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    ウェブやソーシャルメディア関連のニュースや論文を紹介するマガジンです。

最近の記事

論文紹介: ソーシャルメディアは人々の意見を過激化していないかもしれない

「エコーチェンバー(反響の部屋)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これはオンライン上で、自分と似た関心を持つユーザだけをフォローしたり、自分の意見に合致した情報のみを消費した結果、自分の意見が拡大/強化されてしまう状況/現象です。 (閉じた小部屋で音が反響するみたいな状況からのネーミングです。定義参考) しかし、多くのアメリカ人がこのエコーチェンバーを認識しているにも関わらず、エコーチェンバーに関する懸念は、提案されている解決策も含めて、ほとんど定量的に検証されこず

    • 論文紹介: ChatGPTは大卒専門家の作業時間を40%減らし、質を18%高めた

      みなさんご存知ChatGPT、「人の仕事を奪う」という言説が巷にあふれておりますが(labor displacement)、一方で「人々の仕事を促進する」というポジティブな側面も注目されています(labor augmentation/enhancement)。 ただ実際、ChatGPTが「どれくらい人の作業を効率化するのか」については、まだ定量的な証拠は示されてきませんでした。 そこでScience誌に採択された本研究では、453人の大卒専門家(コンサルタント、データアナ

      • 論文紹介: 論文はネットでシェアされるごとに情報量が落ちる

        実はソーシャルメディアは科学コミュニケーションにとってかなり重要な場になっています。科学者のSNS上で議論は科学を促進させ、一般人も科学的なニュースを日々シェアするようになっています。 そのような中で、科学的知見がちゃんと人々に伝わっているかどうかは一つの重要なテーマです。悪い状況として、科学的知見を曲解して権威だけを利用する活動は容易に想像できますし、実際目につきます。 そんな中、今回紹介するICWSM 2023の論文は、1万の論文、400万のオンライン投稿(SNS以外

        • 論文紹介: # climatechangeに付随する10年間、200万枚以上の画像を調べた

          気候変動は現在世界で最も大きな問題の一つですが、その解決のために特に必要なのは人々の理解を科学的コンセンサスと一致させることです。 その目的のために各ステークホルダーがどのように気候変動について発信を行っているかを知ること重要であり、ソーシャルメディア分析はその有効な手段だと考えられます。 今回紹介する研究は2011-2021年の10年間の"#climatechange"というハッシュタグを含むTweetを全て収集し、そこに含まれる約200万枚の画像を分析しました。一般的

        論文紹介: ソーシャルメディアは人々の意見を過激化していないかもしれない

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        • 論文紹介: 論文はネットでシェアされるごとに情報量が落ちる

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          論文紹介: COPを巡り、気候変動に関しての意見の分断が進んでいる

          気候変動は世界的な大問題です。特に近年はIPCCの報告に象徴される通り、研究者の中で地球温暖化に対しての確信度は高まっています。そして地球温暖化を防ごうとする活動(pro-climate)の活動が大きくなるにつれ、反対派(climate-contrarian)の活動も大きくなり、議論の白熱度合いは増すばかりです。 今回紹介するNature Climate Changeの論文は、地球温暖化に関する議論の盛り上がりと、2つの派閥の対立の激化を、Twitter分析から可視化したも

          論文紹介: COPを巡り、気候変動に関しての意見の分断が進んでいる

          論文紹介: イーロン・マスクによる買収後、ヘイトスピーチとBotは増えた

          イーロン・マスクによるTwitter買収による影響を確かめる論文が出ました。 著者たちのTweetによると、ソーシャルメディアのトップ会議ICWSMに採択された模様です(ショートペーパーのようです)。 ご存知のようにTwitter社は2022年10月末にイーロン・マスクに買収されました。その際の公約に「コンテンツモデレーションを減らす」ことと「スパムボットを減らすこと」がありました。 コンテンツモデレーションとは要は投稿内容に関する制限と規制のことで、例えば極端なヘイトス

          論文紹介: イーロン・マスクによる買収後、ヘイトスピーチとBotは増えた

          論文紹介: OSINT最先端「Bellingcat」のコミュニケーション戦略を分析

          OSINT(open-source intelligence)とBellingcat、この2つの言葉を最近聞く人も多いのではないでしょうか。OSINTは、(SNSを始めとした)オープンに公開されているデータを使用するインテリジェンス(国家防衛における意思決定材料情報の収集など)であり、Bellingcatは今そのOSINTに関して最も注目されている組織です。日本でこの2つの単語は2022年から始まったウクライナ戦争で特に注目を集め、書籍化や、NHKの特集なども組まれています。

          論文紹介: OSINT最先端「Bellingcat」のコミュニケーション戦略を分析

          社会運動デモで世論は変わるか(論文紹介)

          答: BLMでは変わった 元論文: Dunivin, Zackary Okun, et al. "Black Lives Matter protests shift public discourse." Proceedings of the National Academy of Sciences 119.10 (2022). https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2117320119 デモ、抗議活動の成果と歴史デモは市民が取れる民

          社会運動デモで世論は変わるか(論文紹介)

          米国大統領選挙におけるロシアの影響工作の効果はどれくらいあったのか?(論文紹介)

          答え: Twitter上ではあまりなさそう。 元論文: Eady, G., Paskhalis, T., Zilinsky, J. et al. Exposure to the Russian Internet Research Agency foreign influence campaign on Twitter in the 2016 US election and its relationship to attitudes and voting behavior.

          米国大統領選挙におけるロシアの影響工作の効果はどれくらいあったのか?(論文紹介)

          論文紹介: デジタルメディアは民主主義に影響を与えたのか―496本の論文をレビュー

          World Wide Webが約30年、ソーシャルメディアが約15年の歴史を持つようになり、人々のコミュニケーション方法は大きく変わってきました。そのようなデジタルメディアが民主主義をどのように変えたのかは、近年大きな研究テーマとなっております。このレビュー論文では、関連の研究を496本選定し、デジタルメディアは民主主義の関係性(相関関係と因果関係)について調査しました。 Lorenz-Spreen, Philipp, et al. "A systematic review

          論文紹介: デジタルメディアは民主主義に影響を与えたのか―496本の論文をレビュー