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完き人〜渋沢栄一の人材観

 昨年9月から論語と算盤の読書会に参加している。論語と算盤は渋沢栄一が経済人がなすべき道を示したもの。私自身が40代後半でビジネスパーソンの後半戦に臨むにあたり、どのような思想や想いを持っていくかを考えるにあたり、ヒントになることがあるのではないかと考え参加し始めた。読書会の参加者は20代から70代、職業も幅広く、様々なバックグランドの方に触れられることが魅力であり、かつ、中国古典研究の第一人者である守屋淳先生の要所におけるコメントが示唆に富む場。

渋沢の人材観

 先月は「常識と習慣」という章を取り上げた。ここに渋沢の人材観の一旦が出ている。そのキーワードが”完き人(まったきひと)”である。完き人とは智・情・意(知恵、情愛、意思)の3つがバランスを保って、均等に成長した常識人のこと。そのような人を日本中に増やすことが重要であると説いている。渋沢は完き人の反対を”偉き人”と言っており、それは智・情・意のバランスは悪いが何かに突出しているような人を指している。渋沢は偉き人の価値も認めつつも、やはり完き人を増やしていることを重視している。

人材育成と人の組み合わせ

 人事や経営者に自社に求める人材像を確認していくと、この完き人のようなすべてを兼ね備えた人材になることがある。ただ、実際このような人は少ないわけで、採用後に育成可能な要件は捨てて、採用のタイミングで最低限備えてほしい要件を見極めるのが採用要件を考える際に重要になる。人事の現場と接して、”完き人”を求める傾向が強いことを感じるが、一方で、バランスは悪いが突出している偉き人を組み合わせることで、組織としてバランスをとるという考え方もある。個人的にはこの考え方の方が現実的であり、かつ上手く組織づくりができればパフォーマンスも高いと考えている。

組織づくりを渋沢と話をしてみたい

 これから論語と算盤を読み進めるにあたり、組織づくりの話が出てくるかどうか楽しみだが、渋沢の人材観に触れて、採用から組織づくりまで自身の考えが及んだ。私はあらためて、採用要件と人材育成観点を連動させながら分けて考えること、そして、人と人を組み合わせ組織として”完き(まったき)組織”をつくる観点が重要だと思うに至ったが、渋沢は組織という観点でどのような意見を持っているのか。数々の修羅場をくぐり抜け、500社前後の企業の設立や発展に関わった渋沢なら必ずや組織づくりに関して考えを持っているに違いない。彼の組織づくりの考えに触れてみたいと強く思っている。

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