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論文紹介: 論文はネットでシェアされるごとに情報量が落ちる

実はソーシャルメディアは科学コミュニケーションにとってかなり重要な場になっています。科学者のSNS上で議論は科学を促進させ、一般人も科学的なニュースを日々シェアするようになっています。

そのような中で、科学的知見がちゃんと人々に伝わっているかどうかは一つの重要なテーマです。悪い状況として、科学的知見を曲解して権威だけを利用する活動は容易に想像できますし、実際目につきます。

そんな中、今回紹介するICWSM 2023の論文は、1万の論文、400万のオンライン投稿(SNS以外も含む)を追うことで、論文がシェアされるごとにどれくらい元の情報量を保っているかを定量的に測定しました。

Hwang, Sohyeon, Emőke-Ágnes Horvát, and Daniel M. Romero. "Information Retention in the Multi-platform Sharing of Science." ICWSM 2023 (to appear).

結果

情報量はシェアされるごとに下落

著者らは、Altmetricというデータを使うことで、ブログサイト、Facebook、ニュースサイト、Twitterでシェアされた論文を追跡することができました。
そこで、シェアされるごとにどれくらい情報量が落ちるか(ここでは、論文の要旨の重要単語が、シェアに付随するテキストの中でも重要な単語として占めているか)を測定しています。
下図はその結果で、シェアの回数が増えるごとに情報量が下落していくことが確認できました。

TwitterとFacebookは最初のシェアから情報量が低い。ブログとニュースはシェアの度に落ちていく。

下図はプラットフォームごとの情報量の下落を示しています。
TwitterとFacebookは最初から情報量が低いです(つまり、ある意味でシェアのたびに情報量が落ちるということも言いにくそうです)。
一方でブログとニュースは、最初は情報量が高い(つまり論文が重要視している単語がちゃんと入っている)のですが、シェアのたびにその情報が落ちていることがわかります。

より多様なプラットフォームでシェアが発生していると、情報の保持率は高い

今回は複数のプラットフォームのデータがあるため、複数のプラットフォームでシェアされるときの情報の保持率も確認しています(下図)。
これを見ると、多くのプラットフォームでシェアされていることがわかります。

まとめると、正しく情報を伝えたい場合は、ニュースやブログでシェアされることを目指すことと、できるだけ複数のプラットフォームで展開されることを目指すべき、ということになるのかもしれません。

所感

ここでは紹介しきれませんが、情報の保持率の計算方法は面白かったです。Text-rankを使って複数の文章の焦点があっているかを確かめています。
また、複数のプラットフォームを横断して分析できているのは強みだなと思いました。今後もAltmetric社のデータを使った分析が増えるかもしれません。
実はこの論文紹介シリーズでICWSMの論文は初めて(?)紹介したかもしれませんが、総合誌などと比べてやはり手法よりの部分が多く、結果の紹介が薄くなってしまっているなと感じました。。笑


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