

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