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ミッションインポッシブル デッドレコニングPt1を見たよ!(ネタバレ注意)

・イーサン最後のパートへ。

絶対に不可能なミッションを遂行する男、トム・クルーズ(61)。わざと括弧をつけて年齢を書いたのは当然、その老いを見せながらも圧倒的なスタントをこなし、アクションをこなし、戦い抜いた彼への想いを込めてです。

公開初日に見て、今も追いミッションを繰り返しているのは去年のトップガンの後遺症でしょうか。
さて、今作デッドレコニングはシリーズ初の二部編成。しかも過去最長の尺ともなっております。あらゆる情報を吸収し世界を脅かすまでに成長したAI、通称『Entity/"それ”』を制御するための2つの鍵をめぐるまさに世界規模の津々浦々を転々としながら争奪戦を繰り広げる物語が本筋ですが、そこにはイーサンがIMFに入るきっかけとなったとある”事件"に関わる男、ガブリエルの魔の手が…

といった具合なのですがパート1は何といってもたくさんの伏線を張り巡らせていて、それを回収はほとんどしていないんですよね。それどころか、謎は深まるばかり。例えば『CIAのコミュニティの2人組は何の因縁があるの?』とか、『マリーって誰?イーサンが死刑?ガブリエルは何者?何があったの?』とか『裏切ったパリスの本当の所属は?』など、数えるとキリが無いのですが、とにかく悉く回収はしません。全部パート2へ含ませています。なので、現在ストライキ決行中で撮影中断のパート2はかなりの長尺になるのでは?(インド映画並みに?)と思ったりもします。
ともあれ、イーサン・ハント、およびトムの年齢からしても今作と次回作であるPart2をもってイーサンの物語は一区切りを迎えるものと思われ、少し寂しい気持ちもあります。

・イルサ・ファウストの死は世界的に賛否両論みたい


ローグネイション以降紅一点だったイルサ、今回はフルーレスタイルで戦いました。

ローグネイション('15)で華々しく登場したレベッカ・ファーガソン演じるMI6元エージェントのイルサ・ファウストはMIシリーズでも超人気のキャラクターとなりましたが今回ガブリエルに敗北して死んでしまいます。これについてはまだ『イルサは死んでいない!』説も有力視されているので、一概には言えませんが、ひとまず左肩の下、胸の少し上あたりを刺され死んだかのような描写がなされました。クリストファー・マッカリー監督曰く、イルサは本来ローグネイションのみのキャラクターの予定であったが想定以上の人気によって次作フォールアウト('18)、そして今作にも出るに至りました。ですが、イーサンとは恋愛関係のような陳腐な関係になることはない(イーサンには妻であるジュリアがいますし)、1人の戦士として英雄的な死を与える必要があり、今作の該当シーンではそれを表現した、と語っています。
ですがやっぱりファン感情的にはショックでしたし、初回試写の際もイルサが死んだあと2,3人が席を立って戻ってこなかった、とマッカリー監督も言
うようにショックなものであったと思われます。

・グレースへの意見も賛否両論みたい。


ヘイリー・アトウェル演じる新ヒロイン、グレースは今回のもう1人の主人公であり、ただの犯罪者からIMFに所属するに至る、イーサンやチームメンバーの過去にもどこか通じることとなるのですが、イルサの後釜というのは少し重たかったのか、これまた賛否が分かれたのです。
グレースとはアブダビ、ローマ、オリエント急行と様々な場所をイーサンとともに移動していきますが、レビューの意見で多かったのは、彼女の身勝手な行動や利己的な行動・言動から好感が持てない、彼女の行動がもとでイルサが死んでしまった、などあり、これは確かにそう思っても仕方ないなあという具合でした。これについては彼女がこれからどう育っていくかが肝心ですね。Part2に期待したいところです。

・超ド級の映像体験

バイク練習は13000回にも及んだそう

さて、ここまで書くと、ストーリーテリングに問題があるじゃないか!ダメじゃん!と思いがちですが、まだまだPart1、細かいことは後半戦で回収しようという意気込みが見える前半戦ですので全く問題が無い。それどころか、映像表現についていえば過去一番危険で、過去一番激しいものとなりました。去年マーヴェリックを見ていた人ですと、その時から宣伝が入っていましたから見覚えがあると思います、ノルウェーの高山からのモトクロスの飛び降りスタント、それに、列車でのスリリングな戦闘シーン(実際に時速95kmの列車の上で撮影されました)、列車の転落からの生存シーンなど、息をのむシーンが何度も連続されます。トム本人をもってして死を覚悟して、初日に撮影したノルウェーのシーンの展開はあまりに凄すぎてやはり言葉を喪うばかり。凄い、凄すぎるよトム。

ちなみに95㎞の列車はトムにとっては『まだ遅い』レベルだったそうですが、コミュニティ側のドガ役グレッグ・ターザン・ディヴィスは勢いのあまり靴を落としてしまいその日の撮影は靴下の状態だったそう。
ガブリエルの策謀によって落ちてしまう機関車も本物。CGなしの一本勝負。
流石に最後の列車から脱出するシーンは当然CGでしたが、それでもグレースとイーサンが宙に浮くシーンではやはりリアルに車両に振動を与えたり、映像表現へ徹底的な拘りが見られます。
勿論、今回惜しくも散ったイルサことレベッカ対ガブリエル演じるイーサイ・モラレスによるベニスの夜の近接格闘など、トム以外のメンバーのアクションも洗練されたものになっています。これはフォールアウトでの格闘シーン並みにスクリーン映えしたのではないでしょうか。

・AI問題は今のハリウッド問題、世界の問題。

ハリウッドは7月14日以降俳優・脚本家組合がストライキに入り、NetflixやDisneyによる1日分のギャラで永久の俳優のAI肖像権を獲得できること、ストリーミングサービス普及によるギャラの致命的減額など、次世代へ向かう一方、俳優の人生や生活を無視した利権的なAI・テクノロジーの活用の派閥が対立し、事実上映画のプレスが出来ない状態となり、トムの来日も中止となったのは目新しい記憶です。

今作デッドレコニングではAIことEntityが世界を掌握しようとする脅威を描いていますがそれと戦っているのは紛れもなくイーサン・ハントであり、言い換えればCGばかりの映画が増え、ついにAIの学習によって俳優が要らなくなるかもしれない時代へ矛先を向け、60を超えボロボロになりながら戦うトム・クルーズその人なのです。トムの映画の魅力はその映画に『人間らしい息遣い』が感じられることです。もしもすべての映画がAIで描かれたストーリーや映像なら、IMAXで見ることも、いや、映画館で映画を観る必要もなくなるでしょう。『喫緊の問題である』とトムの吹き替えを長く務める森川智之さんもストーリーへ言及されていましたが、まさに今、脚本、映像、音楽、人間すべてがAI学習によって時代の転換点を迎え、一つの終わりすら迎えようとしています。トムはマーヴェリックでも今作でも示したように、その日は必ず来るが、『まだ今日ではない』とハリウッドの先端で旗をもって戦っているわけです。

AIはあらゆるものを便利にしましたが、頼り切ってはダメなものです。
作曲などにもAIが活用され、ミックスやマスタリングも自動でAIが行ってくれるのはアマチュアにとっては非常に助けになりますが、一方で全て頼ってしまうと成長することもなくなってしまいます。AIとの距離感を正しく考え、適切な利用をすることが大切で、呑まれてしまってはならないのです。

本作はそんなハリウッドや世界のテクノロジーとの相対を描き、映画館を救いたいトムの想いを背負った、映画の雰囲気だけでなく、正真正銘のシリアスな問題を提起したものとなりました。

さて、最後にですが、今作はトムのみならずヴィランであるガブリエルやパリス(ポム・クレメンティエフ)は悪役として非常に際立った存在で、繰り返し見ることで余計に引き込まれる良さがあります。デッドレコニング自体繰り返し見るほど発見がありますので、是非ともまた映画館に足を運んでみては如何でしょう?

それでは!



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